{
2008/04/24(木) }
黙り込んだ俺を横目に、彼女は冷静に携帯を操作していた。
――あれを見られてはまずい……
その気持ちだけが俺を急かす。しかし俺は押さえ込まれた腕と下腹部の鈍痛が相俟って、身動きを取ることすらままならない。いっそのこと誰かに助けを求めたいとも思ったが、何しろこんな田舎だ。人の姿など見えやしない。ましてやここは農道の片隅。人とすれ違うことなど、まず期待できないことだった。
やがて彼女は目的のものを見つけ出したのか、ニヤリと不吉な笑いを零した。
「ふーん。これ、どうするの?」
画面には、彼女がカエルを踏み潰す様がハッキリと映し出されていた。
俺は戸惑う。俺はどうするつもりだったのだろう。俺は……
その時、俺の中にある考えが浮かんだ。ここで彼女に屈しては警察行きは免れない。いや、むしろ俺は告発者であり、被害者なのだ。俺は、善意の第三者……
俺は大きく一つ息を吸い込むと、彼女を睨みつけた。そして精一杯低い声を振り絞った。
「立派な虐待現場ですよね、それ……。今の時代、うるさいですよ。それに加えて、俺への暴行だ。一緒に警察に行きますか? それともこれ、ブログにアップしましょうか?」
必死だった。
身体の震えが止まらない。その上、未だ俺を内部から突き上げてくる苦しみが、俺に立ち上がることを許さなかった。彼女を見上げながら、俺は彼女を威嚇する。何とかここで優位に立ちたい。それだけを考えていた。
しかし、彼女は表情一つ変えなかった。下目遣いの瞳が恐ろしく冷たい。微笑を浮かべた彼女の表情に、俺は動きを止められた。先ほど遠目で見た時より遥かに美しく端正な顔立ちに、俺は思わず魅入ってしまっていた。
彼女はゆっくりと立ち上がると、いきなりパンプスの爪先で俺の腹を蹴り上げた。
「ぐが……あ、あぁぐ……」
思った以上に重い蹴りが俺の鳩尾に喰い込み、蹲っていた俺の身体は仰向けに倒される。同時に彼女は自分の足を持ち上げ、俺を踏み潰すような仕草を見せる。彼女の足の裏が目前に迫る。俺は恐怖のあまり身動き一つ取ることができなかった。
彼女は足の裏を俺の目の前で固定したまま、くすくすと笑い声を上げた。彼女のパンプスの裏には、先ほど踏み殺したカエルの群れの残骸らしきものが所々にこびり付いていた。無惨なその破片を見ていると、さっきの彼女の行為がまざまざと瞼の裏に浮かんでくる。
――この女はヤバイ。頭のイカれた病人だ。絶対関わらない方がいい。
そう自分に言い聞かせる。しかしその時、彼女の笑い声は一段と大きくなっていた。
俺は腹立たしさから大きな声を上げる。
「何がおかしい! 今すぐ警察に、あっ……」
思わず喉の奥から卑猥な声を漏らしてしまう。彼女が持ち上げた足を俺の下半身へと移動し、ズボンの上から俺の陰茎を優しく撫で回し始めたからだ。
彼女の目は決して笑ってはいなかった。瞳の奥に冷酷な光を湛えている。そして口元だけがうっすらと笑いを浮かべているのだ。勝利を確信して薄ら笑いを浮かべ、今にも獲物に喰らいつこうとする殺気立った表情……とでも言ったらいいのだろうか。
俺は蛇に睨まれたカエルのように、動きを奪われていた。
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――あれを見られてはまずい……
その気持ちだけが俺を急かす。しかし俺は押さえ込まれた腕と下腹部の鈍痛が相俟って、身動きを取ることすらままならない。いっそのこと誰かに助けを求めたいとも思ったが、何しろこんな田舎だ。人の姿など見えやしない。ましてやここは農道の片隅。人とすれ違うことなど、まず期待できないことだった。
やがて彼女は目的のものを見つけ出したのか、ニヤリと不吉な笑いを零した。
「ふーん。これ、どうするの?」
画面には、彼女がカエルを踏み潰す様がハッキリと映し出されていた。
俺は戸惑う。俺はどうするつもりだったのだろう。俺は……
その時、俺の中にある考えが浮かんだ。ここで彼女に屈しては警察行きは免れない。いや、むしろ俺は告発者であり、被害者なのだ。俺は、善意の第三者……
俺は大きく一つ息を吸い込むと、彼女を睨みつけた。そして精一杯低い声を振り絞った。
「立派な虐待現場ですよね、それ……。今の時代、うるさいですよ。それに加えて、俺への暴行だ。一緒に警察に行きますか? それともこれ、ブログにアップしましょうか?」
必死だった。
身体の震えが止まらない。その上、未だ俺を内部から突き上げてくる苦しみが、俺に立ち上がることを許さなかった。彼女を見上げながら、俺は彼女を威嚇する。何とかここで優位に立ちたい。それだけを考えていた。
しかし、彼女は表情一つ変えなかった。下目遣いの瞳が恐ろしく冷たい。微笑を浮かべた彼女の表情に、俺は動きを止められた。先ほど遠目で見た時より遥かに美しく端正な顔立ちに、俺は思わず魅入ってしまっていた。
彼女はゆっくりと立ち上がると、いきなりパンプスの爪先で俺の腹を蹴り上げた。
「ぐが……あ、あぁぐ……」
思った以上に重い蹴りが俺の鳩尾に喰い込み、蹲っていた俺の身体は仰向けに倒される。同時に彼女は自分の足を持ち上げ、俺を踏み潰すような仕草を見せる。彼女の足の裏が目前に迫る。俺は恐怖のあまり身動き一つ取ることができなかった。
彼女は足の裏を俺の目の前で固定したまま、くすくすと笑い声を上げた。彼女のパンプスの裏には、先ほど踏み殺したカエルの群れの残骸らしきものが所々にこびり付いていた。無惨なその破片を見ていると、さっきの彼女の行為がまざまざと瞼の裏に浮かんでくる。
――この女はヤバイ。頭のイカれた病人だ。絶対関わらない方がいい。
そう自分に言い聞かせる。しかしその時、彼女の笑い声は一段と大きくなっていた。
俺は腹立たしさから大きな声を上げる。
「何がおかしい! 今すぐ警察に、あっ……」
思わず喉の奥から卑猥な声を漏らしてしまう。彼女が持ち上げた足を俺の下半身へと移動し、ズボンの上から俺の陰茎を優しく撫で回し始めたからだ。
彼女の目は決して笑ってはいなかった。瞳の奥に冷酷な光を湛えている。そして口元だけがうっすらと笑いを浮かべているのだ。勝利を確信して薄ら笑いを浮かべ、今にも獲物に喰らいつこうとする殺気立った表情……とでも言ったらいいのだろうか。
俺は蛇に睨まれたカエルのように、動きを奪われていた。
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