[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
「柳本……紗希、だよね。もう、邪魔しないで」
 そう言った彼女の声色はとても弱々しかった。身体を震わせ、拳を強く握り締めている。俯いた顔からは表情が読み取れなかったが、その頬を伝う涙は止め処なく零れているようだった。
 今の彼女からは、感情がはっきりと窺える。私はゆっくりと彼女に近づくと、
「いいよ」
 と、さらりと答えた。その回答が意外だったのか、彼女はその顔を私の方へと向ける。彼女の潤んだ瞳が、街灯の光を反射して煌いていた。彼女は高架橋下の柱を背凭れにして地面に座り込み、黙り込んだ。私もまた、彼女の隣に腰を下ろす。
 二人だけの世界が広がっていた。
 それを彩るのは、闇と血塗れの五人の男、そして時々風と光と音を運んでくる電車。それだけだった。
 肩を並べた私たちは、ただその空間に身を委ねている。
 彼女の瞳に、僅かな光を感じた。それをじっと見つめながら私は、
「でも、やっぱりこういうやり方じゃ駄目だ」
 と、彼女に釘をさす。
「どうして――」
 と声を荒げる彼女を制し、私はさらに言葉を連ねる。
「用意されたレールを、踏み外しちゃいけない」
「…………」
「そうならないために、頑張ってきたんでしょ? このままじゃ、いずれは――」
「……知ってる。だけど、止められないの……どうしても」
「わかるよ。あなたと私は、すごく似てるからね」
「え?」
 想像もしなかったことなのだろう。彼女の声は上擦っていた。
「どこが?」
 そう言ってずいと身を寄せる彼女は、先ほどとはまるで別人のようだった。私は苦笑し、一呼吸置いてから口を開く。
「溜まってるとこかな。優等生は疲れるでしょ?」
「…………」
「それでいて、男に負けない力がある。ただ、あなたはそれに加えて、現状への不満も感じてる」
 私の言葉を聞いて、彼女は自嘲するように息を漏らす。
「そうだよ。だから時々、何もかも滅茶苦茶にしたくなる。でも、あなたには勝てなかった。私はもう……」
 彼女はそこまで言うと、口を噤んだ。やり切れない彼女の思いがひしひしと伝わってくる。
 黙り込む彼女の様子を横目に、私は口を開いた。
「闘いはね、理屈でできてるの」
 唐突な言葉に、彼女は少し驚いた表情を見せた。
「理屈……」
 と、彼女は一度復唱したが、その顔は釈然としない。もちろん、こんな言葉で彼女に理解できるとは思わなかった。渋い表情を湛える彼女の顔を見ていると、自然と笑みが零れてくる。この無邪気さと真剣さが、彼女の良さでもあるのだろう。
「そう。まあ、大したことじゃないけど」
 私はそう言って誤魔化したが、彼女は私の意に反して、強い興味を抱いているようだった。

Back | Novel index | Next
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。