[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 夏美はただ呆然としていた。
 虚ろな瞳で宙を見上げる彼女の手首の周りで、手錠が冷たい光を放っている。
 その間にも、警察官たちは、室内を慌しく調べていた。
 ひとりがパソコンのマウスを動かすと、起動音が部屋に響いた。休止モードが解除され、モニターに閲覧中のページが表示される。浮かび上がったのは「mixi」のロゴと、
『一体、何が目的?・・このままじゃホントに・・』
 悲痛な言葉の数々――彼の叫びが、そこには記録されていた。
「被害者のミクシィ日記のようですね」
「……コンピューターで書く日記か?」
「まあ、大体そんなところです」
「なるほどな……」
 二人の刑事が言葉を交わす。
 老刑事が、顎で佐久間に指示を出す。佐久間は、パソコンの前に移動した若い刑事の傍に、夏美を連れていった。若い刑事が、
「これ、モニター見えますか?」
 ゆっくりと夏美の耳傍で語りかける。彼女の瞳に精気は見られない。
 構わず、若い刑事は話し続けた。
「あなた、これに見覚え、あるんじゃないですか?」
 そう言って、トントンと指でモニターを叩く。
「交番で、どこに行っても彼に会う、と相談したんですよね?」
「…………」
「出向いていたのは、あなたの方では?」
「――知らない!」
 夏美は突然叫んだ。今までの虚ろな佇まいが嘘のように、その顔は狂気走っていた。
 それでも若い刑事は驚かず、じっと彼女を見つめ、言葉を重ねた。
「この人が書いていた記事の通りの場所へ、あなたが行ってた」
「違います!」
「でも、ずっと見てたんですよね? 彼の記事は――」
「…………」
「もしかしたら、マイミクだったんじゃないですか?」
「――嘘……、そんなの、……嘘」
「ひょっとしてこれかな? あなたが残したコメントは」
「違う……、違う違う違う!」
 夏美は手錠のかかった両手で頭を抱えた。そして、隣に立つ佐久間の胸に飛び込む。
「わからない……、私って、何? わからない! 助けて――!」
 佐久間は夏美を、強く抱えることしかできなかった。
 夏美だけが、彼女の真実を叫び続けた。しかし、その言葉を信じる者は、もうここにはいなかった。

 応援のパトカーが、深夜の住宅街にサイレンの音を響かせた。救急車も到着したようで、救急隊員が慌しく、タンカで被害者の男を運んでいった。
 大勢の警察官に囲まれても、夏美は抵抗しなかった。ただ弱々しく佐久間に縋りついている。
 夏美は彼の胸の中で、そっと何事かを呟いた。周りには聞こえない。誰も気付かない。佐久間以外は。
 次の瞬間、夏美の身体からは力が失われた。タンカが、もう一台必要になった。

 去っていく救急車を見送りながら、佐久間は無意識に呟いていた。
「信じてたのに……、か」
 言葉にすると、胸に苦みが広がっていく。
 先ほどの彼女の言葉が、どうしても離れていかない。彼女の心の叫びそのものだ。
 彼女は本当に、気付いていなかったんだろうか。どこかで、自分の行動を止めてほしかったのではなかろうか。こんなことになる前に。
 彼女の力になると、約束したのに。自分の言葉を、あれほど彼女は信じてくれていたのに。
 気付かなかった、気付けなかった自分の未熟さが歯痒くて、佐久間は拳をぎゅっと握り締めた。
 額に汗が伝う。熱帯夜は、まだしばらく続きそうだった。



END

【 piece : ミクシィ日記 】

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コメント
この記事へのコメント
この女性マジで恐いですね被害者だと思ったら 実は 加害者 このストーリーもなかなか良かったです
2011/03/28(月) 21:07 | URL | きんた #-[ 編集]
真実は人の数だけ。
ありがとうございます。
真実は常に人間の価値観と共にある――、と、私は考えています。
「事実はひとつ、真実は人の数だけ」とは、誰の言葉だったでしょうか。同感ですね。
この悲惨な物語。彼女が語ったことはきっと、彼女にとっての真実なのです。
>この女性マジで恐いですね
素敵な褒め言葉をありがとうございます。
2011/03/29(火) 18:06 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
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