[18禁] 逆リョナ小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
 頬を撫でていく寒風が、少しだけ俺の酔いを醒ました。
「何すんだ、こらぁ! おい!」
 自分の呂律が回っていないことに気付く。日野は答えず、平手を俺の頬に勢いよく叩きつけた。
 視点がぶれる。
 ふらつき、倒れそうになる俺の胸座を、彼女は両手で掴み上げた。
「来なさい」
 俺は、路地へと引きずられていった。

 並んだ店はどこも閉店しており、諸所に設置された街灯以外の光はない。
 そこでようやく日野の手から解放された俺は、地面に尻餅をついた。ぶつかった臀部の痛みよりも、地面の冷たい刺激の方がきつく感じられた。尻を伝い、冷気が全身に染み込んでくるようだ。
「お前、いい加減に――、うっ……ぐ」
 上半身を起こして悪態をつく俺の胸元を、日野がぐいと踏み付ける。俺は仰向けに倒れたが、それでもパンプスは、容赦なく俺の胸に喰い込んだ。
 地面とパンプス。――どちらも冷たく、どちらも硬かった。
 じわじわと体重をかけられ、俺は苦しさから呻き声を上げる。同時に、理不尽な日野の行為に対する反抗心が、沸々と芽を出してくる。擦れた声をふり絞り、
「どういうつもりだ!」
 と、感情を剥き出しにする。箍が外れたように、言葉がさらに口から流れ出る。
「何だよ! どうせお前だって、俺を馬鹿にしてんだろ? 上だと思ってんだろ!? あ?」
 自虐的な笑いが込み上げてくる。それでも表情を変えない日野に向かい、
「下々の者は御礼を言わなきゃな。奢ってくださって、ありがとうございましたぁ」
 わざとらしく、棒読みでそう吐き捨てた。
「……本当にがっかり」
 日野は冷静な声でそう言い放った。見下すような視線が癪に障る。彼女はすぅと息を吸い込み、言葉を続けた。
「今の自分の姿、ちゃんと見えてる?」
「何言ってんだ。意味わかんねぇ」
「みっともないとは思わないの?」
「クビのことか? 知るか。ただ俺は、自分に正直になっただけだ。正しいと思ったことをしたんだよ」
「じゃあ、さっきのあれも?」
「あ?」
「店の人に絡むのも、正義なんだ」
「あぁ。俺は悪くねぇ。あの店員の根性が曲がってんだ」
「そう……。あんた、もう終わりね」
 その言葉を機に――
「ぐっ……、ああああぁっ……!」
 日野はさらに俺の胸を強く押し潰した。

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