[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 女の背後にいる人間は皆、地面に突っ伏していた。
 先ほど倒れた男もまた、今や彼女の後ろだ。あらためて彼に視線を向けた時、僕の斜め前方で、また――
「うぐぅっ!」
 声が上がった。その方向を目で追うと、今度は老人が腹を抱えて丸まっている。半開きの口の端から、黄水が流れ出てくる。と――、その直後には、
「ぐっ!……んぅ……」
 逆の方向から悶声が聞こえる。今度は子どもが……と思っている隙に、また別の声。
 ――速い。
 今では、彼らの声が、女の足音代わりだった。彼女の姿が捉えられない。
 それでも、依然として僕の周囲の人間が、歩みを止めることはなかった。騒ぐ者もなければ、声をかける者もない。走る者すらいない。僕の後から路地へと入ってきた者もまた同じ。無言のまま、淡々と歩を進めている。
 異様な空気を感じずにはいられなかった。どうして、誰も、何も言わないんだ? どうして、誰も、取り乱さないんだ? どうして……? どうして……? これじゃ、まるで、おかしいのは……僕のほう……
 ――歩かなきゃ……
 人混みに紛れたら、黙って周りに歩調を合わせる。出ない杭になる。それが、僕にとっての普通なのだ。例えその先に、恐怖を与える存在がいると知っていようとも……
 だが、そんな思いとは裏腹に、僕の足は一歩も前へ出てくれなかった。膝が震えている。爪先が重い。まるで、太腿から下が凍ってしまったかのように、硬い。
 怖い。
 幾度となく耳に入ってくる声が、徐々に近づいてくる女の足取りを伝えていた。
 右へ――、左へ――、中央へ――、また右へ――。そして、目前の男が崩れ――
 ……ふわりと香る甘い香り。それが、僕に女の最接近を伝えた最初のものだった。反射的に身構える。そんな僕の目下に、彼女はその小さな姿を現した。
 明らかに、先ほどまでのハイテンポを緩めている。思わず唾を嚥下する。彼女は、僕の恐怖心を察しているかのように思えた。弄ぶように、舐め回すように、僕の顔を覗き込む。
 美麗と愛嬌の共存とでも言えばいいのだろうか。年の頃がわからない。
 その整った顔立ちは大人の香りを色めかせ、同時に、ツインテールの施された黒髪や自然な肌艶、表情のそこここからは、どこか幼さが滲み出している。
 彼女は、首元に刺繍の入った長袖の白いハイネックの上に、黒いワンピースを重ね着していた。裾はラメパイピングが飾り、脚はチェックをアクセントとした黒いハイソックスが包んでいる。ピンクのスニーカーには、赤いラインが引かれていた。
 そして――
 一度は見ないふりをした彼女の拳もまた、今度は、はっきりと見えた。

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