[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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『犬です。……注意なさい』
 昨日の占い師の言葉を思い出す。
 ――犬……。会社の、犬……? 冗談じゃない!
 嫌な考えを振り払いたくて、無意識に湯のみに手を伸ばす。並々と注がれた冷めた茶。そこでふと思い立ち、課内をぐるりと見回す。――いた!
 課の一角。そこに相川さんの姿があった。目が合う。彼女は昨日と変わらぬ穏やかな笑顔を見せてくれた。俺も微笑み返し、茶を掲げてぐいとそれを飲み干す。彼女がそれを見てくすりと笑う。俺の心の奥がすっと楽になっていく。彼女の口が「頑張りましょうね」と動いたように見えたのは、俺の錯覚だったのかもしれないが。
 所詮占いじゃないか。こんなことで振り回されるなんて、馬鹿らしい。今日はたまたま、悪いことが重なっただけだ。そう自分に言い聞かせ始めた頃、背後から声がかかる。
「宇崎さん。ちょっといいですか?」
 予想はしていたが、やはりその瞬間が来るのは嫌なものだ。
「……はい」
 振り返ると、薄い黒ストッキングが真っ先に目に入った。視線をゆっくりと上げていく。見慣れた臙脂色のスーツの上には、想像通りの顔があった。常盤部長だ。その瞳は冷たい光を宿していた。俺を見下ろしながら、顎だけで指図する。俺は促されるまま、相談室へと連れて行かれた。

 狭い。
 中に入るのは初めてだった。設置された電灯は薄暗く、入口についている曇りガラスを除けば、この部屋には窓ひとつない。俺を招き入れた常盤部長が内側から鍵をカチリとかけた時、この部屋は完全な密室と化した。相談室とは名ばかりの部屋。実際、社員の間では懲罰室と呼ばれているほどだ。現在のように、普段は開放されている入口の扉が閉まっている時は、誰もここには近づかない。
 常盤部長は扉を背に、俺をじっと見据える。コツコツとヒール音を鳴らしながら、ゆっくりと俺に向かって歩を進める。彼女が目の前に立った時、自分の方がわずかに背が低いことに気付いた。妙な威圧感を受け、自然と額に汗が滲む。彼女は腰に両手を当てたまま俺をじっと見下ろした。そして、いつものようにウェーブのかかった髪を一度かき上げると、
「何なんですか、あのザマは」
 威嚇するような声色で口火を切った。
 俺にとっては心当たりが多すぎる問いかけだった。今日は何をやってもうまくいかなかった。どのことについて言われているのかもわからなければ、それに対してどう答えたものかもわからない。
「すみません」
 俺は項垂れ、とにかく言い慣れたその言葉を口にする。常盤部長は鼻で笑い、
「またそれ? その後は、部長にはいつもご迷惑をおかけして……って続くのかしら?」
 嘲るように言い捨てる。彼女は、黙したまま目を伏せる俺にさらに一歩近付き、
「ふざけんじゃないよ……!」
 と、低く、ドスの効いた声で俺に詰め寄った。
 冷や水を浴びせかけられたように感じた。腰が抜け、俺は無様に床にへたり込んでしまった。

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