[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 勇作の咳き込みが聞こえ、その顔には赤みが戻っていた。
 美里は彩香の身体を両腕で優しく包み込みながら、自分の左肩にハンカチを当てていた。黄色いハンカチに、赤い染みが広がっている。しかしそれが功を奏し、美里の出血は次第に治まりつつあった。
 彩香は美里の腕の中で、未だ嗚咽を漏らしている。同時に、聞き取れないほどの小さな声で、
「……キ。……サキ。……キ」
 うわ言のように、紗希の名を口にしている。美里は、何度も頷きながら、
「わかってます。わかってますよ」
 と囁き、左手で彩香の背中を擦った。彩香はやがて、虚ろな瞳で空を見上げた。
 ――今の彩香さんに必要なのは……
 彼女に対する猜疑心や疑念が払拭されたと言えば嘘になる。ただ、今は――
「……もしもし」
 自分にできる限りのことはしたいと思った。
 美里は携帯電話を強く握り、
「遅くにすみません。紗希さん……。彩香さんが――」
「うん、わかった」
 受話口から端的な言葉が聞こえてきた。淡白な口調。しかし、確信めいた響きのある声色だった。
「相手は無事? 彩香は落ち着いてる?」
「はい。何とか」
「そっか。それじゃ、今から来られるね?」
 唐突にそう問われ、美里は動揺する。
「っ……? どこにですか?」
「さっきまで、美里がいたとこ。彩香も一緒に」
「えっ!?」
「花音もそこにいるから」
「花音さんが!? あの、彼女は無事なんですか?」
 美里の問いかけへの返答はなかった。代わりに受話口から聞こえてきたのは、
「とにかく、待ってるから」
 という、短い言葉だけ。そして、電話は切られた。
 状況を把握できず、美里は混乱する。しかし、紗希の言葉には、不思議と不安を感じさせない力があった。今は、彼女を信じるしかない。美里の戸惑いは決心へと変わっていた。
 美里は濡れた頬を拭い、そっと彩香から身体を離した。そして、
「行きましょ。紗希さんのとこ」
 彩香のサンダルを拾い上げ、彼女の足元にそっと置く。彼女の手を、両手で包み込む。
 少し冷えた夜風が、二人の頬を撫でていく。
 視線がぶつかる。彩香はコクリと頷いた。まるで幼子のように。



END

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