[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 彼が着信音に気付いたのは、家に入った後だった。
 携帯電話に浮かぶ「渚」の文字。廉太郎の手が俄かに震える。ゴクリと喉を鳴らし、目を泳がせる。手が汗ばんでくる。彼が受信ボタンに手をかけるまでには、随分と時間がかかった。
「もしもし」
 上擦った声色が、彼の心境を物語っていた。昨晩叱責を受けたばかりの彼にとっては、それが自然な反応と言えるのかもしれない。再び唾を飲み込む彼の耳に、
「遅いよ」
 渚の声が届く。
 廉太郎は反射的に「すみません」と口にしたが、その表情にはわずかな安堵の色が見える。渚の声が、予想外に穏やかだったからかもしれない。彼女と会話が出来たこと――それ自体が、彼の心を和らげたのかもしれない。
「ちょっと気になることがあって。今、美里ちゃん、いる?」
 渚の言葉の意味がすぐに捉えきれなかったのか、廉太郎はすぐに言葉を発せなかった。まだ頭が混乱している様子だ。それでも、黙って返答を待つ渚の落ち着いた態度に安心したのか、彼の手の震えや汗は既に治まり始めていた。
「い、いえ。今、ちょうど友達から連絡が入ったみたいで……」
「……出かけたんだね」
「はい」
「誰からの連絡?」
「え……、と。それはちょっと、わからないです」
「そっか……」
 一瞬の沈黙。そしてすぐに、
「ん、わかった。ありがと、先生」
 平然とした渚の声が響く。
 廉太郎は、携帯電話を握る手にぐっと力を込めた。そして、
「あの。一体、何が起こってるんでしょうか?」
 意を決したように疑問をぶつける。その語調は強い。返答しない渚に対し、
「僕は未だに、渚ちゃんに叱られた理由すらわからないんです」
 声を絞り、縋るように言葉を連ねる。息を荒げ、返事を待つ廉太郎に、
「……昨日は、いきなり怒ってごめん」
 渚の小さな謝罪の言葉が届く。「いえ、そんなことは――」と恐縮した彼の言葉に、
「でも、今は時間がないんだ」
 渚の言葉が重ねられた。毅然とした口調だった。
「不安にさせてごめんね。でも、今は私を信じて」
「渚ちゃん……」
「明日も仕事なんでしょ? 応援してるから。頑張って、先生!」
 溌剌としたその言葉を最後に、電話が切られた。
 廉太郎は唇を噛み、虚ろな瞳で天井を見上げた。彼の拳が、ほんの少しだけ強く握られた。

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