[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  〜美しき女性たちの狂気〜
 目の前にいるあなたの姿が、ぼんやりと霞んで見えることがある。
「あなたはどこにいるの?」
 馬鹿げた質問だとわかっている。でも、つい思ってしまう。口に出してしまう。
 そんな時、あなたは決まって、
「ここにいるだろ。お前の目の前に」
 って、朗らかな笑みをくれる。苦笑しながら、私をその胸に包み込んで。
 温かい。
 そのぬくもりが、私をどれだけ安心させてくれたか。
 その優しさが、私をどれだけ支えてくれたか。
「ありがとう」
 あなたに聞こえないように、私はいつもそう呟く。マスカラが落ちて崩れた泣き顔を見られたくなくて、私はいつもあなたの胸に顔を埋める。
 こんなに大きな幸せを与えてくれる。かけがえのない存在。だから――
 もっともっとあなたを理解したいと思う。あなたを知りたいと思う。あなたの存在そのものを見つけたいと思う。人間としてあるべき姿でいるその身体の中に、あなた自身を探したいと思う。
 だから、結局また同じ言葉を繰り返す。
「あなたはどこにいるの?」
 ……もちろんあなたの返答は変わらない。
 愛情、思いやり、心遣い、気配り。私はその全てを確かに感じてる。
 それは山のように高くて、海のように深くて、大気のように包容力があって……
 そこにある素敵な輝きの数々を否定することなんてできない。でも、形をもたないものを信じるのはすごく難しい。移りゆく時の中で、変わってしまうものもあるかもしれない。私にとっては、どれも失いたくない大切な宝物。
 ――このまま時間が止まってしまえばいいのに。
 そう思ってしまったことが、私の最大の罪だったのかもしれない。
 あなた自身が見たい。……ただそれだけだった。
 あなたを裂いた。夢中で中身を取り出そうとした。『あなた自身』に直接触れたかった。でも、中から出てきたのは柔らかい肉の塊だけ。残ったのは、動かなくなったあなたと、真っ赤に染まった私だけ。
 その時から、あなたの時間は止まった。でも、私の時間は今も流れ続けてる。それによって得られたものなんて、何ひとつなかった。その代わりに、失ったものは数え切れない。
 あなた自身を求めて、あなた自身を失ってしまった。
 私は結局、何を求めていたんだろう。
 ……馬鹿。
 どれだけ自責の念に駆られたって、あなたはもう戻ってこない。
 あの朗らかな笑みも、温かい胸も、もうどこにもない。でも、今でも時々口にしてしまう。

「あなたはどこにいるの?」

 その問いかけに答えてくれる人は、今はもうどこにもいない。



END

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