[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 ――可愛い。
 素直にそう思った。つまり、危うく罠に引っかかってしまうところだったのだ。意識的に目を逸らし、警戒心を高める。考えてみれば、リアル女と接触したことも、ひとつのネタになる。明日、感想の書き込みでもしよう。ただ、今はそれどころではない。
「もう……いいよ」
 そう言い捨て、再び帰路に足を踏み出す。
 僕は内心焦っていた。こうしている間にも、予告時刻は迫ってきているのだ。こんなところで時間を浪費している場合ではない。一刻も早く、新しいネタを考えなければ。
 無言のまま、一応軽く女に会釈する。と、ふと潰れた小さな箱が視界の隅に映った。彼女の足元だ。何となく気になり、視線をそちらへ移す。彼女は必死でそれを隠そうとしたようだったが、それは既に僕の目にしっかりと入っていた。踵を返し、少しだけ彼女の元へと歩む。
「そ、それ……」
 赤いリボンで飾られたその箱は押し潰されていた。中からはガラス製品らしきものが覗き、既に原形を留めていないようだ。事情を察するのに時間はかからなかった。僕も彼女の物を――
 バツが悪くなり、言葉に窮する。彼女は僕の心境を読み取ったのか、
「あ、いいんです。これはもう、捨てるつもりでしたから」
 と、急に元気な声を張り上げた。まるで湿った雰囲気を打ち消そうとするかのように。
「……捨てるつもりだった、って、それはない……よね。常識的に考えて。だって――」
「フラれちゃいましたから。ついさっき」
 彼女のその一言で、僕は次の言葉を失った。
 ――おいおい、何このパターン。完全に僕が何か言うシーンだよね、コレ。何て言えば? 選択肢は?
 考えようとすればするほど、何も考えられなくなる。どうしていいのかもわからない。だからリアルの世界は嫌いだ。ポーズすら無い自動再生。こうやって考えている間にも、時間は刻々と過ぎていく。
 結局、僕は何も言えないまま、ただ俯くことしかできなかった。彼女は、
「……だから、もういいんです」
 と、言葉を紡ぎ、にっこりと僕に微笑みかけた。ただ、潤んだ瞳と震えている声が、彼女の心情を正直に伝えていた。
「あなたも、それ……。彼女さんのため、だったんですよね?」
 さらに彼女が連ねた言葉に、僕は動揺を隠せなかった。
「あ、えあっと……、これは、その、そんなんじゃ――」
「違うんですか?」
「んあ、えと、……何つか、その――」
「……あっ」
「え?」
「もしかして、私と同じ……ですか?」
「……んっ、と。ま、まぁそんなとこ。ひ、一人でヤケ喰いだぁ!……的な?」
 と――、その言葉の途中で、ほのかな香りが僕を包んだ。
 ふいに彼女が僕の手をそっと握る。温かくて柔らかい感触が、僕の心をほぐしてくれるようだった。
 寒風が吹き荒ぶ。僕は何も考えず、ただ静かに彼女の傍らに寄り添った。

Back | Novel index | Next
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。