[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 風はとうに止んでいた。
 数分前まで断続的に主張を続けていたのが嘘であったかのように、潮風はもう、彼女たちの頬を撫でることもなければ、髪を揺らすこともない。もちろん、彼女たちの耳に何かを語りかけてくることもない。
 代わりに重く響いていたのは、紗希の放つ静かな声だった。
 埠頭に漂う穏やかな波の音が、バックミュージックのように流れていた。
 美里は、目の前で話す紗希の肩越しに、花音だけを見ていた。
 艶やかな長い髪。人形のように美しい睫毛。白磁のような肌。細い指の間には、彼女には不似合いな煙草が挟まれていた。そこから立ち昇る一筋の煙を、美里はただただ呆然と見つめていた。
 紗希の口から告げられる真実が、美里の耳の中をすり抜けていく。
 裏切られた――それを受け止めるには、美里の心はまだ幼すぎた。しかし、花音の薄ら笑いと、足元に転がる血塗れの大男の存在が、紗希の言葉を真実だと告げていた。
 心許ない外灯と朧月が、彼女たちを照らしていた。

「ありがとな」
 紗希が、美里に語りかける。
 肩がふっと軽くなった。同時に、刺された痛みが舞い戻ってくる。身体の力が抜け、ペタンと地面に腰を落とす。
 美里の全身に凭れかかった彩香の瞳は、既に乾いていた。
 表情がない。
 だが、今の美里には、彩香の気持ちを窺い知ることも、その余裕もなかった。
 一通り真相を話し終えた紗希は、美里の肩から彩香の身体を引き取る。彩香を座らせ、紗希は彼女の頭を優しく撫でた。
 彩香は、その時になってようやく我を取り戻したようだった。紗希の存在を認めると、まるで子どものように紗希の身体に飛びつき、しがみつき、声を上げて泣いた。
 美里はふっと地面に瞳を落とし、身体を震わせる。その背中に、紗希の手がそっと触れた。涙が一粒零れる。
 その時だった。
「――ねぇ。行っていい?」
 美里は耳を疑った。
 唐突に飛び込んできた、信じられない言葉。淡白な、まるで悪びれない口調。それが花音のものであると理解すればするほど、美里は落胆し、惨めな気持ちになった。
「もう飽きちゃった」
 続けて、花音はそう言い放ち、指から落とした煙草をミュールの裏でもみ消す。
 美里は、その姿を見つめるしかなかった。言いたいことはたくさんあるのに、うまく思考をまとめられない。自分の不甲斐なさに、両拳をぐっと握りしめる。
 花音が立ち去ろうとしても、まだ美里は動けないでいた。
「待ちなよ」
 鋭い声。彼女を呼び止めたのは、紗希だった。

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