[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 寒さなど感じなかった。
 街に溢れる騒音も、人の流れも、何もかも、俺の意識に働きかけてはこない。それにしても、街というものは、こうも色褪せたものだっただろうか。
 占いの館――サティーン。
 そこへ向かう道のりだけが、なぜか色鮮やかに見える。まるで俺を誘っているかのようだ。
 一歩足を踏み入れた時、俺は心から安堵した。ふっと肩の力が弛むのがわかる。いつもと変わらぬ館の雰囲気が、衰弱した心に安らぎを与えてくれるようだった。
「いらっしゃいませ。来られると思ってました。今日はお早いんですね」
「無断で早退してきてやりましたから。でも、携帯が鳴る心配すらない。必要ないんですよ、俺なんて」
「また、何か?」
「……はい」
「そうですか」
 占い師の淡白な口調は相変わらずだった。しかし、今日はそれでもいいと思った。目の前の綺麗な女性と、仕事に関係のない話でもしたい気分だった。
 机を挟み、互いに向かい合って座る。同時に、彼女が再び口を開く。
「昨日の儀式の効果はありましたか?」
「……少なくとも、良い事があったとは思えませんね」
「そうですか」
「あの、占い師さん」
「はい?」
「犬には、……生きる価値すら無いんでしょうかね?」
 思わず自嘲する。腰掛けた椅子の背凭れにゆったりと身を預けていると、この世界がいかにくだらないものかが見えてくるような気がする。占い師はそんな俺の様子を見ながら、
「お元気が無いようですね」
 無機質な声を発した。
 俺の返答を待たずして、彼女は俺の右手の中指にすっとリング状のものをはめる。洒落っ気のない、銀色の指輪のようなものだ。よく見ると、小さな宝石らしきものが埋め込まれている。
 それから占い師は、真剣な表情で俺の目を覗き込んだ。忘れていた彼女の瞳の美しさに、あらためて気付く。すうっと惹き込まれていく感覚に陥る。やがて彼女は無表情のままで、
「もちろん、価値はありますよ」
 さらりと言った。その言葉が、俺の心の奥を刺激する。俺は彼女の瞳を見つめ返し、さらに訊く。
「俺みたいな犬にも……価値が?」
「あなたは犬ではありませんよ。少なくとも、今は」
「でも今日、……負け犬だって」
「決まったんですか? 前回も申しました。従うも、打開するも、あなたの自由だと」
「俺の、自由……?」
「そう。それに、仮にあなたが犬なら、噛みつくこともできますよね」
 俺は言葉を返さなかった。指にはまったリングへと視線を移し、ぐっと拳を固く握った。

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