{
2008/09/11(木) }
この感情をどう表現したものだろうか。
握り締めた拳が熱を帯びてくる。
目尻が険しく吊り上がり、瞳はその対象を捉えて放さない。全身は小刻みに震え、食いしばる勢いで歯が折れてしまうのではないかと思えたほどだ。
放課後の教室。
肩を寄せ合う二人を、ドアの窓越しにじっと睨みつけながら、オレは言いようのない負の感情を覚えていた。
「あいつ……」
思わず言葉が口元から漏れる。
――渚さんという人がいながら……
今にも爆発しそうな感情を何とか堪えながら、オレはそいつへの殺意を剥き出しにしていた。
死に忘れた蝉が弱々しく鳴いている。
麻美大嶋学園に入学してから、オレは筋力トレーニングにやぶさかでなかった。夏休み中はトレーニングジムに通うと同時に、自主トレーニングも毎日のように行ってきた。
休み時間を告げるチャイムが校内に響く。
オレは保健室へと歩を進めた。目的の人物がそこにいることがわかっていたからだ。いや、正確には目的の人物と繋がりをもつ人物と言うべきだろうか。
歩きながら、半袖のカッターシャツから覗く自分の二の腕に目を向ける。黒々と艶やかに光る鍛え抜いた筋肉を見ていると、自然に頬が緩んだ。
『もっと大人になりなよ』
夜の公園でのあの出会いからおよそ半月。あの時の彼女の言葉が、今でもオレを捉えて放さなかった。
――いつまでもガキだと思うなよ。
力を誇示するように、廊下の壁を勢いよく蹴る。
その瞬間、廊下を賑わわせていた声がピタリと止んだ。
オレは睨みを効かせながら周囲をぐるりと見回す。
逃げるように教室に入っていく女。俯いてその場に立ち尽くす男。その光景を見ると、自分の強さが実感できるようで小気味がよかった。自分以外の人間全てが卑小な存在に見えた。
――オレは強くなった。チュウボウの頃のオレとは違うってところを、彼女に……
口元がニヤけてきていることに気付き、慌てて表情を引き締める。ポケットに手を突っ込み、肩をいからせる。ペッと廊下に唾を吐く。
オレは再び、廊下の中央を堂々と歩いていった。
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握り締めた拳が熱を帯びてくる。
目尻が険しく吊り上がり、瞳はその対象を捉えて放さない。全身は小刻みに震え、食いしばる勢いで歯が折れてしまうのではないかと思えたほどだ。
放課後の教室。
肩を寄せ合う二人を、ドアの窓越しにじっと睨みつけながら、オレは言いようのない負の感情を覚えていた。
「あいつ……」
思わず言葉が口元から漏れる。
――渚さんという人がいながら……
今にも爆発しそうな感情を何とか堪えながら、オレはそいつへの殺意を剥き出しにしていた。
死に忘れた蝉が弱々しく鳴いている。
麻美大嶋学園に入学してから、オレは筋力トレーニングにやぶさかでなかった。夏休み中はトレーニングジムに通うと同時に、自主トレーニングも毎日のように行ってきた。
休み時間を告げるチャイムが校内に響く。
オレは保健室へと歩を進めた。目的の人物がそこにいることがわかっていたからだ。いや、正確には目的の人物と繋がりをもつ人物と言うべきだろうか。
歩きながら、半袖のカッターシャツから覗く自分の二の腕に目を向ける。黒々と艶やかに光る鍛え抜いた筋肉を見ていると、自然に頬が緩んだ。
『もっと大人になりなよ』
夜の公園でのあの出会いからおよそ半月。あの時の彼女の言葉が、今でもオレを捉えて放さなかった。
――いつまでもガキだと思うなよ。
力を誇示するように、廊下の壁を勢いよく蹴る。
その瞬間、廊下を賑わわせていた声がピタリと止んだ。
オレは睨みを効かせながら周囲をぐるりと見回す。
逃げるように教室に入っていく女。俯いてその場に立ち尽くす男。その光景を見ると、自分の強さが実感できるようで小気味がよかった。自分以外の人間全てが卑小な存在に見えた。
――オレは強くなった。チュウボウの頃のオレとは違うってところを、彼女に……
口元がニヤけてきていることに気付き、慌てて表情を引き締める。ポケットに手を突っ込み、肩をいからせる。ペッと廊下に唾を吐く。
オレは再び、廊下の中央を堂々と歩いていった。
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