[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 佐久間は、内心ホッとしていた。
 しかし同時に、なかなか話が核心に至らないことに、もどかしさをも感じていた。
 時計の針は深夜の四時半を回っている。蒸し暑さに、余計に気持ちが急いた。
 今、このままこの女性と話を続けても、おそらくこれ以上の進展はないだろう。彼女の突発的な行動や証言の曖昧さから見ても、勘違いの可能性は依然として否めない。佐久間はそう感じていた。ペンを手帳に収め、胸ポケットにしまう。そして、なるべく穏やかな口調で、
「わかりました。もう少し様子を見てください。何かあったら、いつでも来てください」
 と言って立ち上がり、ドアを開けて、入口の方へと手を差し伸べる。夏美はため息を吐き、
「はい。……ありがとうございました」
 と小さな声で答え、腰を上げた。彼女が浮かない表情を崩すことはなかった。
 佐久間は夏美に、傘と、まだ濡れたままの彼女の服を手渡しながら、
「備品の返却は、いつでも結構です」
 と、声をかけた。
 家まで送るつもりで佐久間がもう一つの傘を取り出すが、夏美がそれを遮る。
「ここまでで大丈夫です。お世話になりました」
 そう言って彼女は頭を下げる。
 佐久間が「え? でも、命――」と言いかけた時には、既に夏美は早足に歩き始めていた。何だか釈然としない気持ちではあったが、今できることはここまでなのだと、彼は自分に言い聞かせた。
 雨の中に消えていく夏美の後ろ姿を、佐久間は黙って最後まで見守っていた。


『・・・いい加減にしてほしい!』
 カタカタとキーボードを叩く音だけが、部屋に響いていた。
『警察に行って相談してきました。うまく話せなかったけど・・』
『ホントにもう、関わらないでほしい!!』
 ミクシィ日記に、痛々しい言葉が連ねられていく。
『目的が全くわからない。それが怖い・・・』
『こうして毎日、気を張っているのにも疲れてきました・・・・』
『やっぱり明日、もう一度、警察に相談に行こうと思います。』
 そこで、パソコンはパタンと閉じられた。


 会社帰りの夜道。夏美のヒールが、アスファルトを力なく鳴らしていた。
 結局、昨晩は眠れなかった。
 電車を降り、人ごみに紛れて歩みを進める。夏美の家は、駅から歩いて十五分ほどの閑静な住宅街に位置していた。しかし彼女の足は、自宅よりさらに十分ほど離れた場所へと向かっている。
 ひと気は、次第に無くなっていった。
 やがて、狭い通りの中にポツンと光を灯す建物が見え、夏美は安堵の息を漏らす。
 昨日の交番だった。
 しかし、彼女が期待していた姿は、そこにはなかった。

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