{
2008/05/28(水) }
冷えた空気が火照った身体に心地よかった。
思った以上に疲れていたらしい。ゆっくりとお湯に浸かったことで、手足が幾分軽くなっているのが分かった。
浴室の照明を切って部屋に入り、すぐさまドレッサーへと向かう。ちょっと前までは、こんなバスローブ一枚の姿では寒くてたまらなかった。あらためて、季節の移り変わりの早さを実感する。
髪を頭の上で軽くまとめ、化粧水を手に取る。それをコットンに多めに含ませ、頬を丹念に撫でていく。化粧台の前には、たくさんの美容液や化粧品が並んでいる。それらを使ってお肌のケアに勤しむ。
一通り終わって顔のお肌チェックをしている頃、小さな携帯が私を呼んだ。掌の半分ほどの大きさのそれを手に取る。着信表示には大切な先輩の名前が浮かんでいた。
「はい!」
喜びと期待でつい大きな声を出してしまう。
「もしもし、由香利――」
甘くて優しい声が身を包む。
さっきまで感じていた疲れがまるで嘘だったかのように、身体中に元気が漲ってくる。
「凛先輩、こんばんは! おつかれさまです!」
「うん。今日は本当におつかれさま。正直、疲れたでしょ?」
「はい。でも、先輩から電話をもらったら急に元気になっちゃいました。」
通話口の向こう側から、苦笑にも似た笑い声が聞こえる。
「……どうだった?」
「そうですね。初めての仕事だったので、いろいろと新しい発見がありました。」
「どんな?」
凛先輩のその言葉を聞き、あらためて今日の出来事をふり返ってみる。その時になって初めて、今日の日記をまだつけていなかったことに気が付いた。そのことを考え込み、しばし沈黙してしまう。
再度、先輩の言葉が通話口から聞こえてきた。
「あ、いきなりそんなこと聞かれても困っちゃうね。ごめん。」
黙り込んでしまったことで心配をかけてしまったのかもしれない。慌てて口を開く。
「ごめんなさい。いろいろとあったんですけど。」
「一口では言えないよね。本当、無理しなくていいから。またゆっくり聞かせてね。」
「ありがとうございます。これからも頑張ります!」
「――ん……あの、さ……。……あまり気張らなくていいからね。」
「ご心配、ありがとうございます! 嬉しいです!」
「もし辛かったら――」
「全然! 今日もすごく楽しかったので!」
「……そう。……それならいい。これから一緒に仕事をする機会もあると思うから、よろしくね。」
「はい。こちらこそです。どうぞよろしくお願いします!」
そこで通話は途切れた。
凛先輩から直接電話してもらえたことで、心までリラックスできていることに気付く。あらためて先輩に対する感謝の気持ちが膨れ上がってくる。心地よい気分で机に向かい、私は一冊のノートを手に取った。新しく買った分厚いノートの表紙には『由香利ノート』と記してある。表ページの見開きに書いた『正当拷問自白法 執行記録』という大きな文字を見ていると、今日の仕事の光景がまざまざと脳裏に浮かんでくる。私は夢中になってノートにペンを走らせた。
ノートを書き終えた時、私の胸はなぜか大きな高鳴りを見せていた。
ふと時計を見上げる。針は深夜一時を指していた。
――こんなにドキドキして、眠れるのかな?……でも明日も仕事! 寝不足は美容の敵!
そんなことを考えながら、私はベッドに潜り込んだ。
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思った以上に疲れていたらしい。ゆっくりとお湯に浸かったことで、手足が幾分軽くなっているのが分かった。
浴室の照明を切って部屋に入り、すぐさまドレッサーへと向かう。ちょっと前までは、こんなバスローブ一枚の姿では寒くてたまらなかった。あらためて、季節の移り変わりの早さを実感する。
髪を頭の上で軽くまとめ、化粧水を手に取る。それをコットンに多めに含ませ、頬を丹念に撫でていく。化粧台の前には、たくさんの美容液や化粧品が並んでいる。それらを使ってお肌のケアに勤しむ。
一通り終わって顔のお肌チェックをしている頃、小さな携帯が私を呼んだ。掌の半分ほどの大きさのそれを手に取る。着信表示には大切な先輩の名前が浮かんでいた。
「はい!」
喜びと期待でつい大きな声を出してしまう。
「もしもし、由香利――」
甘くて優しい声が身を包む。
さっきまで感じていた疲れがまるで嘘だったかのように、身体中に元気が漲ってくる。
「凛先輩、こんばんは! おつかれさまです!」
「うん。今日は本当におつかれさま。正直、疲れたでしょ?」
「はい。でも、先輩から電話をもらったら急に元気になっちゃいました。」
通話口の向こう側から、苦笑にも似た笑い声が聞こえる。
「……どうだった?」
「そうですね。初めての仕事だったので、いろいろと新しい発見がありました。」
「どんな?」
凛先輩のその言葉を聞き、あらためて今日の出来事をふり返ってみる。その時になって初めて、今日の日記をまだつけていなかったことに気が付いた。そのことを考え込み、しばし沈黙してしまう。
再度、先輩の言葉が通話口から聞こえてきた。
「あ、いきなりそんなこと聞かれても困っちゃうね。ごめん。」
黙り込んでしまったことで心配をかけてしまったのかもしれない。慌てて口を開く。
「ごめんなさい。いろいろとあったんですけど。」
「一口では言えないよね。本当、無理しなくていいから。またゆっくり聞かせてね。」
「ありがとうございます。これからも頑張ります!」
「――ん……あの、さ……。……あまり気張らなくていいからね。」
「ご心配、ありがとうございます! 嬉しいです!」
「もし辛かったら――」
「全然! 今日もすごく楽しかったので!」
「……そう。……それならいい。これから一緒に仕事をする機会もあると思うから、よろしくね。」
「はい。こちらこそです。どうぞよろしくお願いします!」
そこで通話は途切れた。
凛先輩から直接電話してもらえたことで、心までリラックスできていることに気付く。あらためて先輩に対する感謝の気持ちが膨れ上がってくる。心地よい気分で机に向かい、私は一冊のノートを手に取った。新しく買った分厚いノートの表紙には『由香利ノート』と記してある。表ページの見開きに書いた『正当拷問自白法 執行記録』という大きな文字を見ていると、今日の仕事の光景がまざまざと脳裏に浮かんでくる。私は夢中になってノートにペンを走らせた。
ノートを書き終えた時、私の胸はなぜか大きな高鳴りを見せていた。
ふと時計を見上げる。針は深夜一時を指していた。
――こんなにドキドキして、眠れるのかな?……でも明日も仕事! 寝不足は美容の敵!
そんなことを考えながら、私はベッドに潜り込んだ。
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