[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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「朝早くに申し訳ありません。さぞや驚かれたことでしょう」
 柔らかな口調で初めて老人が言葉を口にする。もちろん驚いた。憤りすら覚えた。さっきまでは。しかし今の自分からは、不思議とそんな感情は消えていた。
 曖昧に「はぁ……」と返事をする。それが精一杯だった。老人は言葉を続ける。
「私、この度、勧誘の目的でこちらへお伺いいたしました。鬱陶しいとお思いでしたら、今すぐ私を殴るなり蹴るなりして、血だらけにして追い出してくださって構いません」
 老人が軽い口調で言う。正直、勧誘になど全く興味はなかった。しかし、いくらなんでも暴力をふるってまで追い返す必要は感じない。だからと言って、そっけなく追い出すのも何となく躊躇われる。
 確かにさっきの横暴な呼び出しは異常だった。休日の優雅な睡眠を邪魔された。少し前までは怒りを抑えるのに精一杯だった。でも……
 目の前の老人は満面の笑みを浮かべていた。嫌味のない、可愛げすら感じさせるあどけない雰囲気。その表情を見ていると、なぜかそんなことはどうでもいい気になってしまう。
 今日は特に予定も入っていない。普段ならまだ眠っている時間帯だ。早朝の番組などにも興味はない。
 何の勧誘かはわからないが、気に入らなければ断ればいい。しつこい態度を取るようなら、その時こそは力ずくででも追い返せばいい。確かに私が女だという点では、一見その方法はリスクが大きい気もする。しかしだからといって、この非力そうな老人に負ける気など微塵も感じなかった。
「そんな物騒な。おかしな方ですね。わかりました。お話だけなら」
「いや、これはどうも。ありがとうございます。恐縮です」
 そう言うが早いか、老人の足が急にカクンと膝から曲がり、地面に倒れかかる。私はとっさに老人の身体を支えた。老人は気恥ずかしそうに「これは失礼」と苦笑する。
 元気に見えるとはいえ、彼は老体なのだ。炎天下での勧誘は、さぞ身体に負担がかかることだろう。
 同情の念が込み上げる。老人に肩を貸しながら、私は言った。
「ここでは何ですから、どうぞ中へ」
「あ、いえ。滅相もない。決して長居するつもりはございませんので」
「それは私も同じです。長居していただく気はありません」
「でしたら――」
「そんな状態で話せますか? それに玄関口で説明を聞くのは、意外と煩わしいものなんです」
 気遣いから出た言葉だった。しかし老人は弱々しい声で、なおも食い下がってくる。
「……でも、仮にも私は勧誘員です。どうにかしてご契約を頂きたいと思っています。ですので、私が言うのもおかしな話ですが、そんな貪欲な人間を家の中に招いたら、却って断り辛くも――」
「その時はあなたがさっきおっしゃったように、殴って、蹴って、血だらけにして追い返しますから」
 そう言って、老人と微笑み合った。その時突然、血塗れになった老人の姿が脳裏を過った。なぜか私の鼓動が高鳴る。その理由はわからない。すぐに我に返った。
 老人の顔を見る。
 彼は私の肩に凭れたまま、何度も何度も頭を下げていた。その柔らかな物腰に、私は好感すら覚えてきていた。

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