[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 鴉が一羽、また一羽と肉を啄んでいった。
 高層ビルの間には、狭い路地がある。光ひとつ入らない。人ひとり通ることすら労を要する。当然、そのような不便な場所をわざわざ通る人間もいない。そもそも、路と呼ぶにはあまりにも狭すぎる。気づいている人間がいるかどうかも疑わしい。
 鴉は次第にその数を増し、現れた肉塊に群がっていく。
 ひとつ、またひとつと肉がちぎられていく。誰の目にも触れることなく、その摂食作業は淡々と続けられた。
 この炎天下で、肉塊は既に腐敗し始めていた。既に原型を留めていない。周辺には腐乱臭がじわじわと漂っていく。それでもまだ、そこにある異状に気付く者はいない。尤も、そのうちこの場所を通る不幸者が現れたとしても、その肉塊が人間の死体だと即時判断できる人間は少ないだろう。それほどまでに、「ソレ」はヒトの形を保っていなかった。
 側には、揉み消されたタバコの吸殻がひとつ落ちていた。


 男の手元からは常に煙が上がり続けていた。
 上品で質素な印象の喫茶店だ。入口に見える黒を基調とした看板には、緑の文字で"loveless"と書かれている。店内はさほど広くなく、客もまばらだった。暗めの照明とわずかに聞こえるジャズのメロディ、カウンターで静かにグラスを磨くマスター、その全てが、落ち着いた店の雰囲気を作り上げている。
 壁際のテーブル席に腰を下ろした男は、小さな窓から見える都会の街並みに目を遣る。
 エアコンの効いた店内は、真夏の暑さとは無縁だった。汗だくで歩いていく人の群れを見るともなしに見ながら、男はしばしぼうっとする。こうやって一日中、何もしないで過ごすことをふと考えてみる。それが叶わぬ願いだということも、彼は重々承知していた。
 朝刊を手に男は、今日何度目になるかわからないほどついた溜息を吐く。
 ――失敗だったな……
 新聞の一面を飾っていたのは、殺人事件の記事だった。
 男は今回も、いつものように自殺に見えるように巧妙な罠を仕掛けた。殺し屋の彼にとって、これほど早く警察が動き出したことは大失態だった。不味そうにタバコをふかしては消し、同時に別のタバコに火をつける。新聞がバサバサと煩く音を立てていることすら微塵も感じなかった彼が、側にいるウェイトレスに気付くはずもなかった。

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