[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 検事になってから、早五年が経った。
 凶悪な犯罪や理不尽な暴力、卑劣な詐欺、痴漢、その他迷惑行為……
 事件がメディアを騒がせない日はない。
 諸悪の根源を断つなんて到底不可能だということはわかっている。
 でも、だからこそ、自分にできる範囲で、悪への制裁に全てを注いだ。もちろん法の下で。
 それが私に与えられた天命。それが私に課せられた一生の課題。
 
 日々がめまぐるしく過ぎていった。
 私の目に入ってくるのは常に、山積みの書類と、無感情に時を刻む時計の針だけだった。
 季節の移り変わりなんて、意識する暇もない。それどころか、外が暑いのか、寒いのか。玄関先にはどんな花が咲いているのか。庭先には何を置いていたのか。虫の声や鳥の声は今、聞こえているのか。それとも聞こえていないのか。もしかしたら、自然など存在していないのではないか。
 とにかくそんなことに気を配る余裕なんてないし、その意味も感じない。

 そう言えば、私には夫がいたはずだ。
 結婚したのはいつだっただろうか。式には誰が来たんだろう。そもそも式なんて挙げたのだろうか。挙げたとしたら、いつ? 指輪をもらった覚えもなければ、婚姻届を提出した記憶もない。夫はいつも側にいないから、忘れてしまうのも仕方がないことなのかもしれない。
 もちろんそんな疑問を抱くこともなかったし、その必要もなかった。要するに、私にとっては、そんなことは考える意味すらないものなのだ。
 検事という仕事。
 それが私の全てだった。この仕事の達成感や充実感は、私にとってかけがえのない宝物だった。

 自分は特別な人間ではない。
 そう自覚する日は、こんな風に突如として訪れるものなのだろう。
 私は法廷で泣き崩れた。足が利かなかった。頭の中が真っ白になった。
 ただ頭の中にあったのは、書類の束と時を刻む時計の針の規則的な動きだけ。
 ――私がいなくちゃ……何も動いていかない……
 それも私が勝手に創り上げた、単なる思い上がりにすぎなかった。全てが空想だった。
 検事である私が公の場から姿を消した時、「別の検事」という人間がすぐに現れた。
 私は検事だったわけじゃない。その時の検事が、たまたま私だっただけ。
 私の代わりなんて吐いて捨てるほどいる。そんなことは、考えたこともなかった。


 今日も病院。診察を受け、薬をもらい、一ヶ月後の予約をする。
 こうしている間にも、犯罪は毎日のように紙面を飾っているのだろう。
 でも、もう私にはそんなことはどうでもいい。
 私がこうやって定期的に病院に通っていても、世界はうまく回っていく。
 私が検事だったころも、同じように世界はうまく回っていた。
 何も変わらない。変える必要もない。まして、そんなことを考える必要もない。
 だって、こんなにも空は青いのだから。

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