[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 腹が立って仕方がなかった。
 部長に対しても、同僚に対しても、会社に対しても、そして、他ならぬ自分に対しても……
 やりどころのない怒りを払い除ける思いで、俺は冷めきった茶を一気に飲み干した。
 と――、ふと背後に人の気配を感じた。
 てっきり、残っているのは自分ひとりだと思い込んでいたため、俺は少し動揺する。振り返ると、そこには同僚の女が立っていた。名は、相川といったか。手に急須を持っている。
「おつかれさまです。あの、お茶、いかがですか?」
 穏やかな声色が、凝った身体を解してくれるようだった。空になった湯のみを差し出し、
「あ、ありがとう」
 と礼を言う。彼女は朗らかな笑みを浮かべ、手渡した湯のみに茶を注いでいった。
 間もなく湯のみはいっぱいになる。再度、礼を言った後で、湯のみに口を付けた。喉を通る茶が、俺の心を温め、潤してくれる。少しリラックスできた俺は、
「相川、さんだよね。ありがとう。うまいよ」
 と、話しかける。彼女は再びにっこりと笑顔を湛えると、俺の隣席に腰を下ろした。
 小柄だ。大きな瞳は可憐だが、その奥には力強さを感じさせる光がある。化粧はしていないが、顔立ちは整っており、可愛らしい。愛嬌もある。ロングの黒髪は後ろでしっかりと束ねられており、身に着けたスーツも一切乱れていない。いかにも真面目な女子社員といった雰囲気だ。
 俺が仕事の手を止めると同時に、彼女が口を開く。
「残業ですか?」
「うん。もちろん帰れるもんなら早く帰りたいけどね」
「はぁ……。大変ですね」
「そう言う相川さんこそ、残業?」
「あ、はい。私は仕事が遅いので……。持ち帰り仕事もあります」
「そっか。お互い大変だな」
 俯き、ため息を吐く。机上に置いた湯のみが目に入り、ふと思いつく。
「そう言えば……」
「はい?」
「今まであまり気にしたことなかったんだけど。このお茶って、いつも相川さんが?」
「あ、気付いてくださって嬉しいです」
「どうもありがとう。でも、その時間に仕事をひとつでも片付けられたんじゃ?」
「いえ、お気になさらず。私なんか、今日は結局、怒られるだけで半日が終わりましたから」
「そんなこと言ったら、俺なんて一日中……、っつーか、一年中か」
 その言葉を聞いた彼女は、
「じゃあ、私たち、似た者同士ですね」
 くすりと笑う。俺もそれにつられて、さらに大声で笑う。課内が二人の笑い声に包まれていく。
 それは、俺がこの会社で得た唯一の至福の時間だった。

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