[18禁] 逆リョナ小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
 一発の銃声が、その場の空気を切り裂いた。
 少しの間をおき、状況を把握した男女の叫び声が辺りに響き渡った。再び銃声が鳴り、弾丸が一人の女の足元を掠めた。
 あっという間の出来事に、その場にいる全員が凍りついた。皆が銃を持った男に目を奪われる。その間に、もう一人の男が静かに受付へと歩いていく。彼は両手に一つずつ、大きなバッグを持っていた。
「静かにしてください……」
 低い声が静まり返った銀行内に響く。既に抵抗する者は誰もいなかった。
「金を詰めてください。このバッグいっぱいにね。」
 彼は受付の女性銀行員に、冷静にそう告げた。
 真冬だとはいえ、行内は温度調節が施してあるため適切な温度が保たれている。しかしそれは、目出し帽をかぶり、ダウンジャケットを着込んだ彼らにとっては暑苦しいものでしかなかった。目出し帽は目鼻口の全てが露出したタイプのものではあったが、それでも中には汗がじわじわと滲んでくる。
 長身の男はサングラスをかけていた。大きめに横に広がった目穴の両脇からテンプルを差し込んでいる。サングラスで隠れた肌の湿りを、彼はハンカチでしきりに拭っていた。
 ――てっとり早く事を済ませないとな……
 手にした二つの黒いバッグを受付の女に手渡す。受け取った女の手は震えていた。女がバッグを手に席を立った時、もう一度銃声が大きく鳴り響いた。
 悲鳴が行内を包み込み、銀行員も客も一斉にその場にしゃがみこんだ。バッグを持った女性銀行員も同じように、その場にへたり込んでいた。
「……おかしな真似をしたら、お前らもこいつみたいになっちゃうよ。」
 後ろで銃を構えている方の男が、ネチネチとした声でそう告げる。背丈が小さめのその男の体型は、小太りと言ってもよかった。彼もまた目出し帽をかぶり、身体にはジャンパーを纏っていた。小太り男はニヤニヤと笑いながら、顎で一点を指し示した。そこには、胸から血を流して絶命した男性銀行員が無惨に転がっていた。
 一際大きな叫び声が行内に響くと、小太り男はすかさず、再度天井に向けて銃を鳴らした。
 バッグを手渡した方の男が口を開く。
「声を出されては困ります。お分かりですよね、皆さん……」
 銀行内は静寂に包まれた。所々から女のすすり泣く声だけが聞こえていた。
 抜けた腰に鞭打つように、バッグを手渡された女性銀行員は現金を隙間無くバッグへと押し込んでいく。他の銀行員は為す術もなく、ただ彼女の姿を見守ることしかできなかった。
 ちょうどバッグの一つに半分ほど詰め終えた頃だろうか。
 銀行の外からパトカーらしきサイレンの音がかすかに聞こえてきた。
 バッグを手渡した男がその音に敏感に反応する。
 ――まずいな……。思った以上に早く嗅ぎ付けやがった……
 小太りの男は、その状況に苛立ちを覚えたようだった。再び銃弾を壁に撃ち込む。短い悲鳴が上がる。
「おい。誰だよ、通報したのは? あぁん? 出て来い! 今この場でぶっ殺してやるからよ!」
 声を荒げる小太り男を、もう一人が手で制した。しかし、小太り男はさらに逆上して叫ぶ。
「邪魔すんなよ、竹内! こいつら絶対許さねぇ!」
 竹内と呼ばれた男は舌打ちした。簡単に名前を出した小太りを、殺してやりたいような気分になる。
 しかしその感情を辛うじて抑え、今は仕事を速やかに終えることに集中する。
「落ち着け。おかしな真似をした奴はいなかった。金を手に入れて早くこの場から去ることだけを考えるんだ。」
 竹内の視線は、他の人間たちを油断なく見据えている。
「……それから、二度と俺の名前を出すな。」
 小太り男は、竹内の迫力に押され、ぎこちなく頷いた。

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