[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 一度も口に入れたことはなかった。
「ママ、今年もダメ?」
「うん……、ごめんね」
 もともと、年中行事のもつ、暗黙の強制力みたいなものが嫌いなのだ。家庭のことすら満足に手が回らないほど忙しいこの時期に、どうしてこんな集会に参加しなければならないのか。
 毎年、年末になるとそう思う。ましてや、あんな食べ物のために。
「何で謝るの?」
「あ、ううん。なんでもないの。今年もママの分の紅餅、食べていいからね」
「やったあ!」
 素直に喜んでくれる娘がいじらしい。が、同時に、何となく娘を騙しているようで申し訳ない気持ちにもなる。単純に、嫌い。気持ち悪い。それが私の本音なのだから。それでも、
「あっち、お皿二枚足りないよ」
「きな粉、あと半分くらい出してくれる?」
 私と同じくらいの年代の女性が、準備に勤しんでいる姿や、
「柔らかくなってきた!」
 女の子たちの輪に入って無邪気に、楽しげにはしゃいでいる我が子を見ていると、せめて母親としてできることはしてあげたい――そんな気になる。だからこそ、今年もこうして参加しているわけだが。
「もっと強く!」
 女の子たちが、代わる代わる杵を振り下ろしている。ひとり十回ずつ。皆が、自分の順番が来るのを今か今かと待っている。どの子の表情も、明るく輝いて見える。この段階でしっかりと原型を崩しておくことが、紅餅を美味しくするためのコツなのだそうだ。そのため、順番待ちをしている子も、
「それじゃあ、全然潰れないよ!」
「全部が赤くなるまでだよ!」
 必死になって声を上げる。それに煽られ、杵を持った子の勢いが増す。
 バキバキという鈍い音。悲鳴のような耳障りな音。赤、黄、茶、白、黒――石臼に溜まっていく、様々な色が混じり合った液体。それらの全てが彼女たちの興奮を高め、
「まだ音がしてるよ!」
「頑張って!」
 会場が熱気に包まれる。
 こういう団結心のようなものを狙っての行事だと思えば、決して悪い慣習ではないと思う。心なしか、今年はこれまで以上に活気に満ちているような気がする。
 ほほえましい光景に、自然と笑みが零れた。
 我が子のほうに目を遣れば、石臼の上を跳びはねている。最終段階担当のグループだ。杵でついた後、さらに素足で念入りに踏むことで、より滑らかにする効果があるのだとか。
 娘が汗だくになって臼から降りる。会場には座布団が敷かれ、既に配膳は終わっていた。
 満足気な面持ちで娘が私の横に座った時、ちょうど年越しのカウントダウンが始まった。

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