{
2007/08/16(木) }
俄かには信じ難い内容ではあった。
…人体解剖学…。人体の器官や組織を研究する学問といったところだろうか。
『信二。私、復讐する。あいつらに…地獄を味わわせて、姉さんの無念を晴らす。』
優美子の決意を耳にした今、その気持ちを疑う気も否定する気も一切ない。しかし彼女にはおそらく格闘の実戦経験がない。研究の成果がうまくいくという保証もない。それに…優美子にとってそれが最善の方法なのか。姉の京香がもしこの場にいたなら、そんなことを望むだろうか。
幾重にも重なる不安と葛藤の渦が俺を飲み込み、頭が混乱してくる。
バイクに跨り、夜の街を疾走する。
――俺は一体、どうしたらいい? どうしたら彼女の力になれるのだろうか…
春の夜風が肌を優しく撫でていった。混乱する頭を冷やすように、俺はその春風に身を委ねていた。
優美子と出会ったのは、まだお互い中学生の時だった。
一見気が強く、どこか冷たい感じを漂わす反面、内面は素直で優しい女だった。
あの事件を境に、優美子がこれほどまでに変わってしまうとは夢にも思わなかった。いや、本当のところ優美子自身は何も変わってはいないのかもしれない。
自分の正義を信じて突き進む魂の気高さ、目標に向かって努力する姿勢は、優美子のもつ最大の美徳だった。それは変わらない。
ただその目標の焦点があの事件をきっかけに変わってしまった。それだけのこと。
その目標が例えどんなものであっても、俺は最後まで彼女の味方でいたいと思っていた。
そう。例え親や親戚、友人を敵に回してでも、俺は優美子に心から寄り添っていたいと願った。
その気持ちに嘘はない。
夕暮れの街角を過ぎていく。
運命の出会いというのは人が想像しているほどロマンティックではないということを、俺はこの時初めて知った。それは時に残酷で…非情で…
きっかけは馬鹿らしいものだ。すれ違いざまに肩がぶつかった…ただそれだけのこと…
因縁をつけてくる不良。「殺すぞ」などと軽々しい口を叩く屑野郎。
この時、俺の中の何かが完全にふっ切れたのだ。
気付くと俺は、ヘルメットで殴っていた。
何度も…何度も…何度も…何度も…
相手が許しを乞うたところでやめる必要はない。俺はさらに強く、強く、殴り続けた。
――こいつは今日から…優美子の実験体だ…
俺が彼女にしてやれること。彼女の力になれること。こんなに簡単なことだったんだ。
――優美子のことが大好きだ。心から愛している。俺が…力になってやる。
その思いが俺を後から後から支え続けた。
随分と思い悩んでいたことがまるで嘘であるかのように、俺の心は清々しかった。
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…人体解剖学…。人体の器官や組織を研究する学問といったところだろうか。
『信二。私、復讐する。あいつらに…地獄を味わわせて、姉さんの無念を晴らす。』
優美子の決意を耳にした今、その気持ちを疑う気も否定する気も一切ない。しかし彼女にはおそらく格闘の実戦経験がない。研究の成果がうまくいくという保証もない。それに…優美子にとってそれが最善の方法なのか。姉の京香がもしこの場にいたなら、そんなことを望むだろうか。
幾重にも重なる不安と葛藤の渦が俺を飲み込み、頭が混乱してくる。
バイクに跨り、夜の街を疾走する。
――俺は一体、どうしたらいい? どうしたら彼女の力になれるのだろうか…
春の夜風が肌を優しく撫でていった。混乱する頭を冷やすように、俺はその春風に身を委ねていた。
優美子と出会ったのは、まだお互い中学生の時だった。
一見気が強く、どこか冷たい感じを漂わす反面、内面は素直で優しい女だった。
あの事件を境に、優美子がこれほどまでに変わってしまうとは夢にも思わなかった。いや、本当のところ優美子自身は何も変わってはいないのかもしれない。
自分の正義を信じて突き進む魂の気高さ、目標に向かって努力する姿勢は、優美子のもつ最大の美徳だった。それは変わらない。
ただその目標の焦点があの事件をきっかけに変わってしまった。それだけのこと。
その目標が例えどんなものであっても、俺は最後まで彼女の味方でいたいと思っていた。
そう。例え親や親戚、友人を敵に回してでも、俺は優美子に心から寄り添っていたいと願った。
その気持ちに嘘はない。
夕暮れの街角を過ぎていく。
運命の出会いというのは人が想像しているほどロマンティックではないということを、俺はこの時初めて知った。それは時に残酷で…非情で…
きっかけは馬鹿らしいものだ。すれ違いざまに肩がぶつかった…ただそれだけのこと…
因縁をつけてくる不良。「殺すぞ」などと軽々しい口を叩く屑野郎。
この時、俺の中の何かが完全にふっ切れたのだ。
気付くと俺は、ヘルメットで殴っていた。
何度も…何度も…何度も…何度も…
相手が許しを乞うたところでやめる必要はない。俺はさらに強く、強く、殴り続けた。
――こいつは今日から…優美子の実験体だ…
俺が彼女にしてやれること。彼女の力になれること。こんなに簡単なことだったんだ。
――優美子のことが大好きだ。心から愛している。俺が…力になってやる。
その思いが俺を後から後から支え続けた。
随分と思い悩んでいたことがまるで嘘であるかのように、俺の心は清々しかった。
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{
2007/08/15(水) }
姉の葬式のゴタゴタが終わった後、私は悲しさを紛らわせるように、医学書を見た。
いえ。それはきっと、医学書を見ることが、姉と会話する唯一の手段であると感じていたから。そして、それがあの男たちへの復讐にきっとつながると信じていたから。
――姉が熱心に人体について研究していたのは、きっとこの時のためなのだ。
そう何度自分に言い聞かせただろう。それでも時々、これが姉の望んでいたことなのか不安になることがあった。そんな時は、いつも医学書を通じて姉に語りかけるのだ。
――姉さん。これで…いいんだよね…
側で姉が笑ってくれているように感じた。私は、間違っていない。私は、正義…
私にとっての『医学書』は、既に立場を一変していた。
それまでは、受験の勉強をより深める程度のものだったのに、今や人体破壊実践のための知識として必死に研究すべきものへと変わっていた。
それから私は研究を続けた。小さい頃から医者を目指す姉の側に私はいた。
医学書の類は姉が読むのを横からちょこちょこと盗み見る程度ではあったが、私は確かにその医学書を通じて姉の存在そのものを肌で感じていたのだ。
こうしてあらためて見てみると数々の専門用語に眩暈がしそうになる。
訳の分からないドイツ語?の羅列に発狂しそうにもなる。
しかし私はそれでもやらなければならなかったのだ。だってそれが、姉の残した遺言であると感じていたから…。あの日から復讐することをこの胸に何度も刻み付けてきたのだから…。
私の中の『正義』がじくりと疼いた。
喫茶店で注文した紅茶に手をつけた頃、ようやく信二が姿を現した。
「…よう。元気か?」
信二が声をかけてきた。気さくな表情で私に声をかける。
「髪、下ろしたんだな。」
信二のさりげない言葉が今は心底心地がよかった。私の頭を優しく撫でる。
これまでポニーテールにしていた髪を、今は結わずにさらりと下ろしていた。
「うん。特に理由はないんだけどね…。って…ううん。やっぱり信二には本当のこと言うね。」
二人で押し黙る。沈黙がしばし辺りを包み込む。
「あいつらが…いつも夢に出てくるの。鳥肌が立つくらい気持ち悪い表情で…目の前で…汚いものを見せながら…。絶対に、忘れられない…許さない…」
信二はそんな私の肩をそっと抱いた。
「これからは俺がお前を守ってやる。ずっと、ずっとな。」
温かかった。信二の手が私の頭を優しく撫でる度に、私の胸が大きく高鳴る。こんな経験は生まれて初めてだった。
「姉さんとね。同じ髪型にしたんだ。せめて、私があの人を忘れることがないように、そして…」
そこで言葉を区切る。私は決意を噛み締めるように言葉を続けた。
「あいつらのことを、決して忘れることがないように…」
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いえ。それはきっと、医学書を見ることが、姉と会話する唯一の手段であると感じていたから。そして、それがあの男たちへの復讐にきっとつながると信じていたから。
――姉が熱心に人体について研究していたのは、きっとこの時のためなのだ。
そう何度自分に言い聞かせただろう。それでも時々、これが姉の望んでいたことなのか不安になることがあった。そんな時は、いつも医学書を通じて姉に語りかけるのだ。
――姉さん。これで…いいんだよね…
側で姉が笑ってくれているように感じた。私は、間違っていない。私は、正義…
私にとっての『医学書』は、既に立場を一変していた。
それまでは、受験の勉強をより深める程度のものだったのに、今や人体破壊実践のための知識として必死に研究すべきものへと変わっていた。
それから私は研究を続けた。小さい頃から医者を目指す姉の側に私はいた。
医学書の類は姉が読むのを横からちょこちょこと盗み見る程度ではあったが、私は確かにその医学書を通じて姉の存在そのものを肌で感じていたのだ。
こうしてあらためて見てみると数々の専門用語に眩暈がしそうになる。
訳の分からないドイツ語?の羅列に発狂しそうにもなる。
しかし私はそれでもやらなければならなかったのだ。だってそれが、姉の残した遺言であると感じていたから…。あの日から復讐することをこの胸に何度も刻み付けてきたのだから…。
私の中の『正義』がじくりと疼いた。
喫茶店で注文した紅茶に手をつけた頃、ようやく信二が姿を現した。
「…よう。元気か?」
信二が声をかけてきた。気さくな表情で私に声をかける。
「髪、下ろしたんだな。」
信二のさりげない言葉が今は心底心地がよかった。私の頭を優しく撫でる。
これまでポニーテールにしていた髪を、今は結わずにさらりと下ろしていた。
「うん。特に理由はないんだけどね…。って…ううん。やっぱり信二には本当のこと言うね。」
二人で押し黙る。沈黙がしばし辺りを包み込む。
「あいつらが…いつも夢に出てくるの。鳥肌が立つくらい気持ち悪い表情で…目の前で…汚いものを見せながら…。絶対に、忘れられない…許さない…」
信二はそんな私の肩をそっと抱いた。
「これからは俺がお前を守ってやる。ずっと、ずっとな。」
温かかった。信二の手が私の頭を優しく撫でる度に、私の胸が大きく高鳴る。こんな経験は生まれて初めてだった。
「姉さんとね。同じ髪型にしたんだ。せめて、私があの人を忘れることがないように、そして…」
そこで言葉を区切る。私は決意を噛み締めるように言葉を続けた。
「あいつらのことを、決して忘れることがないように…」
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{
2007/08/14(火) }
私の汚された身体を、いつの間にか激しい雨が洗い流してくれていた。
気が付いた時には既に男たちの姿はなかった。その代わり、よく知った顔がそこにはあった。
短めの髪に、精悍で整った顔つき。しなやかで鍛えられた身体に白いシャツが貼り付いていた。
一瞬にして心を解きほぐす温かい…本当に温かい大きな手。肌の感触。優しい瞳。
彼の腕の中に抱かれながら、私は大声で泣いた。泣いた。涙が自分の身体中の汚れを、そして深く切りつけられた痛みを全て流してくれるような気がして。とにかく泣き続けた。
「ごめんな。遅くなって…本当にごめんな。」
彼の胸がこんなに大きく、逞しく見えたことはなかった。
「遅かったよ、信二。本当に…本当に…遅かったよー!!」
私はその言葉とは裏腹に、彼の腕の中でこの恐怖から解放された安堵感を得ていった。しかしそれと同時に、言いようもない罪悪感が芽を出し、私を再び萎縮させるのだった。
私は…汚された…。私は…私は…
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
謝罪の言葉が口をついて出る。何度も、何度も、何度も。涙が止まらない。
彼は、そんな私の身体をさらに強く抱きしめた。
「俺はいつでも、お前の側にいるからな。」
その言葉は、この時私の側にいられなかった彼の後悔と懺悔であるように思えた。
私を抱く手が震えている。雨の冷たさなど忘れさせてくれるその手のぬくもりが、私は好きだった。
彼の深さを実感していくにつれて、私は心から安心できた。安心して、そのまま眠りについた。
私は震えていた。
そして自分が書斎にいることを確認し、大きく安堵の息を吐き出した。
回想するだけで、あの時の感情がまざまざと蘇ってくる。
『やめて…やめて…ください。ごめんなさい。ごめんなさい…許してください…』
――またあの日のフラッシュバック…
あの時の姉の声は未だ薄れることなく、鮮明に脳裏に焼きついている。
「姉さん…」
ぽつりと呟く。
それが決して自分への慰めや癒しになるものではないことはよく分かっていた。
『俺はいつでも、お前の側にいるからな。』
彼の言葉が脳裏に蘇る。あの時の彼の言葉が、どれほど私を勇気づけてくれたことか。
期待していた以上の言葉を思い出し、私はまた涙を堪えることができなくなる。
その気持ちをはぐらかすかのように私は再度、医学書のページをめくるのだった。
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気が付いた時には既に男たちの姿はなかった。その代わり、よく知った顔がそこにはあった。
短めの髪に、精悍で整った顔つき。しなやかで鍛えられた身体に白いシャツが貼り付いていた。
一瞬にして心を解きほぐす温かい…本当に温かい大きな手。肌の感触。優しい瞳。
彼の腕の中に抱かれながら、私は大声で泣いた。泣いた。涙が自分の身体中の汚れを、そして深く切りつけられた痛みを全て流してくれるような気がして。とにかく泣き続けた。
「ごめんな。遅くなって…本当にごめんな。」
彼の胸がこんなに大きく、逞しく見えたことはなかった。
「遅かったよ、信二。本当に…本当に…遅かったよー!!」
私はその言葉とは裏腹に、彼の腕の中でこの恐怖から解放された安堵感を得ていった。しかしそれと同時に、言いようもない罪悪感が芽を出し、私を再び萎縮させるのだった。
私は…汚された…。私は…私は…
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
謝罪の言葉が口をついて出る。何度も、何度も、何度も。涙が止まらない。
彼は、そんな私の身体をさらに強く抱きしめた。
「俺はいつでも、お前の側にいるからな。」
その言葉は、この時私の側にいられなかった彼の後悔と懺悔であるように思えた。
私を抱く手が震えている。雨の冷たさなど忘れさせてくれるその手のぬくもりが、私は好きだった。
彼の深さを実感していくにつれて、私は心から安心できた。安心して、そのまま眠りについた。
私は震えていた。
そして自分が書斎にいることを確認し、大きく安堵の息を吐き出した。
回想するだけで、あの時の感情がまざまざと蘇ってくる。
『やめて…やめて…ください。ごめんなさい。ごめんなさい…許してください…』
――またあの日のフラッシュバック…
あの時の姉の声は未だ薄れることなく、鮮明に脳裏に焼きついている。
「姉さん…」
ぽつりと呟く。
それが決して自分への慰めや癒しになるものではないことはよく分かっていた。
『俺はいつでも、お前の側にいるからな。』
彼の言葉が脳裏に蘇る。あの時の彼の言葉が、どれほど私を勇気づけてくれたことか。
期待していた以上の言葉を思い出し、私はまた涙を堪えることができなくなる。
その気持ちをはぐらかすかのように私は再度、医学書のページをめくるのだった。
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{
2007/08/13(月) }
あの日の恐怖と怒りは、決して忘れられない。
私の愛する姉を殺した連中の顔は、今でも目に焼きついている。
「やめて…もう…これ以上…」
悲鳴、絶叫、嗚咽…。そこには悪夢の全てがあった。
ナイフを突きつけられ、為す術もなく。私の目の前で蹂躙され、グチャグチャにされた。
私自身もまた境遇は同じだった。でも、発狂し続ける姉を前に私は努めて冷静でいる必要があった。
あいつらの汚らしいモノが頭から離れない。何も出来ない自分が心底腹立たしかった。
ぼろ屑のようになった肢体。それでも姉は抵抗を続けていた。
「うっ……はぁ…はぁ…はぁ…」
私たちを襲った三人の男は、それぞれ私と姉に交代で精液を注ぎ込んだ。
男たちは精力を放出しきり、荒い息遣いのまま私たちを見下ろしていた。
残されていたのは、抜け殻のようになった私と…既にピクリとも動かなくなっていた姉だった。
――汚された…。汚されてしまった…。姉さんは…え?…
「悪く思うなよ。ちょっと抵抗が激しかったからな。仕方なかったんだよ。」
派手な柄のシャツを着た男が薄気味悪い笑いを向けながらそう話す。
――仕方がない?…仕方が?…何?…
言葉の意味を理解することすらできなかった。目の前で突然起こった出来事が、全て嘘であるかのように感じる。まるで実感がない。
「大丈夫だよ。お嬢ちゃんもすぐ楽にしてあげるから。優しくな…」
男たちの手足や身体が絡みついてくる。
私はただ欲望のままに動かされる玩具になっていた。そう。まさに、小さな男の子たちが、お気に入りの玩具を我先にと奪い合うような。そんな光景…
理性も感情も次第に薄れ、私は既に人形になってしまっていた。
人間のあくまで本能的な行動。防衛本能。逃避。
私は自分の意識を、肉体から逃がしてしまっていたのだろう。
そこでは痛みも苦しみも、恥じらいも屈辱も、一切感じることはなかった。
飽きるまで肉体を弄ばれる。そして飽きたら…
恐怖心はなかった。これが運命だと言うのなら、「はいそうですか」と受け入れるのが正しいのか。
私はもう考えることすらできなくなっていた。
ただこの身を捧げ、ただその時が終わるのを待ちながらこの残酷な運命を受け入れる。
それが一番楽であるようにどこかで感じていたのだろう。
私は姉の隣に、血まみれにされて転がされた。
――もう、終わったのかな…
男たちはそれぞれが十分に果てた後は、何食わぬ顔で平然としていた。
感想や興奮を口々に伝えたり、今後のことを話したりしていたように思う。
それは本当に日常の何気ない光景のように見えた。
私はその言葉の数々を、ただただ無感情に耳から脳へと伝達していた。
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私の愛する姉を殺した連中の顔は、今でも目に焼きついている。
「やめて…もう…これ以上…」
悲鳴、絶叫、嗚咽…。そこには悪夢の全てがあった。
ナイフを突きつけられ、為す術もなく。私の目の前で蹂躙され、グチャグチャにされた。
私自身もまた境遇は同じだった。でも、発狂し続ける姉を前に私は努めて冷静でいる必要があった。
あいつらの汚らしいモノが頭から離れない。何も出来ない自分が心底腹立たしかった。
ぼろ屑のようになった肢体。それでも姉は抵抗を続けていた。
「うっ……はぁ…はぁ…はぁ…」
私たちを襲った三人の男は、それぞれ私と姉に交代で精液を注ぎ込んだ。
男たちは精力を放出しきり、荒い息遣いのまま私たちを見下ろしていた。
残されていたのは、抜け殻のようになった私と…既にピクリとも動かなくなっていた姉だった。
――汚された…。汚されてしまった…。姉さんは…え?…
「悪く思うなよ。ちょっと抵抗が激しかったからな。仕方なかったんだよ。」
派手な柄のシャツを着た男が薄気味悪い笑いを向けながらそう話す。
――仕方がない?…仕方が?…何?…
言葉の意味を理解することすらできなかった。目の前で突然起こった出来事が、全て嘘であるかのように感じる。まるで実感がない。
「大丈夫だよ。お嬢ちゃんもすぐ楽にしてあげるから。優しくな…」
男たちの手足や身体が絡みついてくる。
私はただ欲望のままに動かされる玩具になっていた。そう。まさに、小さな男の子たちが、お気に入りの玩具を我先にと奪い合うような。そんな光景…
理性も感情も次第に薄れ、私は既に人形になってしまっていた。
人間のあくまで本能的な行動。防衛本能。逃避。
私は自分の意識を、肉体から逃がしてしまっていたのだろう。
そこでは痛みも苦しみも、恥じらいも屈辱も、一切感じることはなかった。
飽きるまで肉体を弄ばれる。そして飽きたら…
恐怖心はなかった。これが運命だと言うのなら、「はいそうですか」と受け入れるのが正しいのか。
私はもう考えることすらできなくなっていた。
ただこの身を捧げ、ただその時が終わるのを待ちながらこの残酷な運命を受け入れる。
それが一番楽であるようにどこかで感じていたのだろう。
私は姉の隣に、血まみれにされて転がされた。
――もう、終わったのかな…
男たちはそれぞれが十分に果てた後は、何食わぬ顔で平然としていた。
感想や興奮を口々に伝えたり、今後のことを話したりしていたように思う。
それは本当に日常の何気ない光景のように見えた。
私はその言葉の数々を、ただただ無感情に耳から脳へと伝達していた。
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2007/08/12(日) }
姉が死んで、半月が経った。
あの時、あれほどまでに私の頬を濡らした涙も、もう枯れ果ててしまった。
女医として多くの患者から信頼されていた。研究熱心でもあった。私のたった一人の姉。
いろいろな話をした。相談をした。励ましてくれた。力になってくれた。
もうここに彼女の姿はない。
姉がいなくなってからの生活は、私にとってはまるで太陽を失った闇の世界を生きるようなものだった。
だからこそ、かつて姉の書斎だったこの部屋に、私は彼女の姿を求めるようになったのだろう。
机上に無雑作に置かれた数冊の医学書に、ふと目を落とす。
この部屋にある多くの医学書を通すことで、私はその先に姉の面影を感じることができた。それが、私に残された彼女との唯一のコミュニケーション手段だった。
――私も将来は姉さんと同じ医師になりたいな。
――優美子はまだ子どもだからね。もう少し大きくなったら一緒に勉強しようね。
そう話していたのがつい最近のことのように感じる。
姉のようになりたい。ただそれだけが私の生き甲斐だった。私は姉の後姿に惚れていたのだ。
パラパラとページをめくる。
私はそれを通じて、彼女と確かに会話をすることができた。彼女からのメッセージを受け取ることができた。
何度も目を通した書物の数々。それを通じて学んだことも本当にたくさんあった。
――いつから変わってしまったんだろう。
姉がこの世を去ってから、私はそれまで以上に医学書を読み漁り、独学で研究するようになった。
それは、姉がいた頃の好奇心からの学習とは大きくかけ離れたものとなった。
強い義務感、使命感。それを支えていたのは…憎悪と、呪心。
私はあの日を境に、姉のような立派な医師になりたいという夢を捨てた。それと同時に私は、別の大きな目標をもてたようにも感じていた。
あの男たちのことを考える度に吐き気を催した。
性欲に囚われ、欲望のままに、女をまるで自分の快楽のための道具のようにする。
――男なんて…皆、汚らわしい屑だ。
そう思い始めた頃には、きっともう私の中の何かが完全に壊れていたのだろう。
でも、そんな思いから熱心に始めた研究に後悔の念などは微塵もなかった。
これが姉の仇を取ることに近付く手段であると考えるほど、私はますます研究に没頭できた。
彼女が医学書を通じて、私に語りかけてくる。研究は私にとって彼女との会話そのものだった。
――大丈夫だからね、姉さん。絶対あいつらを…壊してみせるから…
無意識に口元に笑みが浮かぶ。
姉と私との共同研究。――人体の壊し方。
その成果を試す時が近いと思えば思うほど、私の胸は高鳴った。
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あの時、あれほどまでに私の頬を濡らした涙も、もう枯れ果ててしまった。
女医として多くの患者から信頼されていた。研究熱心でもあった。私のたった一人の姉。
いろいろな話をした。相談をした。励ましてくれた。力になってくれた。
もうここに彼女の姿はない。
姉がいなくなってからの生活は、私にとってはまるで太陽を失った闇の世界を生きるようなものだった。
だからこそ、かつて姉の書斎だったこの部屋に、私は彼女の姿を求めるようになったのだろう。
机上に無雑作に置かれた数冊の医学書に、ふと目を落とす。
この部屋にある多くの医学書を通すことで、私はその先に姉の面影を感じることができた。それが、私に残された彼女との唯一のコミュニケーション手段だった。
――私も将来は姉さんと同じ医師になりたいな。
――優美子はまだ子どもだからね。もう少し大きくなったら一緒に勉強しようね。
そう話していたのがつい最近のことのように感じる。
姉のようになりたい。ただそれだけが私の生き甲斐だった。私は姉の後姿に惚れていたのだ。
パラパラとページをめくる。
私はそれを通じて、彼女と確かに会話をすることができた。彼女からのメッセージを受け取ることができた。
何度も目を通した書物の数々。それを通じて学んだことも本当にたくさんあった。
――いつから変わってしまったんだろう。
姉がこの世を去ってから、私はそれまで以上に医学書を読み漁り、独学で研究するようになった。
それは、姉がいた頃の好奇心からの学習とは大きくかけ離れたものとなった。
強い義務感、使命感。それを支えていたのは…憎悪と、呪心。
私はあの日を境に、姉のような立派な医師になりたいという夢を捨てた。それと同時に私は、別の大きな目標をもてたようにも感じていた。
あの男たちのことを考える度に吐き気を催した。
性欲に囚われ、欲望のままに、女をまるで自分の快楽のための道具のようにする。
――男なんて…皆、汚らわしい屑だ。
そう思い始めた頃には、きっともう私の中の何かが完全に壊れていたのだろう。
でも、そんな思いから熱心に始めた研究に後悔の念などは微塵もなかった。
これが姉の仇を取ることに近付く手段であると考えるほど、私はますます研究に没頭できた。
彼女が医学書を通じて、私に語りかけてくる。研究は私にとって彼女との会話そのものだった。
――大丈夫だからね、姉さん。絶対あいつらを…壊してみせるから…
無意識に口元に笑みが浮かぶ。
姉と私との共同研究。――人体の壊し方。
その成果を試す時が近いと思えば思うほど、私の胸は高鳴った。
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2007/08/11(土) }
とうに夕暮れを過ぎ、暗闇が辺り全体を覆っている。
所々に街灯の灯ったひと気のない公園を、僕はのんびりと歩いていた。
時間が無制限にある僕にとって、こんな時間帯にこういう場所を当てもなくふらふらと歩くことは決して珍しいことではない。
何かを期待しているわけでもない。目的があるわけでもない。ニートにはそれだけ時間が無限にあるということだ。今日はたまたま気が向いてここに来ただけ。それ以外の理由はなかった。
だからこそ、僕がその光景を目の当たりにしたのは、本当に偶然のことだった。
耳を劈くような怒声。僕は本能的に身の危険を感じ、無意識に茂みに身を隠した。
「まさかまた会うことになるなんてな。今日も楽しませてくれるんだろ。」
漆黒の公園に飛び交う言葉はさっきから穏やかでないものばかりだ。厄介なことに巻き込まれはしないかと保身を考えたのは、僕にとって本当にごく自然なことだったと思う。
――このまま横を通り過ぎて、万が一矛先がこちらに向かないとも限らない。絶対に関わりたくない。
そんな思いでしばし草むらにじっと身を潜める。しかしそれでも、今そこで行われていることに僕が興味を示さなかったと言えば嘘になる。
僕は好奇心から、じっと目を凝らしてその様子を傍観することにした。
チンピラ風の男が三人。絡んでいるのは紛れもない、女の子一人だった。高校生くらいだろうか。
背中にかかる美しい黒髪に、均整のとれたプロポーション。
不謹慎にも、男たちが欲情している様子は不自然でなく、あるいはそれが当然であるとも思わせるほど、彼女のそれは際立ち、あまりにも魅力的だった。
当然のことながら、僕とその女の子の間には接点は全くない。関わりもなければ義理もない。
つまり、僕が彼女をここで助けに入らないという選択肢は、別段僕に罪悪感を与えるものではなかったのだ。
「お兄さんたちをわざわざ呼び出すなんて気が利いてるじゃねえか。今日は優しくしてやるからな。」
三人の中でも一際大柄な、サングラスをかけた男がねちっこい口調で迫る。相手の女の子と比べてみても頭一個分は違うのではないかと思うほどの対格差だ。つられるように、他の二人も口を開く。
「俺たちの感触が病みつきになっちまったかな。んじゃまたお話しよっか。」
「言葉じゃなくって身体を使った会話ってやつな。難しいかな。」
僕は不謹慎にも内心興奮していた。
――今、ここで男たちに跳びかかり、あっと言う間にやつらを片付けてしまう。そして感謝した彼女は僕を尊敬の眼差しで見るようになるのだ。――そして彼女と親密になり…やがて…
妄想にしばし浸る。他人事というのはまさにこういうことを言うのだろう。現に僕には、この日常ではなかなかお目にかかれない状況に幾ばくかの興奮さえ覚えていた。あわよくばここで乱れた制服なんかから「イイモノ」が見られるかもしれないなどと、うっすらと期待すらしていた。
チンピラ風の男たちは彼女にじわじわと迫り、その逃げ道を塞ぐ。
僕にはやはりそこへ飛び込んでいく勇気はまるでなかった。それどころか、男たちの様子からそれが冗談半分などではないことが徐々に分かっていくにつれて、僕の足はさらにガクガクと震えが止まらず、身体は硬直して身動き一つ取れなくなっていくのだ。
――僕には何もできない。何もできないんだ。
自分に言い聞かせる。たまたまここを通りかかり、たまたまこの光景を目にした。ただそれだけ。いや、場合によってはこんなこと見なかったことにしてもいい。
――そうだよ。僕は何も見てない。聞いてない。
そう思いながら僕はじっと、この光景の一部始終をしっかりと目に焼き付けようと思った。
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所々に街灯の灯ったひと気のない公園を、僕はのんびりと歩いていた。
時間が無制限にある僕にとって、こんな時間帯にこういう場所を当てもなくふらふらと歩くことは決して珍しいことではない。
何かを期待しているわけでもない。目的があるわけでもない。ニートにはそれだけ時間が無限にあるということだ。今日はたまたま気が向いてここに来ただけ。それ以外の理由はなかった。
だからこそ、僕がその光景を目の当たりにしたのは、本当に偶然のことだった。
耳を劈くような怒声。僕は本能的に身の危険を感じ、無意識に茂みに身を隠した。
「まさかまた会うことになるなんてな。今日も楽しませてくれるんだろ。」
漆黒の公園に飛び交う言葉はさっきから穏やかでないものばかりだ。厄介なことに巻き込まれはしないかと保身を考えたのは、僕にとって本当にごく自然なことだったと思う。
――このまま横を通り過ぎて、万が一矛先がこちらに向かないとも限らない。絶対に関わりたくない。
そんな思いでしばし草むらにじっと身を潜める。しかしそれでも、今そこで行われていることに僕が興味を示さなかったと言えば嘘になる。
僕は好奇心から、じっと目を凝らしてその様子を傍観することにした。
チンピラ風の男が三人。絡んでいるのは紛れもない、女の子一人だった。高校生くらいだろうか。
背中にかかる美しい黒髪に、均整のとれたプロポーション。
不謹慎にも、男たちが欲情している様子は不自然でなく、あるいはそれが当然であるとも思わせるほど、彼女のそれは際立ち、あまりにも魅力的だった。
当然のことながら、僕とその女の子の間には接点は全くない。関わりもなければ義理もない。
つまり、僕が彼女をここで助けに入らないという選択肢は、別段僕に罪悪感を与えるものではなかったのだ。
「お兄さんたちをわざわざ呼び出すなんて気が利いてるじゃねえか。今日は優しくしてやるからな。」
三人の中でも一際大柄な、サングラスをかけた男がねちっこい口調で迫る。相手の女の子と比べてみても頭一個分は違うのではないかと思うほどの対格差だ。つられるように、他の二人も口を開く。
「俺たちの感触が病みつきになっちまったかな。んじゃまたお話しよっか。」
「言葉じゃなくって身体を使った会話ってやつな。難しいかな。」
僕は不謹慎にも内心興奮していた。
――今、ここで男たちに跳びかかり、あっと言う間にやつらを片付けてしまう。そして感謝した彼女は僕を尊敬の眼差しで見るようになるのだ。――そして彼女と親密になり…やがて…
妄想にしばし浸る。他人事というのはまさにこういうことを言うのだろう。現に僕には、この日常ではなかなかお目にかかれない状況に幾ばくかの興奮さえ覚えていた。あわよくばここで乱れた制服なんかから「イイモノ」が見られるかもしれないなどと、うっすらと期待すらしていた。
チンピラ風の男たちは彼女にじわじわと迫り、その逃げ道を塞ぐ。
僕にはやはりそこへ飛び込んでいく勇気はまるでなかった。それどころか、男たちの様子からそれが冗談半分などではないことが徐々に分かっていくにつれて、僕の足はさらにガクガクと震えが止まらず、身体は硬直して身動き一つ取れなくなっていくのだ。
――僕には何もできない。何もできないんだ。
自分に言い聞かせる。たまたまここを通りかかり、たまたまこの光景を目にした。ただそれだけ。いや、場合によってはこんなこと見なかったことにしてもいい。
――そうだよ。僕は何も見てない。聞いてない。
そう思いながら僕はじっと、この光景の一部始終をしっかりと目に焼き付けようと思った。
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{
2007/03/14(水) }
初めまして。作者のryonazです。
「苦しむ女萌え」といったニュアンスで「リョナ(猟奇オナニー)」という言葉があることを、最近になって知りました。
自分の中ですごくしっくりくる嗜好だったんですが、ただ私自身には加えて「苦しめる女萌え」な面もあり、やられる側が男でもいいのでは? と密かに思ってきました。
この嗜好を、勝手に「逆リョナ」と呼ぶことにしました。
そんなわけでこのサイトのコンセプトは「逆リョナ」です。女から男への責めを主体としています。
自分の中にある歪な思いを一つの作品として表現してみたいと考え、今回の執筆を試みました。
執筆当初は正直、こんな長編になるとは思っていませんでした。
筆を走らせている快感に酔う瞬間があると言うか、無心で書いている感じと言うか……
没頭していく中、気付いたらずいぶんと長い作品になっていました。
駄文ながら内容には、拙い自分なりの趣向を凝らしてみたつもりですが、如何なものだったでしょうか。
良くも悪くも、おそらくこの作品が自分にとっての源流となり、土台となっていくんだろうと何となく感じています。
まぁ、このあたりは私の自己満足の世界ですが。
ご愛読いただいた方々には、この場をもって厚く御礼を申し上げます。
尚、作品についてのご意見、ご感想などありましたら、コメント欄に投稿していただければ幸いです。
●優美子のイラストを頂いています。こちらからどうぞ。→ イラスト1 イラスト2
[ 初出 ]
女がリンチや暴力で男を従わせる小説(dat落ち)
女がリンチや暴力で男を従わせる小説2(dat落ち)
作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。
よろしければ、ブログランキングのクリックにもご協力ください。
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「苦しむ女萌え」といったニュアンスで「リョナ(猟奇オナニー)」という言葉があることを、最近になって知りました。
自分の中ですごくしっくりくる嗜好だったんですが、ただ私自身には加えて「苦しめる女萌え」な面もあり、やられる側が男でもいいのでは? と密かに思ってきました。
この嗜好を、勝手に「逆リョナ」と呼ぶことにしました。
そんなわけでこのサイトのコンセプトは「逆リョナ」です。女から男への責めを主体としています。
自分の中にある歪な思いを一つの作品として表現してみたいと考え、今回の執筆を試みました。
執筆当初は正直、こんな長編になるとは思っていませんでした。
筆を走らせている快感に酔う瞬間があると言うか、無心で書いている感じと言うか……
没頭していく中、気付いたらずいぶんと長い作品になっていました。
駄文ながら内容には、拙い自分なりの趣向を凝らしてみたつもりですが、如何なものだったでしょうか。
良くも悪くも、おそらくこの作品が自分にとっての源流となり、土台となっていくんだろうと何となく感じています。
まぁ、このあたりは私の自己満足の世界ですが。
ご愛読いただいた方々には、この場をもって厚く御礼を申し上げます。
尚、作品についてのご意見、ご感想などありましたら、コメント欄に投稿していただければ幸いです。
●優美子のイラストを頂いています。こちらからどうぞ。→ イラスト1 イラスト2
[ 初出 ]
女がリンチや暴力で男を従わせる小説(dat落ち)
女がリンチや暴力で男を従わせる小説2(dat落ち)
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{
2007/03/14(水) }
優美子がにっこりと笑う。
「わりとよく書けてるじゃない。」
その手には、原稿の束を持っていた。彼女の指は、相変わらず白くて美しい。
彼女の傍らにいる男は苦笑し、
「気楽に言ってくれるな。これで食ってく苦しみは小説家にしか分からないよ。」
と軽いため息をついた。
「ふふ、ごめんごめん。あの時のこと、本当にリアルに再現されてるからさ。」
「……あれからもう五年も経つのか……」
優美子は頷き、側にいる男――信二――の肩にそっと頭を寄せた。
春の陽射しが降り注ぐ庭を見つめるその目は、どこか哀しみの色を湛えていた。
「うん……。姉の七回忌ももうすぐだよ。」
「京香の……」
二人はしばし、無言で肩を寄せ合った。
「私もやっと姉の墓前に胸を張って行ける。産む喜びを知らずに亡くなった姉へのね……」
「ちゃんと報告しなきゃな。医者としてじゃなくて、妹としてな。」
そうして信二は、「『俺の子』を産んでくれてありがとう」と彼女に囁いた。
見つめあう二人。そこには永遠を誓った愛の形があった。
「それにしても、私が人の命を救う立場になるなんて……笑っちゃうね。」
そう言って、彼女は足元にいるソレを踏みつけた。
「『正義』……だっけ?」
彼女は目を細め、紅い唇を弓なりに曲げた。
優美子が踏みつけている物……それは人間だった。
全裸で靴下だけを履き、首輪をベッドに括りつけられている。
信二は、その存在に今気付いたかのような顔をし、そして嗤った。
「ああ、そうそう。よく覚えてたな、優美子。こいつが好きだった言葉。」
信二が見下ろしているものは、そう……俺だった。
四つん這いの姿勢のまま、優美子の美しい足を背中で受け止める。
「だってそいつ、一番面白いんだもの。」
「よかったな、竜崎。」
俺は信二を見上げ、素直に頷いた。
「はい。ありがとうございます。」
「正義はどうした? 本当に情けないな、お前。」
「はい、その通りです。ご主人様。」
俺の返事などは全く気にせず、二人は外出の準備を始めた。
「これから俺たち、ちょっと出かけてくるから。」
「今日も半殺しにして可愛がってあげるから、帰るまでいい子で待っててね。」
そう言うと優美子はサッカーボールを蹴るように、無防備な俺の腹を蹴り上げた。
俺はたまらず崩れ落ちてしまった。そしてすぐにまた、四つん這いの姿勢に戻る。
太田、影山、田添、山崎……
かつて番長と呼ばれた男たちもまた、俺と同じ姿でそこにいた。
廊下の端には、藤村の姿もあった。そこに小倉の姿はない。
忘れもしないあの日……優美子自らの裁きを受けて……全く羨ましい奴だ……
そして俺は「他の飼い犬」の恨めしそうな目線を感じながら、誇らしげに優美子の言葉に答えるのだった。
「はい。ありがとうございます。お待ちしております。」
END
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「わりとよく書けてるじゃない。」
その手には、原稿の束を持っていた。彼女の指は、相変わらず白くて美しい。
彼女の傍らにいる男は苦笑し、
「気楽に言ってくれるな。これで食ってく苦しみは小説家にしか分からないよ。」
と軽いため息をついた。
「ふふ、ごめんごめん。あの時のこと、本当にリアルに再現されてるからさ。」
「……あれからもう五年も経つのか……」
優美子は頷き、側にいる男――信二――の肩にそっと頭を寄せた。
春の陽射しが降り注ぐ庭を見つめるその目は、どこか哀しみの色を湛えていた。
「うん……。姉の七回忌ももうすぐだよ。」
「京香の……」
二人はしばし、無言で肩を寄せ合った。
「私もやっと姉の墓前に胸を張って行ける。産む喜びを知らずに亡くなった姉へのね……」
「ちゃんと報告しなきゃな。医者としてじゃなくて、妹としてな。」
そうして信二は、「『俺の子』を産んでくれてありがとう」と彼女に囁いた。
見つめあう二人。そこには永遠を誓った愛の形があった。
「それにしても、私が人の命を救う立場になるなんて……笑っちゃうね。」
そう言って、彼女は足元にいるソレを踏みつけた。
「『正義』……だっけ?」
彼女は目を細め、紅い唇を弓なりに曲げた。
優美子が踏みつけている物……それは人間だった。
全裸で靴下だけを履き、首輪をベッドに括りつけられている。
信二は、その存在に今気付いたかのような顔をし、そして嗤った。
「ああ、そうそう。よく覚えてたな、優美子。こいつが好きだった言葉。」
信二が見下ろしているものは、そう……俺だった。
四つん這いの姿勢のまま、優美子の美しい足を背中で受け止める。
「だってそいつ、一番面白いんだもの。」
「よかったな、竜崎。」
俺は信二を見上げ、素直に頷いた。
「はい。ありがとうございます。」
「正義はどうした? 本当に情けないな、お前。」
「はい、その通りです。ご主人様。」
俺の返事などは全く気にせず、二人は外出の準備を始めた。
「これから俺たち、ちょっと出かけてくるから。」
「今日も半殺しにして可愛がってあげるから、帰るまでいい子で待っててね。」
そう言うと優美子はサッカーボールを蹴るように、無防備な俺の腹を蹴り上げた。
俺はたまらず崩れ落ちてしまった。そしてすぐにまた、四つん這いの姿勢に戻る。
太田、影山、田添、山崎……
かつて番長と呼ばれた男たちもまた、俺と同じ姿でそこにいた。
廊下の端には、藤村の姿もあった。そこに小倉の姿はない。
忘れもしないあの日……優美子自らの裁きを受けて……全く羨ましい奴だ……
そして俺は「他の飼い犬」の恨めしそうな目線を感じながら、誇らしげに優美子の言葉に答えるのだった。
「はい。ありがとうございます。お待ちしております。」
END
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2007/03/13(火) }
「ふふ……じゃあ、そろそろお別れだね……」
あどけない笑みを浮かべながら、美しいその顔を俺に近づける。
「お、またやるのか? あんまり増えても邪魔なんだよなぁ。」
「いいじゃない。要らなくなったら、どうとでも始末できるし。」
――増える? 始末?……こいつらは何の話をしているんだ?
悪魔が俺の前に来る。
「どうして……どうして……?」
それは確かに俺の中から出た言葉だった。どうして?……何が、「どうして」?
――もう……何が何だか分からない……
「あなたは……今までで一番楽しかったよ。」
その言葉が聞こえたと思った瞬間……
――!!!――
……目の前に閃光が走り、その後真っ暗になった。
「おおおおおお!……うううううえええ!……」
優美子の強烈な膝蹴りが俺の腹に突き刺さった。
「げえええええおお……」
俺はたまらず吐血した。
中にこんなに入っていたのかと思うほど大量の血が、俺の口から押し出される。
「ふふ……肝臓終わったね。……簡単には殺さないから……」
そして俺は、稲妻のような優美子の膝蹴りを何度も腹に受け続けた。
「腎臓! 胆嚢!……ふふ……苦しい? ふふふふ……」
本当に、心から楽しんでいる声だった……そして……
その声と同様に優美子の女神のように美しい顔は……楽しくて仕方がない様子だった。
女神は……人間だった……あははは……めが……め……あは……
「ぐはああああっ!」「おぐえおえええっ!」「うう……ううぅぅっ……」
俺は中身を壊されながら……昇天した……
――そう……もう俺は、人に非ず……。俺は……廃人だからね……あはははははははは……
漆黒の闇に包まれた体育館に、男の臓器が一つ一つ破裂していく音が鳴り響いていた……
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あどけない笑みを浮かべながら、美しいその顔を俺に近づける。
「お、またやるのか? あんまり増えても邪魔なんだよなぁ。」
「いいじゃない。要らなくなったら、どうとでも始末できるし。」
――増える? 始末?……こいつらは何の話をしているんだ?
悪魔が俺の前に来る。
「どうして……どうして……?」
それは確かに俺の中から出た言葉だった。どうして?……何が、「どうして」?
――もう……何が何だか分からない……
「あなたは……今までで一番楽しかったよ。」
その言葉が聞こえたと思った瞬間……
――!!!――
……目の前に閃光が走り、その後真っ暗になった。
「おおおおおお!……うううううえええ!……」
優美子の強烈な膝蹴りが俺の腹に突き刺さった。
「げえええええおお……」
俺はたまらず吐血した。
中にこんなに入っていたのかと思うほど大量の血が、俺の口から押し出される。
「ふふ……肝臓終わったね。……簡単には殺さないから……」
そして俺は、稲妻のような優美子の膝蹴りを何度も腹に受け続けた。
「腎臓! 胆嚢!……ふふ……苦しい? ふふふふ……」
本当に、心から楽しんでいる声だった……そして……
その声と同様に優美子の女神のように美しい顔は……楽しくて仕方がない様子だった。
女神は……人間だった……あははは……めが……め……あは……
「ぐはああああっ!」「おぐえおえええっ!」「うう……ううぅぅっ……」
俺は中身を壊されながら……昇天した……
――そう……もう俺は、人に非ず……。俺は……廃人だからね……あはははははははは……
漆黒の闇に包まれた体育館に、男の臓器が一つ一つ破裂していく音が鳴り響いていた……
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{
2007/03/12(月) }
目が慣れてくるに従って、そこに現れた人物の姿が顕わになった。
そしてそのことが、俺をさらなる混乱に招き入れることになった。
「信二!!」
俺は思わず声を上げた。
「お前……死んだはずじゃ? 何で?」
「おいおい。俺を勝手に殺すなよ。はは、いい姿だな、竜崎。」
「どういうことだ?……復讐に行ったんじゃ……」
「復讐? あぁ、行ったよ。ほら、そこにいる俺の彼女がね。」
……俺は絶句した。
「あれ、言わなかったっけ? 強姦されたのは二人だったんだ。」
信二は昨日の夕食のメニューでも話すかのように、あっけらかんと言った。
呆然とする俺をあざ笑うかのように、優美子は付け加えた。
「姉が奴らに殺された時、私もそこにいたの。」
そう、犯された信二の彼女……それは紛れもない、優美子だったのだ。
その時唐突に、一度だけ見かけた信二の彼女の顔が脳裏に浮かんできた。
遠目にも美しかったその瞳、鼻、口は、確かに目の前の女性がもっているものだった……
「彼が言うにはね、あなたは私の復讐をしに行って死んだんだって。信二がそんなかっこいい彼氏だったらよかったのにね。」
優美子は笑った。
「はは、いいじゃないか。あの時はすぐ妊娠してないって分かったんだからさ。でも俺がそんなお前のために復讐なんて……美談だよなぁ。」
……事の真相を悟った俺は、目の前が真っ暗になった。絶望と失望……虚無感……
彼女もまた姉と同様、強姦の被害者だったのだ。
姉は殺され、妹――優美子――は助かった。そして復讐した……
「教えてくれ……どうして……どうしてこんなことを……?」
「楽しいからよ。」
俺の問いに、彼女はあっさりと答えた。
「正当防衛でしょ……正義という名目をかざした虐待に快楽を覚えたってところかな。」
彼女が小首をかしげて笑いかける。
「言ったでしょ。私も『正義』って言葉が一番好きだったって。」
俺は脱力し、闇に隠れて見えない体育館の天井をただ見つめるしかなかった。
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そしてそのことが、俺をさらなる混乱に招き入れることになった。
「信二!!」
俺は思わず声を上げた。
「お前……死んだはずじゃ? 何で?」
「おいおい。俺を勝手に殺すなよ。はは、いい姿だな、竜崎。」
「どういうことだ?……復讐に行ったんじゃ……」
「復讐? あぁ、行ったよ。ほら、そこにいる俺の彼女がね。」
……俺は絶句した。
「あれ、言わなかったっけ? 強姦されたのは二人だったんだ。」
信二は昨日の夕食のメニューでも話すかのように、あっけらかんと言った。
呆然とする俺をあざ笑うかのように、優美子は付け加えた。
「姉が奴らに殺された時、私もそこにいたの。」
そう、犯された信二の彼女……それは紛れもない、優美子だったのだ。
その時唐突に、一度だけ見かけた信二の彼女の顔が脳裏に浮かんできた。
遠目にも美しかったその瞳、鼻、口は、確かに目の前の女性がもっているものだった……
「彼が言うにはね、あなたは私の復讐をしに行って死んだんだって。信二がそんなかっこいい彼氏だったらよかったのにね。」
優美子は笑った。
「はは、いいじゃないか。あの時はすぐ妊娠してないって分かったんだからさ。でも俺がそんなお前のために復讐なんて……美談だよなぁ。」
……事の真相を悟った俺は、目の前が真っ暗になった。絶望と失望……虚無感……
彼女もまた姉と同様、強姦の被害者だったのだ。
姉は殺され、妹――優美子――は助かった。そして復讐した……
「教えてくれ……どうして……どうしてこんなことを……?」
「楽しいからよ。」
俺の問いに、彼女はあっさりと答えた。
「正当防衛でしょ……正義という名目をかざした虐待に快楽を覚えたってところかな。」
彼女が小首をかしげて笑いかける。
「言ったでしょ。私も『正義』って言葉が一番好きだったって。」
俺は脱力し、闇に隠れて見えない体育館の天井をただ見つめるしかなかった。
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