[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 老人は、私が断るごとに沈んだ様子を見せた。
 しかし、先ほどまで彼にしていた気遣いの必要性は既に感じない。それどころか、話が進むにつれて、苛立ちばかりが増していくのだ。
 老人が再び声を大きくして身を乗り出す。必死なその姿が、今では滑稽に見えた。
「これはお勧めです。スイミング講座です。非の打ち所の無いスタイルをお持ちの奥様とて、油断は禁物です。二の腕やお腹など、普段はあまり目立たないところに限って、じわじわと弛みが出てくるものです。奥様だって、数年したらもう見るに耐えない姿になってしまう恐れもありますからね。この機会に――」
 もう最後まで話を聞く気にもなれなかった。
 あまりに失礼な言動の数々。一時はこの老人を上品だと感じた。仕事の苦労に同情した。好感すらもっていた。でも今は違う。こいつは、単に署名と捺印のみを欲する醜悪な死に損ないだ。そんな下等な人間を、どう敬えと言うのか。
 老人?――馬鹿げている。こんなやつは、ジジイで十分だ。
「もう結構です。お帰りください」
 と、私は突き放すように言い捨てる。ジジイは声を止め、身を震わせていた。よく見ると、そいつは涙を流していた。ゾクッと背筋に冷たいものが這い上がってくるような感覚に襲われる。それは、先ほど血塗れになったそいつの姿を想像した時の感覚に似ているような気がした。口元に笑みが零れてくるのが不思議だった。
 既にジジイに対する情は感じなかった。そいつは弱々しく立ち上がり、涙ながらに言葉を紡ぐ。
「どうしても、ご入会いただけませんか?」
「はい。結構です」
「……あの。実は私の会社にはノルマがありまして、今月が締めなんです。ですので……どうしても入っていただかないと困るんです」
 普段なら年老いた人からこんな話を聞かされたら、同情のひとつもしたに違いない。だが、今の私にはそんな気持ちは全く無かった。それどころか、このジジイの泣き落とし作戦のようなものが、やたらと癪に障った。そいつの顔が、まるで物乞いをする浮浪者のように感じられる。
「大変ですね。では、お引き取りください」
 冷淡な言葉だと承知していた。しかし、今や目の前にいる物乞いは鬱陶しく、邪魔な存在以外の何者でもなかった。既にまともな人間としてさえも認識できなくなっているほどなのだから。
「ちょ、ちょっとお待ちください!」
 と、物乞いが鞄から新しいパンフレットを取り出した。三冊目だ。前の二冊とは明らかにその様相が違っていた。
「これは上級会員だけの特別な講座で――」
 表紙は黒一色で覆われていた。下のほうに、銀の箔押しでロゴらしきものが小さく入っている。そのパンフレットは、まるでリビングの空間を切り取るかのような存在感を放っていた。
 私はそれに気を取られつつも、目の前の小汚い物乞いの存在がどうしても許せなかった。
「……どうぞ、お引き取りを」
「どうか……、どうか一目だけでも――」
「帰ってください」
 とにかくそいつが煩わしかった。

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