[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 西陽は光の帯となり、残った二人を温かく照らしていた。
 放課後の教室。
 美里は堪えきれなくなった涙を瞳一杯に浮かべ、紗希の胸に顔を埋めていた。紗希の腕に包まれたまま美里はしゃくり上げ、その胸中を紗希にぶつけた。
「私、さっきはあんな風に説教したけど――」
「うん」
「本当はわからないんです」
「……」
「私自身は、……強い人間なんかじゃない。強さって、一体、何なんですか?」
 悲痛を伴う美里の言葉が、紗希の耳に届けられていた。
「確かにお兄ちゃんを守れてよかった。格闘技を続けてきてよかったとも思ってます。でも――」
 紗希は言葉を挟まない。美里はさらに涙声を上げる。
「こうやって人を倒す度に、こんな風にいつも傷つくんです。いつも……いつも……」
 泣きじゃくる美里を、紗希がそっと抱きしめる。美里は高ぶった感情を抑えきれないのか、絶叫にも似た声で捲し立てる。
「本当は、もうこんな思いをするのは嫌! 他人に力や技で勝ったって、残るのはこの心の傷だけ……全然、強くなんてなれない……」
 その言葉を聞いた紗希が、突然ぐいと美里を身体から離す。驚いた表情でいる美里の瞳を、紗希はじっと見つめた。それまで静かに美里の言葉に耳を傾けていた紗希の唇が、ゆっくりと動く。
「心の傷ってさ……無駄なもの、なのかな?」
 紗希の呟きに、美里が黙り込む。その問いかけの意味を考える。

 ――心の……傷……
 傷は、弱さの証だと思う。
 強くなれば、傷つかずに済むはずだ。
 例えば、紗希さんや彩香さんや、渚さんみたいに。「強さ」の意味が知りたくて、私はずっと彼女たちを見てきた。
 私は、もともと弱い存在。だからこそ、彼女たちのように輝く方法が知りたかった。
 でも、心の傷は無駄じゃないというのだろうか。
 傷つくことで、何か得るものがあるのか。

「私、強くなりたい」
 静かな教室に、美里の声が響き渡った。
 紗希は、そんな美里をじっと見つめていた。黙ってそこにいるだけだったが、それが美里には嬉しかった。
「ごめんなさい。聞いてくれてありがとうございました」
 美里はそう言いながらすっと立ち上がると、下校の準備をする。
 その時、紗希もまた俯いたまま立ち上がった。
「美里」
「はい?」
 美里はその声に違和感を覚え、紗希の方へくるりと向き直る。
「――強い人間なんていないよ」
 それは、普段の紗希が放つ声色とは質を異にするものだった。
「紗希さん……?」
 美里の目には、俯いた紗希の表情がどこか寂しげに見えた。
 しかしそれは、一瞬のことだった。
 すぐに紗希は、いつもの表情を取り戻す。彼女が「ふっ」と謎めいた笑みを零したのを見て、美里はそれ以上尋ねられなくなった。
 茜色に縁取られた紗希の瞳が、ほのかに揺らめいた。



END

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