{
2008/04/19(土) }
足早に家路を急ぐ。丁度外灯の下まで来た時、ふと目に入ったものがあった。
――タバコ?
無造作に踏み消したような歪な形だった。普段ならこんなもの目にも留まらないはずだった。しかし今日はそれが妙に気になる。俺は足を止めてしゃがみ込み、そのタバコをよく見た。すると、タバコのフィルター部にうっすらと口紅らしきものが付いているのが分かった。それが女性の物だと思うと、なぜか俺の胸は大きく高鳴る。地面は濡れているのに、そのタバコはあまり濡れておらず、真新しい感じを受けた。
――捨てたばかりなんだろうか……
俺は無意識にそのタバコに手を伸ばしていた。
……ふと自分の行為の不自然さに気が付く。
別に掃除をするつもりなどないのだから、タバコを拾う理由がない。
――何考えてんだか。
自嘲し、俺はタバコから目を離すと、また足早に歩を進めた。
外灯の光が俺に届かなくなり、代わりに闇が俺を包み込んだ頃。
ふと目の前の外灯の下に人影らしきものが見えた。暗闇の中、俺は立ち止まる。相手を驚かせてしまうかもしれないという気持ちからだったかもしれない。不審者だと思われたくなかったからかもしれない。いや、その人物に幾許かの興味をもってしまったからかもしれない。
そこに見えたのは若い女性だった。そのルックスに、俺は目を奪われずにはいられなかった。
外灯の光を受けた彼女の大きな瞳がまず目に入った。鼻筋はすっと伸びており、唇は紅く輝いている。薄く塗られた化粧が、目鼻立ちの整った美しい顔をさらに際立たせていた。細身だがメリハリのある妖艶な肢体を、グレーのスーツが覆っている。スカートは短く、そこからすらりと伸びた脚を薄いストッキングが包んでいた。黒く艶やかなパンプスが、存分に大人の色気を醸し出している。
女性はどことなく冷たい雰囲気を漂わせていた。
彼女がなぜ外灯の下で立ち止まっているのかまでは、遠目から見ている俺には分からなかった。しかしそこでの彼女の行動は、ひどく異常なものに見えた。
彼女は外灯の下をじっと見つめながら、しきりにその足を地面に叩きつけたり、グリグリと踏み躙るような仕草を見せていたのだ。その表情は妙に艶かしい。俺は次第に、彼女に惹きつけられていった。
彼女はしばらくそうした行為を繰り返した後、再び湿った道を歩き出した。
俺は内心ホッとしたような、しかしもう少し彼女を見ていたかったような複雑な心境に駆られていた。
彼女が外灯の光から外れ、暗闇に覆われる頃、再び俺がさっき彼女の立っていた外灯の下に辿り着く。俺は彼女の先ほどの行為が気になり、ふと下を見る。そこで俺は、自分の目を疑った。
そこには原型を留めていないと思われる緑の物体が、平たく伸びていた。しかしそれが何かの生物であることは直感的に分かった。よく見てみると、緑色の中に赤や茶色の物体が混じっている。
「これは……か、カエル?」
戸惑いを隠せなかった。少しでも気持ちを落ち着けようと、周りを見回す。しかしそれは、逆に自分の気持ちをさらに混乱させる効果しか持ち合わせていなかった。
俺は驚きのあまり声を上げそうになる。それは決して大袈裟な反応ではなかったはずだ。
外灯の下には、他にも同じように平たく伸びた緑の物体が、無数に存在していたのだから。
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――タバコ?
無造作に踏み消したような歪な形だった。普段ならこんなもの目にも留まらないはずだった。しかし今日はそれが妙に気になる。俺は足を止めてしゃがみ込み、そのタバコをよく見た。すると、タバコのフィルター部にうっすらと口紅らしきものが付いているのが分かった。それが女性の物だと思うと、なぜか俺の胸は大きく高鳴る。地面は濡れているのに、そのタバコはあまり濡れておらず、真新しい感じを受けた。
――捨てたばかりなんだろうか……
俺は無意識にそのタバコに手を伸ばしていた。
……ふと自分の行為の不自然さに気が付く。
別に掃除をするつもりなどないのだから、タバコを拾う理由がない。
――何考えてんだか。
自嘲し、俺はタバコから目を離すと、また足早に歩を進めた。
外灯の光が俺に届かなくなり、代わりに闇が俺を包み込んだ頃。
ふと目の前の外灯の下に人影らしきものが見えた。暗闇の中、俺は立ち止まる。相手を驚かせてしまうかもしれないという気持ちからだったかもしれない。不審者だと思われたくなかったからかもしれない。いや、その人物に幾許かの興味をもってしまったからかもしれない。
そこに見えたのは若い女性だった。そのルックスに、俺は目を奪われずにはいられなかった。
外灯の光を受けた彼女の大きな瞳がまず目に入った。鼻筋はすっと伸びており、唇は紅く輝いている。薄く塗られた化粧が、目鼻立ちの整った美しい顔をさらに際立たせていた。細身だがメリハリのある妖艶な肢体を、グレーのスーツが覆っている。スカートは短く、そこからすらりと伸びた脚を薄いストッキングが包んでいた。黒く艶やかなパンプスが、存分に大人の色気を醸し出している。
女性はどことなく冷たい雰囲気を漂わせていた。
彼女がなぜ外灯の下で立ち止まっているのかまでは、遠目から見ている俺には分からなかった。しかしそこでの彼女の行動は、ひどく異常なものに見えた。
彼女は外灯の下をじっと見つめながら、しきりにその足を地面に叩きつけたり、グリグリと踏み躙るような仕草を見せていたのだ。その表情は妙に艶かしい。俺は次第に、彼女に惹きつけられていった。
彼女はしばらくそうした行為を繰り返した後、再び湿った道を歩き出した。
俺は内心ホッとしたような、しかしもう少し彼女を見ていたかったような複雑な心境に駆られていた。
彼女が外灯の光から外れ、暗闇に覆われる頃、再び俺がさっき彼女の立っていた外灯の下に辿り着く。俺は彼女の先ほどの行為が気になり、ふと下を見る。そこで俺は、自分の目を疑った。
そこには原型を留めていないと思われる緑の物体が、平たく伸びていた。しかしそれが何かの生物であることは直感的に分かった。よく見てみると、緑色の中に赤や茶色の物体が混じっている。
「これは……か、カエル?」
戸惑いを隠せなかった。少しでも気持ちを落ち着けようと、周りを見回す。しかしそれは、逆に自分の気持ちをさらに混乱させる効果しか持ち合わせていなかった。
俺は驚きのあまり声を上げそうになる。それは決して大袈裟な反応ではなかったはずだ。
外灯の下には、他にも同じように平たく伸びた緑の物体が、無数に存在していたのだから。
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