[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  〜美しき女性たちの狂気〜
 騒がしく行内へと突入してきた警察官は、戸惑いの表情を隠しきれなかった。
 無理もない。目の前にあったのは、ボロ雑巾のようになった犯人と、返り血で全身を真っ赤に染めた人質だったのだから。
 警察官が突入してきたのは、ちょうど結衣が竹内のコード用結束バンドを外し終えた時だった。
 竹内が瞼の切れた目で結衣を見る。結衣は妖艶な笑みを浮かべながらそっと呟いた。
「バイバイ。」
「……あぁ。」
 竹内は結衣の笑みに応えるように口の端を不器用に持ち上げる。そんな二人の間を、裂くように警察官が割って入った。多くの警察官が狭いロビーへ次々となだれ込んでくる。一つの声が行内に響いた。
「全員動くな!」
 警察官はそれぞれに銃を構えていた。
 田中はこの騒ぎで意識を取り戻したようだった。倒れ込んだままで、田中は激しく咳き込む。事態を把握するのに時間がかかっている様子だった。竹内は田中が死んでいなかったことに安堵した。
 ――誰でも死ぬのは怖い……か。
 その時、突然結衣が声を張り上げた。
「助かりました! あの犯人二人が、急に仲間割れを始めて!」
 返り血に塗れた姿で、必死に訴えかける。それを聞いた田中がビクッと身体を震わせた。怯えたその顔には、彼女への恐れの感情がはっきりと浮かんでいた。それでも必死で未だ血の滴る口を動かし、抗議の意志を見せる。
「ち……違う! あ、あの女……――!!――ううっ……」
 田中の言葉が急に途切れる。
 竹内にははっきりと見えた。結衣が冷たく突き刺さるような視線を田中に送っているのが。
 ――役者が違うな。
 竹内は自嘲し、自分たちの負けをあらためて噛み締めていた。そして静かに口を開く。
「……間違いありません。」
 その途端、田中がとても信じられないといった視線を竹内に向けた。
 やがて田中は、悄然と項垂れた。
 警察は事実を確認――正確には誤認だが――すると同時に、竹内と田中に手錠をかけた。
「押し込み、二名確保! 現逮!」
 その言葉を機に、警察官は結衣と気絶している女に走り寄る。
「人質二名、無事確認!」
「タンカ、急げ!」
 警官の言葉に、竹内は思わず吹き出しそうになる。
 ――警察も、まさかタンカを必要とするのが犯人の方だなんて、想像もしてなかっただろうな……
 妙におかしく思えて、竹内は耐え切れずこっそりと笑った。ふいに後ろから視線を感じ、結衣の方を振り返る。すると、彼女もまた密かに口元を緩ませていた。
 二人の視線が交差する。
 それが竹内と結衣の、最後の時間だった。


 竹内と田中が、それぞれタンカに乗せられた。
 運ばれる最中、気絶していた女性銀行員が身体を起こすのを竹内は見た。彼女はふらつく足で結衣に近寄り、耳元で何か囁いている。
 竹内には、その言葉が想像できた。

「――結衣さん。ありがとう。」

 おそらく、正解だろう。
 大輪の花の芽がほころぶように、結衣が微笑んだから。



END

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