[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 男の顔は右へ左へと振られた。
 瞬く間に、男の頬が赤く腫れ上がっていく。庇おうとする両手も夏美の膝に遮られ、
「があっ!」
「うぐっ!」
「ぐはあっ!」
 男はただ、言葉にならない断続的な声を重ねた。
 夏美の拳も赤みを帯びてくる。男の鮮血が、それをさらに鮮やかな赤で覆う。
 女が無言で殴る――、男の顔がぶれる、声を上げる――、女が反対から殴る。
 幾度も続く、単調な動作。機械的な繰り返し。男の顔は徐々に、確実に変形していった。
 やがて、その動きにわずかな乱れが生じる。
 朦朧とする意識の奥で、男は、夏美の息が上がっているのを目にした。
「ひ……ひいぃっ!」
 その隙に乗じ、男は力いっぱいもがく。何とか夏美の身体を押し退け、頭部を抱えて部屋の奥へと向かう。擦り切れるような呼吸音が、喉から漏れていた。
 覚束ない足取り、逃げ腰、弱々しい声――
 夏美は玄関口に腰を落としたまま、じっと男の動きを観察していた。
 貧弱な体つきの男だ。肌が白く、動きは鈍い。身長も、一般成人男性としては平均的で、特に目立った力強さも感じられない。そんな目の前の男を大きく、とてつもなく恐ろしい存在に見せていたのは、他ならぬ……、自身の恐怖心――
 そんな風に考えた時、夏美はその口元に、自虐的な笑みを形作らずにはいられなかった。
 彼女の目は決して笑っていない。怒りの表れなのか、自身の情けなさを恥じているのか、自嘲行為の裏返しなのか、決意の証なのか――、それは本人にしか知り得ぬことだった。
 別段、慌てる様子もなく、夏美は立ち上がった。怯える男の様子を見ながら、静かに浮かべていた笑みを、その顔から消す。そして、
「私が味わってきた恐怖はね……」
 一歩前へと踏み出し、
「……こんなもんじゃないよ」
 ゆっくりと、男に向かって歩を進めた。
 男はあっという間に、壁際に追い詰められた。表情のない夏美を前に、身体をガタガタと大きく震わせる。
「寒いの?」
「……ううっ」
「ねえ、寒いの?」
「あ、……い、いえ!」
「……冗談だよ。笑うとこでしょ?」
「え?……あ、は、はいっ!……えっと――」
「何、真面目に答えてるの?」
「す、すみません! すみません!」
 男は頭を抱え、夏美の顔色を窺う。彼女は、大きく息を吐き出し、
「怯えてるの? いつもみたいにほら、ニヤニヤ笑えば?」
 その顔に、にっこりと笑みを浮かべる。言われるがまま、男が引き攣った苦笑いを浮かべたその時――
「んっ……、ぐうあああっ!!」
 パンという軽快な音とともに、男の悲鳴が深夜の部屋に響いた。

Back | Novel index | Next
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。