{
2008/04/18(金) }
いつの間にか雨は上がっていた。
傘を持ってきていなかった俺はホッと胸を撫で下ろした。いくつもの笑い声が渦巻く中、俺は立ち上がった。外は既に暗闇に覆われ、空には丸い朧月がぼんやりと顔を出していた。
「んじゃ、そろそろ行くわ。」
仲間たちはまだ話に夢中になっている。唯一、俺の言葉に気付いた清水だけが一言「おう」と応えた。その言葉を背中で聞いた後、俺は帰路についた。
サークル仲間とこうやって馬鹿話に華を咲かせたのは久しぶりだった。
以前は熱心に顔を出していたものだが、最近は顔を合わせる機会すらあまりなかった。一応、ダンスサークルという名目をもっている。しかしそれは表向きの姿で、実際は気の合う仲間同士が集って作ったお友達集会みたいなものだ。特に目標もなければ活動もほとんどしていない。集まってやることと言えば、さっきのように意味のない雑談をするか、飲みに行くかくらいのものだ。活動日すら決まっていない。そもそも中学からの付き合いである清水に誘われなければ、このサークルの存在自体知ることはなかっただろう。
そんな自由なサークルだからこそいつでも気ままに顔を出せる。その特質を俺は決して嫌ってはいなかった。しかし逆に言えば、これといった表立った活動がないため、気が付くと足が遠退いてしまうのだ。
俺にはこれといった趣味がない。生活費は、ひと月ごとに親から生活に困らない程度の仕送りがあるから、バイトもしていない。だから今日も特に用事がある訳ではなかったが、講義が終わったその足で帰路につこうとしていたのだ。それが最近の俺の日常になっていた。そこへ突然の大雨。
足止めを喰らわなかったら、今日このサークルへ足が向くこともなかっただろう。そして、それは俺だけではなかった。同じように足止めを喰らった懐かしい顔ぶれが次々と集会場へと入ってきた。それぞれが久しぶりに会ったということもあり、集まった皆はそれを懐かしんだ。他愛もない話がどんどんと膨れ上がり、気付けば男ばかりの雑談会が開かれていた。
――こんなに夢中になって話をしたのは本当に久しぶりだ。
そう考えると、天気予報を裏切って勢いよく降り出してくれたあの大雨に少しだけ感謝の気持ちすら芽生えてくるから不思議だ。さっきまでの余韻を楽しんでいるうちに、電車は俺の降車する駅にまで着いていた。
電車を降りてから家まではほぼ農道の一本道だ。アスファルトがまっすぐに伸びた両脇を、だだっ広い田んぼが挟み込んでいる。長い道のりであるにも関わらず、設置された外灯はほんのわずかだ。
雨上がりを知らせるかのようなカエルの合唱がうるさいくらいに辺りを包み込んでいた。
これも田舎の良さだと言えばそれまでかもしれない。しかし俺はここを通る度に、東京の大学に憧れていた頃を思い出さずにはいられなかった。
俺は雨上がり独特のこのアスファルトの臭いがどうも好きではなかった。
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傘を持ってきていなかった俺はホッと胸を撫で下ろした。いくつもの笑い声が渦巻く中、俺は立ち上がった。外は既に暗闇に覆われ、空には丸い朧月がぼんやりと顔を出していた。
「んじゃ、そろそろ行くわ。」
仲間たちはまだ話に夢中になっている。唯一、俺の言葉に気付いた清水だけが一言「おう」と応えた。その言葉を背中で聞いた後、俺は帰路についた。
サークル仲間とこうやって馬鹿話に華を咲かせたのは久しぶりだった。
以前は熱心に顔を出していたものだが、最近は顔を合わせる機会すらあまりなかった。一応、ダンスサークルという名目をもっている。しかしそれは表向きの姿で、実際は気の合う仲間同士が集って作ったお友達集会みたいなものだ。特に目標もなければ活動もほとんどしていない。集まってやることと言えば、さっきのように意味のない雑談をするか、飲みに行くかくらいのものだ。活動日すら決まっていない。そもそも中学からの付き合いである清水に誘われなければ、このサークルの存在自体知ることはなかっただろう。
そんな自由なサークルだからこそいつでも気ままに顔を出せる。その特質を俺は決して嫌ってはいなかった。しかし逆に言えば、これといった表立った活動がないため、気が付くと足が遠退いてしまうのだ。
俺にはこれといった趣味がない。生活費は、ひと月ごとに親から生活に困らない程度の仕送りがあるから、バイトもしていない。だから今日も特に用事がある訳ではなかったが、講義が終わったその足で帰路につこうとしていたのだ。それが最近の俺の日常になっていた。そこへ突然の大雨。
足止めを喰らわなかったら、今日このサークルへ足が向くこともなかっただろう。そして、それは俺だけではなかった。同じように足止めを喰らった懐かしい顔ぶれが次々と集会場へと入ってきた。それぞれが久しぶりに会ったということもあり、集まった皆はそれを懐かしんだ。他愛もない話がどんどんと膨れ上がり、気付けば男ばかりの雑談会が開かれていた。
――こんなに夢中になって話をしたのは本当に久しぶりだ。
そう考えると、天気予報を裏切って勢いよく降り出してくれたあの大雨に少しだけ感謝の気持ちすら芽生えてくるから不思議だ。さっきまでの余韻を楽しんでいるうちに、電車は俺の降車する駅にまで着いていた。
電車を降りてから家まではほぼ農道の一本道だ。アスファルトがまっすぐに伸びた両脇を、だだっ広い田んぼが挟み込んでいる。長い道のりであるにも関わらず、設置された外灯はほんのわずかだ。
雨上がりを知らせるかのようなカエルの合唱がうるさいくらいに辺りを包み込んでいた。
これも田舎の良さだと言えばそれまでかもしれない。しかし俺はここを通る度に、東京の大学に憧れていた頃を思い出さずにはいられなかった。
俺は雨上がり独特のこのアスファルトの臭いがどうも好きではなかった。
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