[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 夏美は落胆した。
 昨晩の警官の姿は見えない。代わりに、小太りの中年警官が椅子に座っている。事件の資料らしきものを手に、何やら考え事をしている様子だった。夏美が交番の前に立つと、彼はおもむろに資料を机上に置き、
「どうかされましたか?」
 と、夏美に問うた。酒焼けしたような声だ。立ち上がることなく、それでも穏やかな表情を形作り、返答を待っている風だった。しかし夏美には、昨日話したことをもう一度話す気力はなかった。
「あの……、昨日の方は?」
「昨日の? あぁ、昨日も来られたんですね。何時頃ですか?」
 中年警官は夏美に背を向け、報告書らしき書類を手に取って、パラパラと捲り始める。
「えっと……、夜中です。三時……くらいだと思うんですけど」
「深夜……三時……? ずいぶんと遅く……、あ、はいはい。わかりました。山川夏美さんですね?」
「はい。昨日の方にまた――」
「すみませんね。彼は今日は巡回でして。でも、話は伺ってますので、どうぞ」
 そう言って、中年警官が中へと手を差し伸べる。しかし、夏美は彼がそこにいなかったことに、言い難い憤りを感じていた。疲れている中で気を張っていたためか、一気に脱力感に襲われる。
「……それなら、結構です」
 ポツリと零し、昨晩借りた服と傘を警官に返す。頭を下げ、その場を後にしようとする。――その時、背後に視線を感じ、夏美は振り返った。外灯のわずかな光が、視線の主を照らす。
 ――あの男だ。私を狙う男! 骸骨のような体つき……。顔に吹出物がたくさん……
「お、お巡りさん、あ、あの男――!」
 夏美が叫ぶ。中年警官が入口から顔を覗かせる。しかしその時には、既に男の姿は消えていた。
「んー。あの男……っていうと……」
 中年警官の動きは鈍い。彼の言葉を無視し、夏美は交番から走り去った。


 帰宅してからも、胸の鼓動が止まらなかった。
『どうして、あそこに?』
『交番に行くことを知ってた?何で?』
『・・・警告?』
 キーを叩く手に汗が滲む。
『昨日の警官もいなかった。見捨てられたのかもしれない・・・』
 ミクシィ日記はそこで途切れた。
 コメント欄には、昨日の日記も併せて三十近い書き込みがあったが、目を通す気には到底なれなかった。
 そのままベッドに入っても、すぐには寝付けなかった。


 ここ数日、不眠が続いている。
 会社での失敗も目立つようになってきた。人間関係もうまくいっていない。
 いつものように帰路を辿りながら、夏美はふっと気を緩める。その時、嫌な感覚が彼女を包み込んだ。
 静寂の中に漂う、かすかだが濁った荒い息遣い。闇に浮かび上がる、細長い輪郭。
 ――まただ。また……、あの男……。あの男! 間違いない!
 夏美は平静を保とうとするが、どうしても全身が震えてしまう。声が出ない。思わず身を縮めた時、
「あ、こんばんは」
 ふいに後ろから声をかけられる。
 自転車の放つ光が、夏美の目に優しかった。そこに乗っていたのが、あの日の警官だったからだ。

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コメント
この記事へのコメント
胸が高鳴ります
どんどんと文章に引き込まれていきます。これからの展開を予想するとドキドキしてしまいます。
2009/08/23(日) 00:22 | URL | kazowk #-[ 編集]
ありがとうございます。
kazowkさん、こんばんは。物語の世界に入っていただけて嬉しいです。
ぜひ、グイグイと惹き込まれてやってください(笑)
当サイトへのイラスト提供をはじめ、ご来訪に、コメントにと、感謝の念は尽きません。
いつもお心遣い、ご協力、本当にありがとうございます。
本作にも、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
2009/08/24(月) 22:18 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
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