[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 女性がおもむろに顔を上げる。僕は反射的に目を背け、肉塊に視点を合わせた。
 おぞましい様相だ。少し前まで、確かにソレは呼吸し、動いていたはずだ。生きていた人間――。その事実すら否定したくなる。それが自分の近い未来の姿なのだと思うほど、絶望感に打ちのめされる。
 しかし皮肉なことに、自分が何とか我を忘れずにいられるのも、このおぞましい肉塊を見ているからこそだ。当然だ。今の僕にとっては、死を体現する肉塊より、死を思わせる目の前の女性の方が、遥かに恐ろしい存在なのだから。
 間もなく、女性の足音が聞こえてきた。その音のひとつひとつが、まるで僕の耳を突き刺しているかのように感じられる。だからこそ、僕はただじっと肉塊を見つめ続けた。
 やがて、足音がピタリと止む。同時に、隣から錯乱したような声が耳に入ってくる。そのことによって、僕は安堵の息を漏らした。
 それが一時的な平静に過ぎないことは百も承知のことだった。

 絶叫は瞬く間に獄中を包み込んだ。
 聞くに堪えないその声から逃れたくて、僕は無意識に耳を塞ごうとする。しかし、首枷はそれすらも許してはくれない。指が耳に届かないのだ。まるで、事の一部始終を耳にしろ、とでも言わんばかりに、枷は僕の首と両手首をしっかりと捕えて放さない。手と顔の間にこれほど距離を感じたことはなかった。
 いずれ彼もあの男のように、ただの物体と化すのだろう。もちろん、僕も。それならば、この死を待つのみの時間に、果たして何の意味があると言うのだろう。先ほど安堵した自分は、絶望の中、彼の阿鼻叫喚に晒されながら、それでもわずかに生き長らえることを望んだとでも言うのだろうか。
 自己矛盾に苛まれる。そして、考えないようにしようとすればするほど、男の悲鳴が耳を刺激する。
 見ない方がいい。結果がわかっている以上、そうすることが精神的に一番楽なはずなのだ。殺害の過程を見たであろう、隣の男の二の舞になるのがオチだ。自分にとってプラスになることなどない。知らなくていいことだ。例えば、病院で貰う薬のように。
 この病気にはこの薬が効く。それで十分なのだ。なぜこの薬が効くのか、どういった成分によって治るのか、その根拠は何か、どういった経緯でこの薬が発明されたのか、発明した人物の生い立ちはどのようなものだったのか、その人物を取り巻いていた環境や時代背景は――
 一般人がそんなことを知る必要はない。今の僕の状況もこれと同じことだ。僕はただ、いずれやって来る解答の時まで、このままじっと堪えていればいい。わざわざ恐ろしいことがわかっている経過にまで目を向ける必要など全くないのだ。だから……、だから――!!
 その決意を嘲笑うかのように、僕の瞳は横に流れた。そして僕は、彼と同じように声を上げた。
 自分の好奇心と怖い物見たさ、それに伴う安易な行動が心底憎い。同時に、あまりにも狂気に満ちた目の前の現実によって、僕の瞳は釘付けにされてしまった。
 ――どうして……? どうして、鼻が無いんだよ……?
 その問いかけは声にならない。無論、それに対する答えなど知りたくもない。男は、大量の血液を顔面の中央部から垂れ流しながら、喉から漏れるわずかな空気を必死で声の代わりにしようとしている。
 間もなく、男の片耳が弾け飛び、血飛沫が上がった。彼は再度、絶叫する。僕の内部に恐怖心が芽生え、すくすくと育っていくのがわかる。それでもこの両目は、決して男の顔面から離れてくれない。
 だから、僕は笑った。笑うことでしか、自分を保てないから。ただ精一杯、笑った。笑い続けた。
 その時――、ふいに女性の身体が視界を遮った。真っ先に僕の目に飛び込んできたのは、艶やかな彼女の髪だった。肩の辺りで緩く巻かれたそれが、彼女の輝かんばかりの美貌を彩っている。大きな瞳。その奥からは、秘めた力強さが感じられ、薄めの唇は、彼女の酷薄さを象徴しているようだ。
 自然と僕の視線は、男からその女性へと対象を変えていた。なぜか身体中に血が巡ってくるような、不思議な感覚を抱く。陰部がみるみるうちに力を帯びてくる。自分の反応が信じられずに動揺する。目前にいるのは、あれほど恐れ、あれほど目を逸らしていた殺戮者だというのに。

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コメント
この記事へのコメント
こんばんわ 毎度お疲れ様です。あああーわくわくするその男の最後が楽しみです。
2009/03/08(日) 00:16 | URL | でぶ #-[ 編集]
こんにちは。
こちらこそ、いつもコメントをありがとうございます。現在はご出張先でしょうか?
ご来訪いただけて本当に有難いのですが、くれぐれもお仕事に支障のないようにお願いしますね(汗)
お気持ち、大変嬉しいです。出し惜しむつもりは全くありませんが、意図的に調整はしています。
不定期更新を計画的にやっている、といったところですね。その点は、どうぞご理解ください。
気長にお待ちいただければ幸いです。今後の展開にも、よろしくお付き合いくださいませ。
2009/03/09(月) 11:55 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
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