[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 またひとつ、赤黒い小さな池ができた。
 口元に手を宛てがう。苦しい……。掌に付着した赤い染みは、俺の想像を裏切ってはくれなかった。
 この色。この臭い。それは、既に骸となってそこかしこに転がった彼らの沈んだ海と、全く同じ液体だった。
 ぼやける視界の隅に、パステルカラーのパンプスが映る。紛れもない凶器。だが、そこからの追撃を恐れてみたところで、どうすることもできなかった。俺の身体は、ただ咳き込むことで精一杯だったのだから。
 だが――
 パンプスは一向に動かない。ただ、その場で震えている。やがて、俺の作った池の横に、ぽたり、ぽたりと、無色の染みができていく。
 涙だった。
 それはまるで、のどかな春の表情を少しだけ変える柔らかな雨のように、しとしとと、静かに地面を濡らしていった。
 ひとしきり喉を鳴らし、呼吸を取り戻してから、俺はその涙を指でなぞる。理由なんてわからない。ただ、ひどく温かかった。
「何で効かないのか――、なんてさ……」
 激しく脈を打っている。恐怖で足ががたつき、立ち上がることすらままならない。だが、不思議なことに、俺の喉が発した声は、ひどく落ち着いたものだった。
「痛くないわけ、ないよな。そんなにボロボロになって」
「……はい」
「だったら――!」
 俺は、一度語調を強め、
「どうして、避けないんだ?」
 再び、穏やかな口調で彼女に問いかけた。
 ストックホルム症候群。――違う。純粋に、その理由が知りたかった。言葉を発した瞬間、腹の中をかき回されるような激痛に襲われ、俺はまた咳き込む。スパッタリングのように、血液がコンクリートに絵を描く。
「……私が、……私が悪いから。……それだけです」
 憂いを含む、とても静かな声だった。どこか諦めを匂わせるような響き。
 その直後、
「ぐっはああっ!!」
 パンプスが跳ね上がり、身体が飛ばされた。宙にある時間が、とても長く感じられた。地面に叩きつけられる。顔中が痛い。患部すらわからないまま、顔面を押さえて蹲る。
 既に慣れてしまった鉄錆の臭いに包まれながら。

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