[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 瞳の中に虚が見えた。
 どこか儚く、寂しさを纏ったような視線……、にもかかわらず、それは獲物を捕えて放さない鋭利な光を宿し、まっすぐに俺へと注がれていた。
 か弱そうに佇む女を前に、俺は足の震えを隠せなかった。
 傷と痣にまみれ、血を帯び、それでもなお、彼女の美麗な顔立ちは際立ちこそすれ、衰えることはなかった。きめの細かい柔肌に、薄桃色のグロスが映えている。力無い表情からは繊細さが零れ、彼女に暗い影を落としていた。
 消え入りそうなほど、薄く、しなやかな印象。それなのに、そこはかとなく漂う神秘的な雰囲気が、強烈な存在感を醸し出している。
「ごめんなさい……」
 小さく呟いた彼女は、俺に一体、どんな返事を期待しているのか。
 春。それは、あくまで暦の上での話だった。
 立春を過ぎたと言えど、幾度も吹きつける強い風は未だ、肌に痛い。夜も更けたこの時間帯にあっては、まるで冬を待っているかのようだ。
 当然、暑くなどない。しかし、盛んに汗が噴き出してくる。身体の震えだけが、初春に似つかわしい反応なのかもしれない。だが、それは決して寒さのせいではなかった。
「ごめん……なさい……」
 彼女の声色が、嗚咽を含む。
 内にカールしたセミロングの髪が、さらりと風に靡く。さっきまで彼女が羽織っていた白いダッフルコートは、既に赤く染まって地に落ちていた。
 彼女が一歩、また一歩と迫ってくる。それと同時に、彼女の足元からは、まるで雨上がりのアスファルトから聞こえてくる水たまりのような音が鳴る。それが、こんなにも赤黒く、鉄錆のような臭気を放つものでなければ、どんなによかったことか。
 足音が止まった時、あらためて、暗がりの中に彼女の姿がはっきりと浮かび上がった。
 フリルの付いたピンクベージュのブラウスの下部を、黒いスカートが隠している。ハイウエストに着こなした腰部はリボンベルトで留められており、裾は膝上で止まっていた。内から伸びる細く、すらりと長い脚が、美しいラインを描いている。
 その存在を前に、俺は、
「意味わかんねえよ……」
 無意識にそう口走る。そしてすぐに、
「頭、おかしいんじゃねえの?」
 虚勢を張り、口元に薄ら笑いを浮かべてみせる。
 仕方がなかった。そうでもしなければ、震えるこの頼りない足は、一瞬のうちに力を失ってしまうのだろうから。

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