{
2008/07/09(水) }
「実は……」
と、僕は事情を話した。
特に秘密にしていたわけではなかった。ただ、自分の都合で渚ちゃんに付き合えないことが心苦しかったのだ。
――いや……
僕はまた自己嫌悪に陥る。今までここにいた理由は『付き合う』ためなんかじゃない。僕自身がここにいたかったからだ。そして僕が闘っていたのは、自分の中の醜いエゴだ。
――それを、あろうことか渚ちゃんにかこつけるなんて……
だから、僕はまた謝った。
彼女は事情を聞くなり、家に帰るよう僕に指示した。
もしかしたらこの時も、引きとめてもらえることを心のどこかで期待していたのかもしれない。己の欲深さが本当に腹立たしかった。
「じゃあ、明日はこれを着けて行きなさい」
と、彼女は僕の首に手を伸ばす。直接触らなくとも、それが首輪であることはすぐにわかった。僕にとっては、日頃からこれ以上ないほど使い慣れた代物だったから。
僕は戸惑いながらも、やはり彼女の気持ちを嬉しく思った。
「ありがとうございます」
と、口にする。
「それからこれも……」
言いながら彼女は、唐突に僕の陰茎を舐め回した。突然のことに驚き、僕は卑猥な声を上げて仰向けに寝転んでしまう。彼女の舌先が触れる度、彼女の口に呑み込まれる度、僕の下劣な愚息は血を漲らせた。欲情が頭を擡げてくる。
しかし一分も経たないうちに、その快楽は幕を閉じた。中途半端で放り出されたソレが、切なく震える。彼女は意味深な笑みを浮かべていた。
「正しい道を選べた良い子だからね。ご褒美。もしも、ただかまってほしいだけで声をかけたんだったら……蹴り殺されても文句は言えないよね」
明るくそう言った彼女の笑顔が怖かった。全身を冷たい感触に覆われる。彼女の言葉に返事もできず、僕は身を縮めた。ただ僕の汚棒だけは、欲求不満を主張するように堂々といきり立っていた。
もどかしさに身悶える。彼女は「ふっ」と冷笑し、しばし僕の様子を面白そうに眺めていた。
彼女は再びついと椅子に腰掛けると、
「ところで、実習先はどこなの?」
と、僕に問うた。
「あ、えっと……麻美大嶋学園っていう、私立の高校です」
「え? 麻美……大嶋?」
「はい。一応、名門の学校らしいです。ご存知ですか?」
「んー、行ったことはないけど、名前だけは。……明日から頑張ってね、先生」
そう言って彼女はニヤリと笑った。その笑みに少し違和感を覚える。しかし僕にとっては、彼女にもらった応援の言葉が何より嬉しかった。僕は「はい」と力強く返事をした。
服を着る。そして頭を深々と下げた後、僕は彼女の家を後にした。
相変わらず下半身を大きく膨らませたままで。
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と、僕は事情を話した。
特に秘密にしていたわけではなかった。ただ、自分の都合で渚ちゃんに付き合えないことが心苦しかったのだ。
――いや……
僕はまた自己嫌悪に陥る。今までここにいた理由は『付き合う』ためなんかじゃない。僕自身がここにいたかったからだ。そして僕が闘っていたのは、自分の中の醜いエゴだ。
――それを、あろうことか渚ちゃんにかこつけるなんて……
だから、僕はまた謝った。
彼女は事情を聞くなり、家に帰るよう僕に指示した。
もしかしたらこの時も、引きとめてもらえることを心のどこかで期待していたのかもしれない。己の欲深さが本当に腹立たしかった。
「じゃあ、明日はこれを着けて行きなさい」
と、彼女は僕の首に手を伸ばす。直接触らなくとも、それが首輪であることはすぐにわかった。僕にとっては、日頃からこれ以上ないほど使い慣れた代物だったから。
僕は戸惑いながらも、やはり彼女の気持ちを嬉しく思った。
「ありがとうございます」
と、口にする。
「それからこれも……」
言いながら彼女は、唐突に僕の陰茎を舐め回した。突然のことに驚き、僕は卑猥な声を上げて仰向けに寝転んでしまう。彼女の舌先が触れる度、彼女の口に呑み込まれる度、僕の下劣な愚息は血を漲らせた。欲情が頭を擡げてくる。
しかし一分も経たないうちに、その快楽は幕を閉じた。中途半端で放り出されたソレが、切なく震える。彼女は意味深な笑みを浮かべていた。
「正しい道を選べた良い子だからね。ご褒美。もしも、ただかまってほしいだけで声をかけたんだったら……蹴り殺されても文句は言えないよね」
明るくそう言った彼女の笑顔が怖かった。全身を冷たい感触に覆われる。彼女の言葉に返事もできず、僕は身を縮めた。ただ僕の汚棒だけは、欲求不満を主張するように堂々といきり立っていた。
もどかしさに身悶える。彼女は「ふっ」と冷笑し、しばし僕の様子を面白そうに眺めていた。
彼女は再びついと椅子に腰掛けると、
「ところで、実習先はどこなの?」
と、僕に問うた。
「あ、えっと……麻美大嶋学園っていう、私立の高校です」
「え? 麻美……大嶋?」
「はい。一応、名門の学校らしいです。ご存知ですか?」
「んー、行ったことはないけど、名前だけは。……明日から頑張ってね、先生」
そう言って彼女はニヤリと笑った。その笑みに少し違和感を覚える。しかし僕にとっては、彼女にもらった応援の言葉が何より嬉しかった。僕は「はい」と力強く返事をした。
服を着る。そして頭を深々と下げた後、僕は彼女の家を後にした。
相変わらず下半身を大きく膨らませたままで。
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