[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 そして、男の首枷が外された。
 人間だったものが、その場に崩れ落ちる。肉塊は、二つになった。
 肉。欠片。人間だったものの塊。そこにはもう生命は存在しない。
 なぜか、心の中に一迅の空風が駆け抜けていく。冷たい風が、僕に現実を見せた。
 あれは僕じゃなかった。僕は、……僕。身体も動かせず、ただ腑抜けた顔で死骸を見つめている。それが僕なのだ。僕なのだ!
 その時、コツッ――、というあの死の旋律が、僕に近付いてくるのがわかった。欲して止まなかった、彼女の音だ。
 目が合う。彼女の意識がこちらに向けられた。その事実だけで、僕は歓喜に打ち震える。
 やはり、……やはり彼では駄目なんだ。僕でなければ。僕自身でなければ。今度は、……今度こそは、僕が――。そう思うほど、心臓は大きく高鳴った。
 興奮のあまり、先走っているのを感じる。今すぐにでも、自分の陰茎を扱きたい。しかし、それは叶わない。手の自由を奪う枷。本当に残酷な代物だと、あらためて思った。
 下半身を意識すればするほど、もどかしくて苦しくてたまらない。彼が破壊されることで満足することなんて、初めから無理な話だったのだ。彼女によって彼がいくら破壊されようとも、彼と同化するなど、到底無理な話なのだ。
 本当はわかっていた。よくわかっていた。ただ、……それを認めたくなかった。
 ――僕を、……僕自身を、……殺してください!
 彼女の顔を上目遣いに見る。精一杯の祈りを込めて。しかし彼女は僕の首元に手を伸ばし、あっさりと鎖を外した。首枷と天井を繋ぐものがなくなり、僕の弱りきっていた足は、重力に従った。
 その場に崩れ、床に全身を打ちつける。首枷のせいで、受身を取ることはできなかった。
 痛みを堪え、かろうじて見上げると、彼女と視線が合った。
 彼女の唇が動き、優しい形に変わる。ほんの一瞬だけ。ヴィーナスのごとき微笑みは、たちどころに消えてしまった。
 女神は興味をなくしたように、すっと僕から瞳を逸らす。扉の向こうへと吸い込まれていく彼女の後ろ姿を、僕はただ呆然と眺めていた。リズムを刻むヒール音が、徐々に小さくなっていった。

 虚無感が僕を覆い尽くす。
 肥大化した愚息を抱え、まるで芋虫のように床に転がっている自分。今や、美しい対象を失った僕の視線は、僕自身に向けられる以外になかった。それは、実に無様な生き物だった。存在自体が目障りだった。しかしその醜悪で惨めな存在は、僕に目を背ける自由すらも与えてはくれない。
 このまま這っていけば、おそらく壁を伝って立ち上がることはできるだろう。それどころか、ここから逃げ出すことさえ可能かもしれない。
 けれど、逃げ出したいとは思わなかった。なぜなら、僕はまだ、彼女に殺されていないから――
 目前には、コンクリートがむき出しになった灰色の牢獄が広がっている。けれど、心に浮かんでくるのは、彼女の淡い微笑みだけだ。
 部屋に転がる、二つの肉塊を恨めしそうに見つめる。
 僕が彼らと同じ恩恵に与れるまで、あと何分? 何時間? 何日? それとも……

 どれだけ先でもいい。待てると思った。



END

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コメント
この記事へのコメント
殺されるかもしれない 恐怖感 だけどやられたい 期待感 すごく伝わりましたし この内容の話しは よく分かります
2011/03/27(日) 22:17 | URL | きんた #-[ 編集]
嬉しいです。
きんたさん、こんばんは。またご来訪いただけて嬉しいです。
葛藤せども答えは同じ。この嗜好の男性は当然、必ず最後には許しを乞います。
現実と虚構の棲み分けですね。私の世界では、ちょっと違います。
物語にご共感くださり、大変光栄です。
2011/03/28(月) 20:06 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
感動しています
この感動をどう伝えたら……。ryonazさんの紡ぎ出す言葉のひとつひとつが、私の琴線に触れるのです。心を捉えて離さないのです。そして、あなたの描く世界に引き摺り込まれ、主人公と同化し、美しき殺戮者に心奪われ、凄惨な殺戮の世界を甘美なものと感じ、過去、現在二人の生け贄に嫉妬し、……。
゛やはり、……やはり彼では駄目なんだ。僕でなければ。僕自身でなければ。………″
この部分を読みながら、私は不思議なことを思ってしまいました。「ryonazさん、何でボク(私)の気持ち、知ってるんだろう??」直ぐに、自分の勘違いに気付いた私は、自分が如何に深くこの世界に入り込み、主人公になりきっていたかを知って、驚きました。まるで、目の前で魔法を見せられたような感じでした。次から次へと目の前に現れる、沢山の素敵な言葉によって、私が恍惚状態にあったために、そんな風に感じたのかもしれません。ゆきな梨央という小説家の底力を、改めて痛感しました。この主人公は、自分自身が殺されないと満足できないようですが、私はもう充分に満足しています。自分自身にそう言い聞かせています。(笑)
まだまだこんなに沢山の未読作品があるのかと、小説目次を見ながら、いつもニヤニヤしています。本当に楽しみです。(^_^)こんなに沢山の素晴らしい作品を、只で読ませてくださる太っ腹のryonazさんに感謝です。(笑)でも本当は、自分の本棚のお気に入りの作家さん方の作品の隣に、ryonaz作品をずらりと並べて、眺めてみたいという気持ちもあります。
ご免なさい、ダラダラと取り留めのない書き込みをしてしまいました。これからも、素敵な魔法を楽しみにしていますね。
2011/09/30(金) 23:39 | URL | 次郎 #sWkHkw7g[ 編集]
ありがとうございます。
私もまた、この感動をどう伝えたらよいものかと。こよない賛辞に、胸がいっぱいです。
これほど物語にどっぷりと浸り、堪能していただける。本当に、作者冥利に尽きます。
ちなみに、魔法ではありませんよ。私の紡ぐ世界に共鳴する感性をもった男性がそこにいた。ただそれだけのことです。
自ら私に捕らえられに来た物好き、次郎さん。もうryonazわーるどの虜ですね。逃がしませんよ(笑)
2011/10/01(土) 18:26 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
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