{
2010/09/26(日) }
「全て、前払いでよろしいでしょうか?」
口火を切ったのは麻耶だった。その無感情な反応に、修造は驚いた。大金を払って自分が殺されるのだ、ということが本当に理解できているのだろうか。
「えぇ。本来なら依頼金として前金を半分頂き、成功の報酬として残りの半分を振り込んでいただく形にしているのですが――」
「今回は後払いができませんものね」
さらりと言い、麻耶は上品に笑う。肩紐を再度かけなおし、身を乗り出す。今度は胸が机に押し当てられる形になり、谷間がくっきりと見える。修造は再びタバコに火をつけ、
「まぁ……、そういうことです」
と、苦笑する。
「振込みが確認でき次第、実行いたします。日時のご希望などはありますか?」
「あ、はい。でも、今はまだ……」
「お気になさらず。方法については、一任していただいてよろしいですか? なるべく苦しまないように配慮しますので――」
修造がそう言った時、麻耶の目の色が変わった。タバコの火をもみ消し、さらにぐいと彼に身を寄せる。
「いえ。……できる限りの苦痛を与えて殺していただきたいんです」
「え……?」
修造はしばしその後の言葉が出てこなかった。彼女の意図がわからなかったからだ。
「私に、その……生き地獄を与えてから殺してほしいとお願いしています」
彼女は落ち着いた口調でそう答えた。
修造がなおも黙ったままでいると、麻耶はふいに彼の手を握った。突然の彼女の行為に修造は戸惑い、顔を赤らめた。彼女は大きく息を吸い込むと、真剣な表情で彼に詰め寄る。
「どうか、お願いします」
そう囁き、修造の手を自分の胸元へと引き寄せる。修造は慌てて彼女から手を放した。
「え、あの……」
修造の目が泳ぐ。
「できませんか?」
「いや……、その……」
返事に窮し、修造は言葉を濁した。
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口火を切ったのは麻耶だった。その無感情な反応に、修造は驚いた。大金を払って自分が殺されるのだ、ということが本当に理解できているのだろうか。
「えぇ。本来なら依頼金として前金を半分頂き、成功の報酬として残りの半分を振り込んでいただく形にしているのですが――」
「今回は後払いができませんものね」
さらりと言い、麻耶は上品に笑う。肩紐を再度かけなおし、身を乗り出す。今度は胸が机に押し当てられる形になり、谷間がくっきりと見える。修造は再びタバコに火をつけ、
「まぁ……、そういうことです」
と、苦笑する。
「振込みが確認でき次第、実行いたします。日時のご希望などはありますか?」
「あ、はい。でも、今はまだ……」
「お気になさらず。方法については、一任していただいてよろしいですか? なるべく苦しまないように配慮しますので――」
修造がそう言った時、麻耶の目の色が変わった。タバコの火をもみ消し、さらにぐいと彼に身を寄せる。
「いえ。……できる限りの苦痛を与えて殺していただきたいんです」
「え……?」
修造はしばしその後の言葉が出てこなかった。彼女の意図がわからなかったからだ。
「私に、その……生き地獄を与えてから殺してほしいとお願いしています」
彼女は落ち着いた口調でそう答えた。
修造がなおも黙ったままでいると、麻耶はふいに彼の手を握った。突然の彼女の行為に修造は戸惑い、顔を赤らめた。彼女は大きく息を吸い込むと、真剣な表情で彼に詰め寄る。
「どうか、お願いします」
そう囁き、修造の手を自分の胸元へと引き寄せる。修造は慌てて彼女から手を放した。
「え、あの……」
修造の目が泳ぐ。
「できませんか?」
「いや……、その……」
返事に窮し、修造は言葉を濁した。
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