[18禁] 逆リョナ小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
 その時、それがはっきりと見えた。同時に竹内は、結衣が言わんとしていることを即座に理解した。
 竹内の目の端には、田中が撃ち殺した血塗れの男性銀行員が映っていた。
 竹内は顔を顰めた。視線を結衣に戻した時、結衣の瞳は乾いていた。しかし、それはどれだけの涙よりも悲しみを感じさせた。
 結衣は、再び膝を大きく持ち上げる。
 竹内は覚悟を決めた。
「怖いな。本当に。」
 不思議なことに、覚悟を決めた途端に心が落ち着いた。
「嫌だって言ってもやるんだろ。その前に……聞かせてくれないか。」
 竹内は低く、重い口調で結衣に問いかけた。結衣は足をゆっくりと下ろし、竹内の睾丸にヒールを当てて固定する。
「いいよ。」
 結衣はそう言って、ヒールの先で竹内の睾丸を軽く突く。
「悪いな。感謝するよ。」
 竹内にはもはや迷いはなかった。
「あんたが俺たちから銃を奪った時、あんたは俺たちじゃなくて防犯カメラを狙った。」
 竹内の言葉を聞き、結衣が笑う。そこに否定の意は感じられなかった。
 竹内が続ける。
「あれは、こうなることを記録されたくなかったからだろ?」
 結衣は少し照れたような顔で微笑み、やがてコクリと頷いた。
 竹内は喉に深く刺さった魚の骨が取れたような気分だった。あの時の彼女の行動。そこで自分が抱いた違和感の正体が今、明らかになったのだ。そして、それが一つの動かし得ない事実を表しているということに気付いた時、竹内にはもはや思い残すことはなくなっていた。
 そう。彼女にはこうなることが分かっていたのだ。俺たちとこの冷たい密室に入ったその時から、彼女にはこの結果が見えていた。俺たちがボコボコにされるこの結果が……
 竹内はさらに質問を加えた。
「ハンドガンを落としたのも、田中を油断させ、時間を稼ぐための演技。あいつにあんたが追いつめられたのも、事務机に近付いて弾倉を隠すため……。そうだな?」
 竹内の想像通り、いずれの答えもイエスだった。
 結衣が瞳を輝かせて竹内を見る。
「……見直したわ。ちなみに、その時の鍵はここ。」
 あどけない笑みを浮かべながら、結衣は自分のスカートのポケットに視線を送る。
 竹内は完全なる敗北を感じた。しかし何故か、とても清々しい気分になっているのだった。
 そんな竹内を見ながら、結衣が口を開く。
「ねぇ。あなた『ブービートラップ』って、知ってる?」
「……あぁ。」
「そういうこと。まぬけがひっかかる罠よ。」
 そう言って結衣は子どものように笑った。

Back | Novel index | Next
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する