[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 ペンを持つ手が痛かった。
 時計の針は既に夕方四時半を回っていた。
 ここ数日、ずっと時間に追われている気分だ。明日から本番が始まるというのに、まだ書類の作成すら終わっていない。机に向かい、紙上にペンを忙しく走らせる。
 作業自体は機械的だ。しかし僕の頭は、手とは違う方向を見ていた。
 ――生徒たちは受け入れてくれるだろうか。他の先生方とはうまくやっていけるだろうか。そういえば、最初の挨拶の内容をまだ考えてなかったな。第一印象は肝心だ。何を話そうか……
 明日の様子を頭の中でシミュレーションしながら、しばしブツブツと呟いてみる。気付けばペンを持つ手は止まっていた。頭を何度も掻く。張り裂けそうな胸を押さえる。そしてまたペンを動かし始める。
 五時を回った。
 結局、書類はまだ一枚しか書き終えていない。頭の中の考えも一向にまとまる様子はない。気ばかりが急いて、一つ一つの作業が恐ろしく遅い。
 この日ほど、真面目で気弱な自分の性格を恨んだことはなかった。真剣に考えれば考えるほど、緊張や不安ばかりが膨れ上がっていくのだから。
 ペンを置き、「ふうっ」と大きなため息をつく。
 ――行かなくちゃ。
 気持ちを入れ替えて立ち上がる。外行きの服に着替え、おもむろに荷物を鞄につめていく。
 準備を整え終わった頃、部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。
「はい」
 と、返事をする。その声とほぼ同時にドアが静かに開かれる。
「あ……お兄ちゃん。これからまたバイト?」
 顔を出した美里の手には、二人分のコーヒーとガナッシュケーキの乗ったお盆が握られていた。明日の準備で忙しくしている僕を気遣い、わざわざ運んでくれたのだ。その気持ちが本当に嬉しかった。
 このよく気の利く妹も、最近はますます成長してきている。
 確かに背は小さくて華奢だし、体型はお世辞にもスタイル抜群だとは言えない。胸やお尻もそれほど目立たない。
 しかし彼女の目鼻立ちは端正で、ここ数年でみるみるうちに可愛らしい女性へと変化してきた。ケバイ化粧などには全く見向きもしないし、常に清潔感を保っている。それも嬉しい。
 実の兄である自分がこんなことを言うのはおかしいかもしれないが、彼女は本当に素敵な女性になったと思う。
 美里の心遣いにあらためて感謝する。しかし、僕にはあまり時間がなかった。
「うん。今日は八時くらいには帰りたいと思ってるんだけど」
「……そっか」
 そう言った美里の顔は、どこか不安そうな色を湛えていた。

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