[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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「邪魔だよ」
 開口一番、彼女は無邪気な声で私にそう呼びかけた。
 猫背の姿勢。俯いたまま小首を傾げ、不規則に身体をゆらりとなびかせている。
 流れゆく電車の光が断続的に彼女の顔を照らし、その表情を私の前に映し出す。その時、私の予想は確信へと変わった。彼女が正気でないことは間違いない。
 ――そう。瞳だ。
 狂気を携え、光を灯していない。墨をベタ塗りしたような独特の色がそれを覆っている。口元にはうっすらと笑みが浮かんでいるが、彼女の瞳は決して笑ってはいない。
 戦慄とは違う。しかし、その瞳に漂う妖気は確実な冷媒となって、私の内部へと侵入してくる。
「どいて」
 再び発せられた彼女の口調は淡白だった。しかし、そこには明らかな敵意が窺える。
 垣間見える鋭い感情が私を襲う。それは怒りでも、憎しみでも、苛立ちでもない。例えるなら、玩具を取り上げられまいと必死になる子どものような感情、……だろうか。
 電車が高架橋を通過し、再び辺りを闇が覆うまでの間に、彼女は私の目前へと迫ってきた。
 ――速いな……
 私は片足を半歩後ろに下げ、身構える。しかし、彼女の視線は私に向けられてはいなかった。彼女が下目遣いに見ていたのは、私の足元に転がった一人の男だった。
 ――私は眼中にない……か。面白い。
 思わずクスッと笑みを零し、構えを解く。彼女は男に手を伸ばし、金に染められた髪を掴み上げる。
「ひぇ……ひっ、ひぃ……」
 と、男は胃液を撒き散らしながら涙声を上げる。彼女は口元にわずかな笑みを湛えると、少し大きく、尖った石に向けて、男の頭を勢いよく振り下ろした。
「がああああっ!」
 男は悲鳴を上げ、意識を失った。血飛沫が闇に舞う。その瞬間、彼女の瞳がすっと私に向けられた。思い通りにいかなかったことが不満だったのだろう。
 無理もない。トドメという名の最高のエンディングを、あっさりと私に取られたのだから。
「やっと、こっち見てくれたね」
 私が茶化す。しかし、彼女は笑うことなく、
「どういうつもり?」
 と、強い語調で私を問い詰める。
 相変わらず無機質な瞳ではあったが、そこからは沸々と込み上げる怒りの感情が読み取れた。誰だって、お気に入りの玩具を取り上げられたら憤りを覚えるものだ。それでいい。
 彼女は壊れた人形に興味をなくしたのか、投げ捨てるように男の髪から手を放した。
 男は、石の上に乗せた私のローファーの上を滑るように、地面に崩れていった。男の血が私の足を赤く染める。石にぶつけられなかっただけでも有難いと思ってほしいものだ。
「聞きたい?」
 私は、彼女の漆黒の瞳をじっと見据えながらそう問うた。彼女は黙っていた。ただじっと私を見つめ、身体を小刻みに震わせている。その様子を見ながら、私は再度、口を開く。
「奪っちゃおっかなぁ、って」
 その言葉を機に、彼女の瞳が鋭く閃く。それは、彼女の怒りの感情を明確に表すものだった。

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