{
2008/03/31(月) }
今やオレは二人の魅力の虜となっていた。
気を失っている風を装いながらも、オレは彼女たちから目を離すことができなかった。
「私、渚。さっきは危ないところをありがとう。」
茶髪を靡かせながら渚が呟く。その言葉に、ボブカット女は虚をつかれたような顔をする。
「……礼を言うのは、私の方だよ。」
二人は互いに顔を綻ばせ、くすりと笑い合う。
ボブカット女は少し照れながら「ありがとう」と口にし、そのまま渚に背を向けた。
渚は笑顔を浮かべ、大きく頷いた。そして再びボブカット女に話しかける。
「あの。あなたの名前は?」
ボブカット女が再びふり返る。
「紗希。麻美大嶋に行ってるんだ。良かったら、今度遊びに来なよ。」
渚の笑顔に応えるように、紗希はにっこりと笑顔を返した。
そういえば、あの華やかなダークレッドの制服は、麻美大嶋学園のものだった。
「うん。また会おうね。ところで……」
渚がふと立ち止まり、口篭もる。それが気になったのか、紗希もまた足を止める。
やがて決心したように、渚が声を出す。
「何で、あんなに強いのに黙ったままでいたの?」
その質問に、紗希は再び小さく笑った。
「私立だから。受験の時の癖かな。良い子にしてたからさ。それに、あなた強かったし。」
オレは『受験』という言葉にピクリと反応した。再びオレの中の価値観が大きく揺れ動くのを感じる。
自分の目標とは? 自分の生き方とは? 常に何かに逆らって生きることを決めた意味とは? 己の信念とは? オレ自身の生き方とは? そして……本当に信頼すべきものとは?
様々な葛藤が渦巻く。あれほどまでに嫌っていた、世間の波や大きな圧力。それに流されたり潰されたりするのは弱い男の証だと思っていた。先輩二人について行くことが、オレの道だと思っていた。世の中全てに牙をむいて生きることを決めた。
そんなオレは今、こうして女子高生によって完膚なきまでに叩きのめされ、怯え、気絶したふりをしている。
――本当の強さとは……?
渚は紗希の答えに軽く頷き、「そっか」と明るく声を出した。渚はベンチに向かい、そこにある学生鞄を持つ。おそらく自分のものだろう。女の子らしい可愛いストラップがついている。オレたちに向かってくる前に、邪魔だから置いておいたようだ。
二人はそれぞれに帰ろうとして、ふと、倒れ込んだオレの横でピタリと足を止める。
――気付かれた!? くそっ……許してくれ……
気絶したふりをしながら動揺するオレに向かって、渚が優しい口調で語りかけた。
「君も、もっと大人になりなよ。そしたら、調教してあげてもいいよ。」
調教という言葉に、オレは何故か心の奥を強く刺激されるような思いがした。温かく、そして力強い声。それはオレの脳内に強く、本当に強く響いた。
――この人には敵わない。
そう自覚した瞬間だった。紗希が続けて言葉をつなぐ。
「分かってると思うけど、次に馬鹿やったら……」
オレは必死で、何度も首を縦に振った。そんなオレの姿を見ながら、二人はにっこりと微笑んだ。
その笑顔は、驚くほど無邪気で柔らかかった。目を奪われずにはいられないほどに……
半年後、オレは麻美大嶋学園の門をくぐった。
真新しいダークレッドの制服を身に着けて。
END
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気を失っている風を装いながらも、オレは彼女たちから目を離すことができなかった。
「私、渚。さっきは危ないところをありがとう。」
茶髪を靡かせながら渚が呟く。その言葉に、ボブカット女は虚をつかれたような顔をする。
「……礼を言うのは、私の方だよ。」
二人は互いに顔を綻ばせ、くすりと笑い合う。
ボブカット女は少し照れながら「ありがとう」と口にし、そのまま渚に背を向けた。
渚は笑顔を浮かべ、大きく頷いた。そして再びボブカット女に話しかける。
「あの。あなたの名前は?」
ボブカット女が再びふり返る。
「紗希。麻美大嶋に行ってるんだ。良かったら、今度遊びに来なよ。」
渚の笑顔に応えるように、紗希はにっこりと笑顔を返した。
そういえば、あの華やかなダークレッドの制服は、麻美大嶋学園のものだった。
「うん。また会おうね。ところで……」
渚がふと立ち止まり、口篭もる。それが気になったのか、紗希もまた足を止める。
やがて決心したように、渚が声を出す。
「何で、あんなに強いのに黙ったままでいたの?」
その質問に、紗希は再び小さく笑った。
「私立だから。受験の時の癖かな。良い子にしてたからさ。それに、あなた強かったし。」
オレは『受験』という言葉にピクリと反応した。再びオレの中の価値観が大きく揺れ動くのを感じる。
自分の目標とは? 自分の生き方とは? 常に何かに逆らって生きることを決めた意味とは? 己の信念とは? オレ自身の生き方とは? そして……本当に信頼すべきものとは?
様々な葛藤が渦巻く。あれほどまでに嫌っていた、世間の波や大きな圧力。それに流されたり潰されたりするのは弱い男の証だと思っていた。先輩二人について行くことが、オレの道だと思っていた。世の中全てに牙をむいて生きることを決めた。
そんなオレは今、こうして女子高生によって完膚なきまでに叩きのめされ、怯え、気絶したふりをしている。
――本当の強さとは……?
渚は紗希の答えに軽く頷き、「そっか」と明るく声を出した。渚はベンチに向かい、そこにある学生鞄を持つ。おそらく自分のものだろう。女の子らしい可愛いストラップがついている。オレたちに向かってくる前に、邪魔だから置いておいたようだ。
二人はそれぞれに帰ろうとして、ふと、倒れ込んだオレの横でピタリと足を止める。
――気付かれた!? くそっ……許してくれ……
気絶したふりをしながら動揺するオレに向かって、渚が優しい口調で語りかけた。
「君も、もっと大人になりなよ。そしたら、調教してあげてもいいよ。」
調教という言葉に、オレは何故か心の奥を強く刺激されるような思いがした。温かく、そして力強い声。それはオレの脳内に強く、本当に強く響いた。
――この人には敵わない。
そう自覚した瞬間だった。紗希が続けて言葉をつなぐ。
「分かってると思うけど、次に馬鹿やったら……」
オレは必死で、何度も首を縦に振った。そんなオレの姿を見ながら、二人はにっこりと微笑んだ。
その笑顔は、驚くほど無邪気で柔らかかった。目を奪われずにはいられないほどに……
半年後、オレは麻美大嶋学園の門をくぐった。
真新しいダークレッドの制服を身に着けて。
END
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この記事へのコメント
おおー! 意外な展開でしたーo(^-^)o
毎日楽しくみせてもらってました!
ありがとうございます!
三月、四月と なかなか忙しい時期になってきましたね!
忙しい(*´ο`*)といっても、漢字のように、毎回、言ってますが、 (心)は (亡)くさない ように 心掛けたいものです★
2008/03/31(月) 02:50 | URL | あゆみ #-[ 編集]
最後までご覧いただき、有難うございました。温かいご感想が身に染みます。
楽しんでいただけて何よりです。よろしければ今後もぜひ遊びに来てやってください。
あと数時間で三月も終わりですね。
年度初めでいろいろと大変な時期だと思いますが、どうぞご自愛ください。
「心」は「亡」くさないように。大切な心がけだと思います。私も見習っていかねば(汗)
連載中はたくさんのコメントにいつも励まされました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
楽しんでいただけて何よりです。よろしければ今後もぜひ遊びに来てやってください。
あと数時間で三月も終わりですね。
年度初めでいろいろと大変な時期だと思いますが、どうぞご自愛ください。
「心」は「亡」くさないように。大切な心がけだと思います。私も見習っていかねば(汗)
連載中はたくさんのコメントにいつも励まされました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
2008/03/31(月) 22:08 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]

