{
2008/02/26(火) }
シートベルト着用のサインが解除された。
窓の外は今や澄み渡った水色一色で彩られ、見下ろした先にある真っ白な雲はまるで絨毯のように飛行機の下をくまなく覆っていた。
到着予定時刻を告げる機長のアナウンスを上の空で聞きながら、俺は手持ちの鞄に手を入れる。
「久しぶりだよね。旅行に行くの。」
隣に座っている彼女がふいに声をかけてくる。
背の小さな彼女だ。おまけに高校生と言っても違和感がないほどの幼い顔立ち。清楚で可愛らしい服装は、彼女の趣味だ。スカートから覗く生足に、俺は性欲を刺激される。
付き合い始めてまだ一ヶ月。セックスもまだだ。加えて彼女が処女だということも最近になって知った。厄介な女に捕まったもんだと自嘲する。俺は手を止め、顔だけを彼女の方に向ける。
「行き先、ハワイじゃなくてごめんな。」
少し俯いたまま、俺は小さな声で応えた。
「ううん、いいの。あー、やっぱり気にしてたんだ。」
力なく応える俺を励ますように、彼女は明るく声をかける。
直前まで計画していたハワイ旅行が、予算の関係で国内に変更になったのだ。自分の不甲斐なさに、俺はほとほと呆れかえったものだった。彼女も残念だったろうに、むしろこうして励ますような言葉を俺にかける。きっと、俺にはもったいないくらいの素晴らしい彼女なのだろう。
「私は昭夫くんと一緒に旅行が出来ること自体が嬉しいの。」
そう口では言うけれど、彼女はやはり残念そうな表情だった。俺は力なく項垂れ、彼女から目を逸らすような仕草をしてみせる。
「ありがとな、春海。」
俺の言葉に、彼女はまた屈託のない笑みを浮かべた。
――そろそろセッティングしないとな……
俺は鞄に手を突っ込んだまま、その中にあるものをぐっと握った。鞄に少しだけ開けた穴からそっとレンズを覗かせる。最新式の撮影用デジタルビデオカメラのレンズは小型で、パッと見それと気付くものはまずいないだろう。
セッティングを終えた俺はひと息つき、柔らかい背もたれに身体を預けた。
機内をぐるりと見回す。いつも思うが、スチュワーデス――最近はキャビンアテンダントなどとも呼ぶらしいが、俺にはどうもまだ馴染めない――はどうしてこうも美人揃いなのだろうか。皆が皆好みというわけではもちろんないが、少なくとも目に痛いようなブサイクは未だかつて見たことがない。間違いなく面接時には顔審査があるのだろう。そんなことを考え、俺は口元だけで笑った。
――さて、今日はいい絵が撮れるか。
ここからが俺の勝負なのだ。行為がバレてしまうなどというミスは当然論外。いかにしてヌケる絵を撮るか。それが俺の最大の目的なのだ。
春海はうとうとと眠りの世界へ入っている。彼女は本当によく空気を読んでくれる。俺は再び、皮肉な笑いを浮かべた。
機内が安定し始めて数分が経過した頃、スチュワーデスが毛布を配りに来た。それは、俺にとっては仕事の始まりの合図。
鞄のレンズを上向きにして、足元にそっと置く。リモコンを手に忍ばせ、録画用のスイッチにそっと指をかけた。
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窓の外は今や澄み渡った水色一色で彩られ、見下ろした先にある真っ白な雲はまるで絨毯のように飛行機の下をくまなく覆っていた。
到着予定時刻を告げる機長のアナウンスを上の空で聞きながら、俺は手持ちの鞄に手を入れる。
「久しぶりだよね。旅行に行くの。」
隣に座っている彼女がふいに声をかけてくる。
背の小さな彼女だ。おまけに高校生と言っても違和感がないほどの幼い顔立ち。清楚で可愛らしい服装は、彼女の趣味だ。スカートから覗く生足に、俺は性欲を刺激される。
付き合い始めてまだ一ヶ月。セックスもまだだ。加えて彼女が処女だということも最近になって知った。厄介な女に捕まったもんだと自嘲する。俺は手を止め、顔だけを彼女の方に向ける。
「行き先、ハワイじゃなくてごめんな。」
少し俯いたまま、俺は小さな声で応えた。
「ううん、いいの。あー、やっぱり気にしてたんだ。」
力なく応える俺を励ますように、彼女は明るく声をかける。
直前まで計画していたハワイ旅行が、予算の関係で国内に変更になったのだ。自分の不甲斐なさに、俺はほとほと呆れかえったものだった。彼女も残念だったろうに、むしろこうして励ますような言葉を俺にかける。きっと、俺にはもったいないくらいの素晴らしい彼女なのだろう。
「私は昭夫くんと一緒に旅行が出来ること自体が嬉しいの。」
そう口では言うけれど、彼女はやはり残念そうな表情だった。俺は力なく項垂れ、彼女から目を逸らすような仕草をしてみせる。
「ありがとな、春海。」
俺の言葉に、彼女はまた屈託のない笑みを浮かべた。
――そろそろセッティングしないとな……
俺は鞄に手を突っ込んだまま、その中にあるものをぐっと握った。鞄に少しだけ開けた穴からそっとレンズを覗かせる。最新式の撮影用デジタルビデオカメラのレンズは小型で、パッと見それと気付くものはまずいないだろう。
セッティングを終えた俺はひと息つき、柔らかい背もたれに身体を預けた。
機内をぐるりと見回す。いつも思うが、スチュワーデス――最近はキャビンアテンダントなどとも呼ぶらしいが、俺にはどうもまだ馴染めない――はどうしてこうも美人揃いなのだろうか。皆が皆好みというわけではもちろんないが、少なくとも目に痛いようなブサイクは未だかつて見たことがない。間違いなく面接時には顔審査があるのだろう。そんなことを考え、俺は口元だけで笑った。
――さて、今日はいい絵が撮れるか。
ここからが俺の勝負なのだ。行為がバレてしまうなどというミスは当然論外。いかにしてヌケる絵を撮るか。それが俺の最大の目的なのだ。
春海はうとうとと眠りの世界へ入っている。彼女は本当によく空気を読んでくれる。俺は再び、皮肉な笑いを浮かべた。
機内が安定し始めて数分が経過した頃、スチュワーデスが毛布を配りに来た。それは、俺にとっては仕事の始まりの合図。
鞄のレンズを上向きにして、足元にそっと置く。リモコンを手に忍ばせ、録画用のスイッチにそっと指をかけた。
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