[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 望みの品のはずだった。
 可愛らしさに惚れ込み、即刻、注文することを決めたものだ。届いた品は、インターネットで見たそれと寸分違わぬ姿でそこにあった。それでも何かが違う。そう思えてならなかった。
 赤いリボンが飾る半透明の袋を見ながら、
「はぁ……」
 理由のわからない溜息を吐く。
 プレゼントには申し分ないはずの高級品。
 ラッピングの表面には、"Ich liebe es"と書かれている。しかしそれが、私の溜息をさらに大きなものにする。納得がいかないまま、自信をもって渡すことなどできない。
「なんだかなあ……」
 つい声が漏れる。
 リボンをほどけば、ハート型の透明ケースが顔を出す。中には八個の茶色い塊が見えた。他の誰でもない、私自身が購入したミルクチョコレートだ。それなのに――
「……?」
 キッチンに持っていき、ラップを敷いて中身をバラバラと出してみる。
「そっか……」
 なんとなく、自分の抱いた違和感の正体がわかった気がした。
 既製品であることが嫌なのだ。
 八個のチョコレートを細かく刻み、ボウルに入れる。バットにオーブンシートを敷く。生クリームを鍋に入れて温め、ボウルに注ぐ。泡立て器で混ぜ合わせる。バットに流し込み、冷蔵庫で冷やす――
 ……どれくらい奮闘しただろうか。
 もともと、キッチンに立つことさえ億劫な性格なのだ。この程度の作業でさえ、インターネットで逐一手順を確認して進めなければならない。それでも――
『真心を込めて、自分の手で作る!』
 私にとっては、それが答えだった。例え下手でも。例え笑われても……
 想像通りの酷い出来だった。基本的な生チョコレートなのに。
 ひとつだけ口にしてみる。
「……まずい」
 素直な感想だった。元が良いのだから、私は到底、手作りには向かない人間なのだろう。
 悔しかった。
 バレンタインデーと言えど、時間はいつもと同じように流れていく。
 口の中のチョコレートが、苦味を増してくるようだった。
「タイムアップかな……」
 もう手渡しする時間はない。涙が溢れた。
 落胆し、私は不格好に崩れた茶色い塊を、ごみ箱に向かって投げた。

 もちろん『ごみ箱』は、ソレを有難そうに拾い上げる。
 何事か話しかけてくるのを、私はいつものように無視した。



END

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コメント
この記事へのコメント
お!
バレンタインらしい作品ですね
こういうちょっとした驚き、大好きです^^
2011/02/28(月) 23:04 | URL | ぱらさ #-[ 編集]
ありがとうございます。
ぱらささん、こんにちは。
たくさんの作品にコメントを頂き、大変励まされています。
季節や行事にちなんだ作品を書くのが割と好きなので、今回はバレンタインデーもので。
本作もそうですが、
「ほんの少しであっても、何らかのスパイスが欲しい」
そんな風に考えながら、物語を執筆していることが多いです。
気に入っていただけて何よりです。
これからも、Black Onyx [ブラックオニキス]を、どうぞご贔屓に。
2011/03/01(火) 11:10 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
来年のバレンタインのチョコ

ただ単にピンヒールで

破壊してお渡ししたらいかがでしょ

うか?
2011/10/17(月) 18:39 | URL | 昼の梟 #LkZag.iM[ 編集]
ピンヒールで破壊ですか?
昼の梟さん、こんばんは。またご来訪いただけて嬉しいです。
彼女は、
>『真心を込めて、自分の手で作る!』
それが大切だという結論に達しました。
チョコレートを贈る相手は、想いを寄せる方。
純粋なオトメゴコロをもつ彼女です。
好きな人に、壊してしまったチョコレートを渡したりするものでしょうか?
やはり『ごみ箱』行きになるのではないでしょうか?(笑)
2011/10/18(火) 19:35 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
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