{
2008/05/22(木) }
無惨な姿を晒した高岡と都村を美里が見つけたのは、校舎の陰に辿り着いた時だった。
「こ……これ……」
目を大きく見開く美里をよそに、彩香は苦笑いを浮かべていた。紗希は知らぬふりを装っている。
美里があらためて彩香のローファーに目を遣ると、彩香は高らかに笑った。そして、
「私たちの勝手。美里には関係ないよ。」
と、あっさりとした口調で言う。その言葉を聞いた紗希は「本当、ハイキック好きだよね……パンツ見えてたし……」と呆れた様子で呟く。
高岡の顔面は不自然に歪み、鼻や口から血を流していた。
美里はにっこりと笑うと都村の方へと目を移す。都村は身体を丸めて地面に転がっていた。その口からは大量の吐瀉物が吐き出されていた。彼女はすっと都村の身体を揺すり、吐瀉物を喉から流し出す。紗希はその様子をちらちらと気にしながら見ていた。
「喉が詰まるといけませんので、一応。」
と、美里が言うのを聞き、紗希は少しバツの悪い表情を見せる。
彩香はそんな紗希の様子をわざとらしく見ながら、薄ら笑いを浮かべていた。
「膝蹴り一撃でゲロだよ。紗希、何で瀕死遊びに参加しないわけ?」
彩香は皮肉っぽくそう紗希をからかう。紗希は黙ったままプイと目を逸らした。それを見て美里が「ふふっ」と笑う。
彩香は屈託のない笑顔を美里に向けながら、言葉を続ける。
「それにしても、ダブルSだなんて失礼なネーミングだと思わない?」
くすりと笑う美里。紗希は「別に……」と言って彩香と目を合わそうとしない。美里が口を開く。
「まぁ、いいんじゃないでしょうか? お二人ともドSですから。」
その言葉で三人は同時に笑い声を上げた。彩香が俄然元気になる。
「じゃあ、今日からはそのドSが三人だね。トリプルS! んー、まぁ悪くないかも。」
彩香がそう声高に言うのに対し、紗希は「いやだよ……」と漏らす。美里は困った顔をしていた。
「えと、あの……でも、私はイニシャルSじゃないんで……むしろ……」
その言葉に彩香と紗希が同時に反応する。彩香が美里の肩を掴んで目を輝かせる。
「あ、ミサトだからMか! うん。まさに名は体を表すだね。強いドMっていうのもいいじゃん。」
「いえあの、……ドMってほどでは……」
美里は苦笑いを浮かべるが、自覚しているのかそれ以上言葉を続けなかった。
「それよりさ……」
ふと立ち止まり、彩香が紗希の方へ視線を移す。
「紗希は何で黙って見てたわけ? あんたいっつもそういうとこあるよね?」
皮肉めいた口調だった。紗希はそれに落ち着いた声で答える。
「目をみれば分かるよ。自信がなきゃあんな目はできない。」
そう言って紗希はにっこりと笑う。美里の頬が赤くなる。
「それにさ……」
――気に入ったんだ。私たちを売ろうとしなかったその心意気が――
それは小さな声だった。
彩香は顔を目一杯に歪めて紗希を肘で小突く。紗希は照れたように俯いた。
「じゃあ、気晴らしにもう一人やっとこっか。まだ少し昼休みあるしさ。」
と、彩香が屈託なく笑う。紗希はまた呆れ顔でため息を一つ吐く。
美里はそんな二人の様子をくすくすと笑いながら見ていた。
「よし、そうと決まったら教室まで急ご。」
そう言って、彩香は足を早めた。
紗希と美里はお互いに顔を見合わせて笑い合い、彩香の後に続く。
校舎へと向かう三人の影が、地に長く伸びていた。
END
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「こ……これ……」
目を大きく見開く美里をよそに、彩香は苦笑いを浮かべていた。紗希は知らぬふりを装っている。
美里があらためて彩香のローファーに目を遣ると、彩香は高らかに笑った。そして、
「私たちの勝手。美里には関係ないよ。」
と、あっさりとした口調で言う。その言葉を聞いた紗希は「本当、ハイキック好きだよね……パンツ見えてたし……」と呆れた様子で呟く。
高岡の顔面は不自然に歪み、鼻や口から血を流していた。
美里はにっこりと笑うと都村の方へと目を移す。都村は身体を丸めて地面に転がっていた。その口からは大量の吐瀉物が吐き出されていた。彼女はすっと都村の身体を揺すり、吐瀉物を喉から流し出す。紗希はその様子をちらちらと気にしながら見ていた。
「喉が詰まるといけませんので、一応。」
と、美里が言うのを聞き、紗希は少しバツの悪い表情を見せる。
彩香はそんな紗希の様子をわざとらしく見ながら、薄ら笑いを浮かべていた。
「膝蹴り一撃でゲロだよ。紗希、何で瀕死遊びに参加しないわけ?」
彩香は皮肉っぽくそう紗希をからかう。紗希は黙ったままプイと目を逸らした。それを見て美里が「ふふっ」と笑う。
彩香は屈託のない笑顔を美里に向けながら、言葉を続ける。
「それにしても、ダブルSだなんて失礼なネーミングだと思わない?」
くすりと笑う美里。紗希は「別に……」と言って彩香と目を合わそうとしない。美里が口を開く。
「まぁ、いいんじゃないでしょうか? お二人ともドSですから。」
その言葉で三人は同時に笑い声を上げた。彩香が俄然元気になる。
「じゃあ、今日からはそのドSが三人だね。トリプルS! んー、まぁ悪くないかも。」
彩香がそう声高に言うのに対し、紗希は「いやだよ……」と漏らす。美里は困った顔をしていた。
「えと、あの……でも、私はイニシャルSじゃないんで……むしろ……」
その言葉に彩香と紗希が同時に反応する。彩香が美里の肩を掴んで目を輝かせる。
「あ、ミサトだからMか! うん。まさに名は体を表すだね。強いドMっていうのもいいじゃん。」
「いえあの、……ドMってほどでは……」
美里は苦笑いを浮かべるが、自覚しているのかそれ以上言葉を続けなかった。
「それよりさ……」
ふと立ち止まり、彩香が紗希の方へ視線を移す。
「紗希は何で黙って見てたわけ? あんたいっつもそういうとこあるよね?」
皮肉めいた口調だった。紗希はそれに落ち着いた声で答える。
「目をみれば分かるよ。自信がなきゃあんな目はできない。」
そう言って紗希はにっこりと笑う。美里の頬が赤くなる。
「それにさ……」
――気に入ったんだ。私たちを売ろうとしなかったその心意気が――
それは小さな声だった。
彩香は顔を目一杯に歪めて紗希を肘で小突く。紗希は照れたように俯いた。
「じゃあ、気晴らしにもう一人やっとこっか。まだ少し昼休みあるしさ。」
と、彩香が屈託なく笑う。紗希はまた呆れ顔でため息を一つ吐く。
美里はそんな二人の様子をくすくすと笑いながら見ていた。
「よし、そうと決まったら教室まで急ご。」
そう言って、彩香は足を早めた。
紗希と美里はお互いに顔を見合わせて笑い合い、彩香の後に続く。
校舎へと向かう三人の影が、地に長く伸びていた。
END
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