[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 音の空間だった。
 白を基調とした内装だが、清潔感はない。充満している煙草の臭いや、壁のそこここに付着する黒ずみが、多数施された色彩豊かな照明効果を濁している。置かれたいくつものゲーム機は、無機質で味気ない。そのひとつひとつが、各々に与えられた音を発していた。
 あるものは一定のビートを奏で、あるものは打撃音を、あるものは金属音を、あるものはメロディを、あるものは声を――。混在する音は一切の統一感をもたない。それを助長するように、ゲームを前にした物言わぬ人間たちもまた、それぞれが、カチカチ――、ドンドン――、と、そこに乱雑な音を加えていた。
「KO!」
 目前のゲーム機が声を上げた時、広志は薄く微笑んだ。太い腕をぐるりと回す。次の対戦相手の名が呼ばれるまで、急いた指が、カチカチとボタンを叩く。
 その時、首筋に冷たいものが触れた。
 冷たく、しなやかな感覚。それが女の指先だとわかったのは、広志がとっさに振り返った後のことだった。
「あ……、あ」
 喉を鳴らす。身体が硬直する。急激に鼓動が高まり、額から汗が滲んでくる。
 極上の笑顔を浮かべた美少女が、そこにいた。
 高校生らしからぬ、大人びた顔立ち。柔らかそうな薄紅色の唇。すっと通った鼻筋。彼女は艶やかな長い髪をかきあげながら、切れ長の瞳を覗かせていた。
「うぁ……か、かか、花音……」
 広志の声は、動揺を顕著に表していた。彼女の笑顔が笑顔でないことを知っているのだ。朗らかな表情の裏にある感情が読み取れず、彼は呼吸を荒げる。
「久しぶり」
 穏やかな口調で声をかけられても、広志は硬直したままだった。真横にいる美女と、瞳を合わせることができない。心当たりがあるからだ。そんな彼の顔を覗き込みながら、
「最近、返信ないよね……?」
 花音は続ける。広志の喉からは、既に声すら出てこない。予想は図星だった。彼の首筋を伝う指が、すうっと耳へと移動する。くいと耳たぶを掴み、花音は、
「ちょっと、いい?」
 と、言葉を紡いだ。その声には、有無を言わせぬ力強さがあった。問いかけではなく、命令――。広志には、それがはっきりとわかった。
「あ……、あぁ」
 絞り出した彼の声がひっくり返る。瞳が泳ぐ。
 花音は、震える足で立ち上がった広志の腕を抱え、身体を預けるように寄りかかる。傍目から見れば、まず恋人同士と信じて疑わないだろう。二人の足は、そのまま店外へと向かった。
 背後からは、先ほどと同じ「KO!」という、空しくも皮肉めいた機械音が聞こえてきていた。

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