[18禁] 逆リョナ小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
 男は頭を抱えてよろめいた。
 今にも気を失いそうな激痛に伴い、喉から絶叫が放たれる。同時に、頭部から液体が零れ落ちてくる。鉄錆のような臭気と、手を伝う生温かい感触。それが血液であることは明らかだった。
 意識が朦朧とする中で、男はドアの向こうへと目を遣った。
 閉まりそうになるドアを、白いミュールが阻んでいる。
 足を挟み込んだ女が、すいとその姿を露わにする。彼女は表情ひとつ変えずに、
「早く出なさいよ」
 と、涼やかな声で囁いた。
 見知った顔だった。男にとっては、これ以上ないほどに。
 清純さと色気を併せもつ美人。冷たい瞳と、薄くて紅い唇が印象的だった。肌の白さと対照を為す艶やかな黒髪。その髪先は胸へと下り、彼女の豊満なバストを意識させる。小花模様の付いたアイボリーのワンピースから、長い脚が伸びている。
 夏美だった。
 外から覗き込む彼女の瞳からは感情が全く見られず、それが、却って男の恐怖心を増幅させた。
「あぁ、あ……」
「私の方から来てあげたの。嬉しい?」
「……っ!」
「あなたがずっと追ってた、山川夏美よ」
 男は怯え、反射的に自分の部屋の奥へ向かって駆け出した。
 ――バカだった! 何で出ちゃったんだ! 前みたいに引きこもってれば、こんなことには……!
 が、玄関の段差に躓き、仰向けに転倒する。その時、隠し持っていた男の包丁が、カラリと床に転がった。
 刹那の沈黙が、二人を包み込む。
 それを破ったのは――
「あっはははは!」
 夏美の笑い声だった。
「やっぱり……、私を殺す気だったんだね」
 重ねられた彼女の言葉に、男は力ない声で抵抗する。
「知らない。あんたなんか、知らない……。あ、あんたこそ、今、俺を――」
「……正当防衛だよねぇ?」
「違う……。これは――」
「包丁持って、お出迎え?」
「くっ……、大体、お前が――、……っ! がはっ!」
 男の言葉を遮ったのは、夏美のヒップドロップだった。弾みで、彼女の手からスパナが転がり落ちる。しかし、それを気にする様子は、彼女には全くない。臀部を腹に喰い込ませたまま、
「見たかったんでしょ? ほら……」
 と、男に顔を近づける。甘い吐息が鼻腔をくすぐり、男の視線がわずかに泳ぐ。そんな彼の頬に、
「ぐあっ!」
 夏美の拳が、容赦なく叩きつけられた。

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