[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 彩香は無邪気に笑っている。
「ほら、早く」
 と、紗希が半ば強引に、美里の腕を捕まえる。その力の強さに、美里の疑念が再び膨らんだ。先ほど心を掠めた違和感が、今度ははっきりと姿を見せる。
 ――彩香さんは気付いていない。でも、紗希さんは……
 美里は二人から目を逸らし、今度はしっかりと声を感じた場所を見据える。
 大きなビルの隙間。日陰の中に、誰かが座っている。スカート……、制服の……女の人。彼女の周りには、黒い染みが広がっている。あれは、血液――?
 背筋にゾクリと冷たいものが流れたように感じ、美里はふり返る。紗希の視線は、美里の背後にあった。血のにおいの漂う、その場所――
 しかし紗希は、路地からすっと視線を逸らした。ごく自然に。何事もなかったかのように。あたかもそれが、当たり前の動作であるかのように。その自然な動作が、美里の疑念を確信へと変える。
 ――やっぱり紗希さんは、気付いてる。
 美里は紗希の腕を振り払った。
「っ……美里!」
 紗希の声には、咎めるような響きがあった。美里は、表情を固くし、
「……お二人で行ってください。私には、やることがありますので」
 静かに口を開く。そして、ふり返ることなく、路地裏へと足を向けた。


 桜の花弁が、そこかしこに落ちていた。
 先ほどまで瞳を輝かせて追っていたそれらも、今は美里の目に留まることすらない。そこにあるモノたちのもつ印象はあまりにも強く、一瞬にして美里の視線を釘付けにしてしまっていたのだ。
 見るに堪えない凄惨な光景が、美里から春の心地良さを一気に吹き飛ばす。
 薄暗い路地裏で地面に座り、酷く青ざめた表情で震えているひとりの女の子。羽織ったコートやその中から覗くセーラー服の諸所にできた、赤黒い斑点。地面に転がっている、刃を赤く染めた二本のナイフ。その側にぐったりと横たわる三人の男。顔が変形している者、手足があらぬ方向を向いている者、吐瀉物に塗れている者。それぞれが、血の海に沈んでいた。
 美里は絶句した。状況が把握できない。思考が働かない。
 そんな中、女の子はようやく美里の存在に気付いたようだった。呼吸を荒げ、肩を震わせ、ゆっくりと美里の方へと視線を向ける。彼女の目から一滴の涙が零れ落ちた。美里は努めて柔らかい表情を形作り、彼女の方へと歩み寄る。それから、
「どうぞ」
 羽織っていたコートを脱ぎ、それを彼女のコートの上から被せた。微笑みを湛えながら、彼女に手を差し出す。
 彼女はそっと、美里の掌に自分の手を重ねる。彼女の手もまた、赤い模様に彩られていた。
 美里はしっかりとその手を握る。彼女の腰を支えながら、ゆっくりと引き上げた。足が震えている。彼女は立っているのがやっと、といった風で、全体重を美里に預けている。美里は、自分の首の後ろから肩にかけて、彼女に腕を回させる。そして、
「行こ?」
 それだけを告げ、彼女を引きずるようにしながら、その場を離れた。

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