[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 高架橋を揺るがし、電車が線路上を流れていった。
 闇へと消えていくそれを目だけで追い、再び帰路へと視線を戻す。
 敷かれたレール――。そう訊かれたら、真っ先に自分の人生を想起し、哲学する。凡そ常套思考とはそういうものだ。ただ、私には馴染まない。現実味を伴わない。それだけのこと。
 自分の可能性を、とか、自分の道は自分で決める、などといった偽善的な話は苦手だ。盗んだバイクで走り出すなんて馬鹿らしい。レールを悪とし、それに抗ったり、反発したりすることに意味なんてない。だから、それを跳ね返す必要もなければ理由もない。もちろん、そんな力もない。
 私は麻美大嶋学園のエスカレーターに乗って高等部へ進学する。私が望むにせよ、望まないにせよ、その結果は変わらない。それでいい。だから、こんなことを考えていること自体がおかしい。
 自嘲し、闇を照らす街灯を頼りに歩を進める。少し強い風が、ひらりと私のスカートを捲り上げた。
 変わらない道。いつもと同じ風景。すれ違う様々な顔ぶれも見慣れたものばかりだ。
 足早に無言で歩く大学生らしき男や女。手を繋いで歩くカップル。赤い顔でしきりに何かを叫ぶ、覚束ない足取りの中年サラリーマン。それを宥める部下らしき男。地べたに座り込んで自分たちの弱さをアピールする、馬鹿そうな男のむさ苦しい群れ。
 ため息を吐き、再び流れる電車を目で追う。
 ふと視界の隅に違和感を抱いた。足を止め、視線を何気なく高架橋の下へと移動する。
 闇が深い上に、距離がある。じっと目を凝らしても、確認できたのはせいぜいその人影の輪郭と性別くらいだった。一人の女と、それを取り巻く五人の男。女は身体を小刻みに震わせている。同い年くらいだろうか。間もなく、男たちの下品な声が耳に届いてくる。珍しくもない光景だ。
 ――関係ないな。
 私は再び、歩みを進めた。
 あの種の男たちは例外なく、何かと下品に騒ごうとする。彼らは日本語自体が話せないのだから無理もないが、まともに異性と話もできないのは哀れなことだ。それには同情する。己の欲情の虜になり、捌け口が見つからず、結果、本能的に力と下半身で会話をしようとする。……惨めだ。
 男たちの猥声を横耳に聞きながら、私は帰路を辿る。女は抵抗しているのか、男たちのそれは次第に怒声へと変わっていった。無理もない。日本語の通じない彼らにとっては、言葉が鬱陶しくて仕方ないのだから。彼女の一握の声が響く。それすらも、電車の運ぶ音が見事にかき消していく。いかにも現実らしいと思えた。そして、再び舞い戻ってくる男と女の声。
 そこで、私はひたりと足を止めた。女の悲鳴と、男の愚劣極まりない声――そういった音が耳に届いてくるものだとばかり思っていた。予想を裏切る音たちに興味を抱き、再び、人影たちの方へ目線を注ぐ。
 ――面白い。
 素直にそう思った。
 退屈な日常を少しでも潤す非日常に惹かれてしまったのかもしれない。
 血が凍り、全身が微震を始め、口元に笑みが零れてくる。こんな風に胸を刺激されるような感覚は久しぶりだ。感情が揺さぶられる。身体が疼く。高ぶるエネルギーを抑えきれない。

 ――助けてやるかな。…………あの男たちを。
 
 私は小走りで高架橋の下へと向かった。

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