[18禁] 逆リョナ小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
 部屋に踏み込んだ警察官たちは、思わず目を背けた。
 あまりにも凄惨な光景だった。
 常人はもちろん、いくつもの現場を潜り抜けてきたであろう彼らでさえも、直視するには耐え難いものがあった。
 赤いペンキをぶちまけたような屋内、人物だとすら判別し難い塊、全身を返り血で染めた笑顔の女――
 制服を着た警官を手で押し退けるように、二人の刑事が無言のまま部屋の奥へと入っていく。ひとりは貫禄のある白髪混じりの男、もうひとりは爽やかな雰囲気の若そうな男だった。
 二人の姿は、夏美の目に入っていなかった。彼女はそこにいるただひとりの男を見つめ、
「私、やりました。ついに、やりました!」
 嬉々とした表情で告げた。視線の先には、制服警官――佐久間が立っていた。
 彼の言葉を期待してか、夏美はその瞳を佐久間から逸らそうとしない。しかし、佐久間からの返答はなかった。
 二人の刑事が、夏美の前に憮然とした表情で立つ。老刑事は、男の様子を見るなり、すぐに救急車を手配する指示を出した。老刑事が応急処置を施す中、若い刑事が、夏美の腕に静かに手錠をかける。
 夏美の瞳の色が、急激に艶を失う。
 ――どうして?
 その気持ちは声にならない。
「現行犯です。わかりますよね?」
 重々しく響く若い刑事の声。その言葉の意味が、夏美には捉えられなかった。
「……あの、私は……被害者――」
「いいえ」
 老刑事の強い語調が、夏美の言葉を遮断した。若い刑事が「後は、署で……」と、彼女の背中を押す。
「どうして? 悪いのはこいつでしょ?」
 夏美は激しく抵抗する。しかし老刑事は答えない。無論、若い刑事も無言のままだった。
「ねえ! お巡りさん!」
 呼びかけられた佐久間は、ただ黙って目を伏せた。
 夏美の手を強く引こうとする若い刑事を制し、老刑事は穏やかな声で夏美に話しかけた。
「山川さん、ですね」
「……はい」
「今日は、なぜここに来ました?」
「……もう、これ以上我慢できなかったから」
「ほう。何が我慢できなくなったんです?」
「それは……、この人がいつも付き纏ってくるから!」
「危険を感じていた、と?」
「そうです! 警察にも、護身術教室にも、……どこにでもいるんです!」
「……いつも、そうやって付き纏われていた?」
「はい! あのお巡りさんにも話しました! なのに、どうして……どうして私が?」
「まあまあ。落ち着いてください」
「…………」
「……実はですね。同じ相談を受けていたんです。この男性からも」
「――えっ?」
「警察にも、護身術教室にも、どこにでも、……あなたがいる、と」
「――何、言ってるの……?」
「夏美さん。本当にわかってないんですか?」
「あの……、どういう――?」
「……あなた、なぜ彼の部屋を知っているんです?」

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