[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 夜風が春の匂いを運んでくる。
 走る美里の足取りは軽かった。たまに吹きつける強風が、制服のスカートを幾度も持ち上げる。普段の彼女であれば、下着を隠すことで頭がいっぱいになっていたかもしれない。だが今は、これほどまでに強い風の存在が、むしろ有難い。背中を押してくれている。自分の進むべき道を示してくれている。そう感じられたからだ。全身を撫でていく風に、美里の顔は綻ぶ。
 ――話って、何かな?
 走りながら、美里は再度、携帯電話をちらりと見る。
 込み入った相談かもしれない。そう思うと、わずかに不安を覚えた。しかしそれ以上に、とにかく家を離れて遠くへ行きたい、という気持ちが、今の美里を突き動かしていた。花音とたわいない話が出来たら、この憂鬱な気分を吹き飛ばせるかもしれない。そんな期待を抱いていた。
 美里の大地を蹴る足が、次第に速さを増していった。


 埠頭のその光景は、美里の淡い希望をあっさりと打ち砕いた。
「やめて……。やめて、ください……」
 力なく懇願する花音の腕を、ひとりの男が掴んでいる。大柄だ。百九十センチ近くはあるかと思われる。二十代後半ほどだろうか。花音の瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。
 フェミニンなイメージを強調した、お洒落なコーディネートだ。
 黒いカットソー。白いティアードスカート。薄い黒ストッキング。身に着けたそれらが、男の引っ張る力によって、今にも破れそうになっている。クロスストラップの付いた漆黒のミュールの片方は、少し離れた場所に転がっていた。
 花音は、半ば諦めたような表情を湛えながら、それでも懸命に抵抗している。彼女の様子を見ているうちに、美里の心は悲しみに満ちた。そしてそれは、みるみるうちに怒りの感情へと変わっていった。
「彼女を放して……」
 俯いた美里の喉から発せられたのは、叫びでも怒声でもない。鋭く低い、威圧感のある声だった。
 二人がその声に気付く。
 美里は瞬時に二人の方へと駆け寄り、手刀を大男の手の甲に叩きつける。大男がわずかに怯む。美里はその隙を逃さず、素早く二人を引き離すと、花音を背に大男と対峙した。
 大男は、物怖じひとつすることなく、
「おぉっ。お友達? 勇ましいねぇ。んー、可愛らしいね」
 粘ついた声を出し、美里を見下ろす。
 身長差が三十センチ以上もある二人が向き合った姿は、まるで大人と子どものようだ。それでも美里は臆することなく、食い入るように大男を睨む。そして、
「花音さんを返してもらいます」
 と、言い放った。
 大男の拳が唸り、美里の頬を掠める。美里が花音の方をふり返ろうとした、まさにその時だった。
「あり得ない。それ、あり得ないから。ボクのコレ、もうビンビンだもんね」
 股間を指差し、大男が下品に笑う。
 美里は黙したまま、すっと半身を引いた。

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