[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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「次で最後です」
 先輩の囁く声を聴き、私はあらためて書類とペンを拾い上げた。おそらく、先輩はソツなくこなしてしまうのだろう。しかし、本当にそれでよいのかという懸念が、私を突き動かしていた。
「由香利先輩……」
 思わず、私は先輩に声をかけていた。
「もう。……もう終わりにしては、ダメですか?」
 私がそう言葉を重ねた時、男の表情がにわかに精気を帯びてくるのがわかった。しかし同時に、先輩の表情はみるみるうちに険しくなっていった。
 先輩は男に一礼し、私の元へと歩を進めた。しかし、私もまた毅然とした態度を崩さなかった。先輩が私の目の前で立ち止まった時、私は、
「先輩、酷すぎます!」
 と、半ば感情的に、内に溜めていた思いを吐き出した。先輩は私の言葉を聞き、ふっと穏やかな笑みを私に向ける。
「さっきも言ったでしょ? 私たちは法律の――」
「わかってます。でも先輩は、その、冷たい……と思うんです」
「冷たい?」
「そうです。容赦も躊躇もない。手加減も一切しない」
「……その考えは違うよ」
 そう言った先輩の表情は、少し寂しさを感じさせるものだった。先輩がさらに口を開く。
「さっきの執行中、あなたは手加減してたの?」
「いえ。……一生懸命やりました。でも、痛がったら躊躇する。それが人間だと思います」
「違う。どんな過程を経ても、刑は実行する。あなたの過程がもたらしたのは、何だった?」
 そう訊かれ、私は答えに窮する。先輩は微笑し、言葉を重ねた。
「恐怖と痛み、苦しみの継続。……違う?」
「っ……」
「それはじわじわと甚振る行為と同じ。それは優しさじゃない。苦しみを長引かせるだけなの」
「……で、でも、頑張ってたんです。情を捨てようと、必死で――」
「一生懸命なのはわかってたよ。だけどね……」
 そこで一呼吸置き、先輩はあらためてじっと私の瞳を見つめた。そして、
「違反者は実験道具じゃない。人間なの。尊厳を損ねる行為は……許されない」
 と、言葉を紡いだ。
 私の価値観が壊れていくのを、はっきりと感じた。

 私は、踵を返した先輩の横を通り抜けた。
 横目でちらりと見た先輩の顔には、とても穏やかな笑みが浮かんでいた。
「頑張ってね」
 その言葉を背中で聞きながら、私は男の方へと真っ直ぐに進んでいった。
 彼の表情は、若干和らいでいるように見えた。その縋るような瞳を見た時、私はようやく心から微笑むことができた。私の中で彼が、受刑者――神沼誠次から、人間――神沼誠次へと変わった瞬間だった。
 拳を固く握りしめ、神沼さんの睾丸を凝視する。
 振り下ろす拳――。私はもう迷わなかった。



END

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コメント
この記事へのコメント
最後は睾丸、リアルだったらと

思うと恐ろしいです。

でも、何故か自分を置き換えてします;;;
2011/10/15(土) 23:57 | URL | 昼の梟 #LkZag.iM[ 編集]
怖いですか(笑)
作品に感情移入してご覧いただけて嬉しいです。
不思議なものですね。嫌なら自分の身に置き換える必要などないのに(笑)
大袈裟な怯え方――あの弱々しい姿が可愛らしいんですよね。
2011/10/16(日) 12:45 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
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