[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 僕は奴隷としてあまりに怠惰だった。
 首輪、羞恥責め、言葉責め、鞭、緊張感――そのひとつひとつは、紛れもない、女王様から享受した恩恵だ。女王様の行為によって僕は興奮し、欲情していた。不自由であるがゆえの自由。拘束されることによる安心感。甚振られることによる充足感。それらの全ては、女王様によって与えられていたものだ。僕は今日、そのことに気付けただろうか。いや……
 僕は本当に忠実になるべきものを、はき違えていた。それは自分の欲望ではなく、女王様だというのに……。あろうことか、女王様の隙を窺って覗きをするなんて……
 自責の念に駆られる。
 僕はいつの間にかエゴの奴隷と化していたのだ。女王様の奴隷――それは僕の勝手な思い上がりだったのかと思うと、悲しくてみっともなくて涙が出そうになる。
 そんな僕の背中に、勢いよく鞭の先が叩き付けられた。鋭い痛みに僕は絶叫する。
「あなたの見ていたのは……私と同じものじゃない」
 そう言って女王様は再度、僕に鞭を振るう。一発、二発、三発、四発――
 皮膚を抉る痛みは、僕の心の痛みだった。鞭とヒールの重みは、僕の心の重みだった。
 情けない。
 自分の不甲斐なさに声を上げることもできないまま、僕はお仕置きを受け続けた。背中に感じていた温かいものが地面に滴り落ちる。血だった。それは女王様の流した涙のように、僕には思えた。
 やがて鞭の雨が止む。僕はぐったりと地面に身を横たえていた。
 女王様がリードを手に、すっと僕の前にしゃがみ込む。身体と心の痛みが相俟って、僕は言葉を発することができない。夕日は今にも、海へとその姿を隠そうとしていた。
「あの夕日が沈みきったら――」
 穏やかだが厳しい口調で、女王様が言葉を発する。その口元には笑みが零れていた。
 僕は全身に冷水を浴びせかけられたような不安に襲われる。その後に放たれるだろう言葉が怖かった。どうしようもなく怖かった。
 ――女王様……。僕は、この愚奴は……
 唇が震え、視点が定まらない。あの夕日が沈んだら僕はきっと……
 『捨てられる』
 それがこんなにも恐ろしいことだということを、僕はこの時、全身で感じていた。
 女王様の眼光に耐え切れず、目を逸らす。女王様はそんな僕の髪を鷲掴みにし、ぐいと自分の目の前に顔をたぐり寄せる。女王様が再度口を開く瞬間、僕は思わず目を閉じていた。
「明日の太陽を待たなきゃね」
 ……予想外の言葉に、虚を突かれる。目を開けると、そこには女王様の笑顔があった。
「一緒に見る太陽は、もっと綺麗なはずよ」
 女王様はそこで一呼吸、間を置く。
「……また明日来ましょう」
 その言葉とともに女王様はすっと立ち上がり、僕を見下ろした。山の涼やかな風が吹き抜けた。
 茜色に染まった女王様の顔が、まぶしいばかりに輝いている。僕の瞳に涙が溢れ、視界が歪んでいく。
 僕はその足下にそっと擦り寄り、ヒールの爪先に口付けた。
 うやうやしく。敬愛の全てを込めて。



END

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コメント
この記事へのコメント
 山間に吹く涼やかな風を感じながら、……感動の涙が止まりません。今僕は女王様のヒールの爪先に口づけたままです。ずっと、この幸福に浸っていたい……。
 
 梨央様、今この感動をお伝えする言葉が見つかりません。こんなに人を幸せにする素敵な言葉を沢山お持ちの貴女が羨ましいです。ありがとうございました(涙)。
2011/11/05(土) 21:07 | URL | 次郎 #sWkHkw7g[ 編集]
十分です。
人を幸せにする語彙が豊富である。――次郎さんは、私をそう褒めてくださっていますね。
ありがとうございます。素直に嬉しいです。
ですが、私は逆に次郎さんが、感動を伝える言葉が見つからない、とおっしゃるこのコメントに、大変感動させられています。
さて、不思議なものですね。お互いを感動させている事実は変わらないなんて……
ですので、私を羨む必要なんてないんです(笑)
本作もまた、お涙を頂戴したようで――。本当に、いつもありがとうございます。大変光栄です。
2011/11/06(日) 21:13 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
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